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「さいごの恋だと思ってた」 とふたりして泣いた日は、やがて嘘になるから。

出会った瞬間、雷が落ちたような恋のはじまりだった。

すごくすごくすきで、運命だ!と思って付き合った人。
本当にすきだった。

でも、その男性とは、
恋をするにはいいけど、結婚するにはちがうのかもしれない。
きっとこの恋は、一生ものにはならない。
いつしか、そう思うようになった。


今日でおわりにしようと決心したデートの日。
とても楽しかった。そして、苦しかった。

けっきょく、ずるずる朝まで一緒に過ごした。
彼と眠る時間が、すごくすきだったから、最後くらいいいよねって。

目が覚めると、彼はまだ夢の中。
いっそなかったことにしまおうか、と
寝顔をみつめながら、決心が揺らぐ。

でも、言わなきゃ。彼が起きたら、言おう。
「別れよう。」と。

彼がうっすら目をあけ、まっすぐ、わたしの目をみる。

朝の挨拶をするくらいのさりげなさで、
「俺たち、別れよっか。」
起き抜けに、小さな声で言った。

不意をつかれて驚いたものの、
どこまでも、先を行く人だなあと妙に関心した。

いま思えば、わたしの気持ちはお見通しで、
自身のプライドゆえに、女に振られるなんて嫌だったのかもしれない。

本心はいまだにわからないし、知る必要もないと思うけど。
彼もわたしと終わりにしたかった。たったそれだけのこと。

目の前でわんわん泣きはじめ
「やっぱり別れたくない」と言い出したわたしに、
困った顔で「ありがとう」とうつむく彼。

なんでだろうね。
終わりだとわかった途端、
キラキラと煌めいて見えて手放したくなくなるのは。


別れて何年も経ったけど、いろんな経験もしたけど、
出会った瞬間、雷に打たれたような恋の始まりは、あれっきりだ。

とはいえ、いまとなっては、
あんなに胸を切り裂かれるような毎日を乗り越える自信はない。

仮に出会い直したとしても、
わたしは彼に、恋をすることはないと思う。

「最後の恋だと思ってたよ。」とふたりで泣いたあの日。
いまはもう、嘘になってしまった。


若い時の恋は、若い時のものなんだな、とつくづく感じる。
いまのわたしには、あの頃のわたしとはちがう恋愛観があって、
いまはもっと、波風穏やかで、思いやりのある付き合いをしたい。

歳とともに変わっていく価値観に流されながら、
運命は、制御のきかない一過性の感情の代弁だと、
感情論や精神論でなく、頭を使って見定めなければいけないのだと、
いつしか、そう考えるようになった。

だけど本当は、いまだに、心のどこかで

運命みたいな出会いののちに、結ばれる。
そんな恋を、わたしはきっと、夢みている。


嵐のようにやってきて、
わたしの心をかき乱していった彼。

別れたときは、たくさんの人に心配された。   
お似合いだね、と言ってもらえるふたりだった。

いまのわたしでは、きっと、繰り返せない恋。
若すぎた20代の、嵐のような恋だった。

帰省中。母親から彼の名前がでて、
ふと、あの日のことを思い出した。

さいごまで読んでくれてありがとう!うれしいです!🌷