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人の弱さ。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)』より
人の弱さが良く分かる。そんな毎日。
お昼のワイドショーを見ることが増えた。
ズバズバと切り込んでいく司会のアナウンサーやらタレントは民衆の代弁者のように今の世の中を語り、専門家はそれに加勢して根拠らしいことを並べる。そして、それに加わる芸能人は「無知」という最強の盾を装備してコメントをする。そんな悪い印象しか持てない。
たしかに、このような番組により不安は扇動されるし政権への不信感が高まる自分がいる。このやり場のない苛立ちをどこかにぶつけることができる。でも、残るのは虚無感だけ。それと戦いながら僕は家で悶々とした日々を過ごすのだ。
読書をしているとふと目に留まったフレーズがあった。
「たぶん誰かのせいにしたいからだろう。わけのわからないことは誰かに押しつけると少しは気が楽になるんだ」村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)』p.353
不合理な暴力に巻き込まれた「計算士」として働く私が、博士の孫娘に向かってはなった台詞。
ああ、そうだよな。やっぱり人間はそうなんだ。みんな同じだ。
多分、「誰かに押しつける」という行為は必要不可欠。こんなふうにお昼のワイドショーに悪い印象を持っている僕も結局、お昼のワイドショーに敵意をむき出しにして、この世の中の混乱をそのような番組のせいにしたいのだ。
みんなが、何かを人のせいにして世の中は回っている。それはきっと人と人が支え合って生きているということと同じ意味なのではないか。
「人のせいにする」。
人は弱いけど、きっとその弱さがある意味において人間の強さなのかもしれない。
少なくとも今だけは、この気持ちを否定したくない。
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