『リメンバー・ミー』(2017)感想殴り書き

私たちは、今、自分のことを表現するときに何と言うだろうか?おそらく最初に○○大学とか△△に務めているだとか、そんな自分の所属する組織を自己のアイデンティティとして紹介するのではないだろうか。それは、多様な共同体が生まれ、そしてその意味が強くなっていることの表れだ。

『リメンバー・ミー』(2017)はディズニー&ピクサーが製作したファンタジー・アドベンチャー作品。

ミュージシャンを夢見るギターの天才少年ミゲル。だが、彼の一族は代々、音楽を禁じられていた。ある日、ミゲルは先祖たちが暮らす“死者の国”に迷い込んでしまった。日の出までに元の世界に戻らないと、ミゲルの体は消えてしまう!そんな彼に手を差し伸べたのは、陽気だけど孤独なガイコツ、ヘクター。やがて二人がたどり着く、ミゲルの一族の驚くべき“秘密”とは?すべての謎を解く鍵は、伝説の歌手が遺した名曲“リメンバー・ミー”に隠されていた…。(引用:ディズニー公式サイト

職場、学校、SNS、ファンコミュニティなどなど

あらゆる共同体が現代には存在し、「孤独」を感じる人は少なくなったかもしれない。共同体の多様化が進むにつれて起きているのが「家族」の役割の低下ではないだろうか?

家族で過ごす時間は減り、家にいてもインターネットで、ここではない誰かとつながる。そんな世界が私たちが住む世界だ。人は家族以外の共同体に所属することを望み、家族とは少し距離を取ろうとする。

本作品は舞台はメキシコでどこか前時代の雰囲気を漂わせるが、構図は非常に現代と似ていた。主人公のミゲルは自ら音楽家のという夢を叶えるために最初は家族と距離を取ろうとする。これは私たちが就職するため、家族という共同体から旅立ち、独り立ちする構図と似ているような気がした。

しかし、本作品でミゲルは最終的に家族という共同体へと回帰した。「音楽よりも家族」。この決断が持つ意味は深い。それは、個人化が進む現代に家族という共同体へと回帰することを促しているように思えた。

そして、ただ「夢を捨てて、家族へと回帰しなさい」と言っているだけでないところがこの映画の良いところ。「家族とは支え合うもの」そんな言葉が映画では飛び出したが、まさにその通り。最後にミゲルは家族へと回帰し、音楽もやめないし家族で音楽を奏でる描写で終わる。

何でも一人でやらなくてはいけない。独り立ちを強要し、依存関係にあることを嫌うのが今の世の中である。しかし、人生は一人で生きていけるほど優しいものじゃないし、みんなで助け合おうよ。そんな暖かいメッセージにあふれた映画だった。



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