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魔の山 心に1番残った一文

私たちの言葉が、もっとも敬虔なものから非常に肉欲的、衝動的なものにいたるまで、さまざまに考えられる事態のすべてを言い現すのに、愛というひとつの言葉しか持っていないのは、結構な素晴らしいことではないだろうか。
「魔の山」下巻p.534

半年近くドイツの文豪トーマス・マンが描いた「魔の山」を読んでいる。半年もかかっているのは難しいからであり、情けない話、内容の3割も理解できていないんじゃないかなとさえ思う。

それでも、私は一生忘れない一文に出会った。それが先に上げたものだ。この一文は見事なまでに「愛」というものを、そして言葉の美しさを捉えているし、それを私に痛烈なまでに深く胸に刻んでくれた。

考えてみれば、世界には色々な「愛」がある。恋人や家族など、人を愛するのもそうだし、平和などの概念を愛することもある。逆に肉欲的に愛することもあるし、邪悪な何かを愛してしまうこともある。それでも、「愛」という言葉は一つしかない。

こんな、忘れられない一文に出会えるから、古典を読むことはやめられない。タイムスリップして、文豪たちに出会い、言葉をもらえる。古典はそんなタイムマシーンのような本だ。

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