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一度きりのスクリーン

祖母は私が小学生の頃に脳梗塞で倒れました。

それは軽いものだったけど、
右半身に麻痺が残って以前より不自由な生活になりました。

祖母は倒れる前までは凄く活発な人で、
地域の女性部に入って何か手伝ったり
行事に参加したり。
週末にはバスに乗ってデパートをぶらついたりが好きでした。
一緒にくっついていく私も
楽しかった記憶があります。

思えば、祖母が社交的だったおかげで、
今も実家の2軒隣に住んでいますが、果物や野菜のお裾分けが頂けるのかも知れません。

活発で社交的な祖母でしたが、
唯一あまり好きじゃ無い場所がありました。

それが映画館です。

理由を聞いた事が無いので、
何故苦手だったのかは分かりませんが、
子ども会で映画鑑賞があっても私だけ参加で、祖母は帰りに迎えにくるのが常でした。

そんな祖母が一度だけ自分から映画を観に行こうと誘ってくれた事があります。
忘れもしない、それは『忠犬ハチ公』
正直言って私は乗り気じゃありませんでした。だって犬が死んじゃう悲しい物語なんでしょ?って。そんなのより、グーニーズとかゴーストバスターズとかが良いよーって。

駄々を捏ねる私を引っ張って、
結局祖母と映画館に行ったのですが、
もともと感情移入しやすく泣き虫な私。
後半はずーっと泣いてました。
隣の祖母も同じで
二人でえんえん泣きながら観ました。

映画が終わってから、場内が明るくなると、
祖母は手鏡を取り出して
我が顔を見て洗面所へ慌てて行きました。
派手な化粧はしない祖母でしたが、
身綺麗を心掛けていたので気になったのでしょうね。

映画の後の女子トイレは混雑します。
その時も列に並んだのですが、
私も相当泣き腫らした顔。
とりあえず鼻水だけでも拭きたいなぁって私は、嫌なことにクラスメイトとばったり会ってしまうのです。

『え?泣いたん?忠犬ハチ公観て?』って呆れたような彼女の顔を見てめちゃくちゃ恥ずかしかった。

今の図太くなった私なら
「あれ見て泣かんなら、赤い血は流れてねーな」って言えたのかもしれませんが( ´ ▽ ` )

化粧を直して綺麗に復活した祖母は
泣き腫らした顔で嫌だ嫌だと言う私を
デパートに引っ張って
一緒にアイスクリームを食べました。

祖母は自分も泣いたくせに、泣き腫らした私の顔を見てクスクス笑い、
私も自分で、
よー泣いたなーと可笑しくなって
帰りに本屋さんに寄って
ご機嫌でバスに乗って帰りました。

祖母と行った映画館は
赤い絨毯がひかれていて、
椅子は硬い木製の手置きが付いて
紺色のベルベット。
昔々の映画館でした。
今は取り壊されて
立体駐車場付きのカラオケ店になっています。

祖母は
ポップコーンもジュースも無い代わりに、
映画のパンフレットを買ってくれました。

忠犬ハチ公と
祖母との一回きりの映画館。
ハチ公の話とは違うとこに
私の中には、切ない思い出があります。

何で『忠犬ハチ公』が観たかったのかな?
好きな俳優さんでもいたのかしら?


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