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【読書記録】子どもたちに民主主義を教えよう

工藤勇一・苫野一徳 著 / あさま社

概要

教育哲学者の苫野一徳と学校改革を行ってきた工藤勇一の対談形式で、公教育で子どもたちに民主主義を教えるためにはどうすればよいか、という問いを考える本。私はかつて塾の先生だったのだけど、当時読んでいたら塾でも少し実践できたかも、と思わされる内容だった。
基本的には教育の話だけど、序章~1章あたりまでは、教育や子育てには直接的な関わりがなくても「そういえば民主主義ってそもそも何かって言われると分からないなあ」と思っている人にもおすすめです。

民主的な社会とは?

ひとことで言うと、「誰一人置き去りにしない社会」。少数派を置き去りにする多数決は民主主義ではなく、対話による合意を目指すのが本来あるべき民主主義の姿である。
そして、対話による合意を目指すために必要なことは、「みんながOKと言える最上位目標を共有すること」
考えたこと
たとえば私は改憲には反対しているが、もし議論がなされないまま改憲が見送られた場合(とても嬉しいけれど)、本当に他国に侵攻されたケースを心配している人を置き去りにすることになる。改憲派と護憲派の共通の最上位目標は、「死なないこと・非人道的な目に遭わないこと」だと思う。
そうなると、戦争を起こさないために、一方で他国からの侵略を防ぐために何が必要なのか、法整備で足りるのか、改憲まで必要ならいかに権力の暴走を防ぎながら必要なことを盛り込むのか、という議論になると思う。

民主主義について

Q.民主主義の本質とは?

①自由の相互承認
全ての人が自由に生きる権利を持つが、他人の自由を邪魔する権利は持たない
②一般意志
みんなの意見を持ち寄って見出しあった、みんなの利益になる合意

Q.自由の相互承認を実現する手段は?

①憲法
国民から国家へ「国民の自由を保障しなさい」と命令するためのもの
②公教育
自由に生きるための知識を得る(自分のための技術)と同時に、自由の相互承認(社会のための技術)を学ぶ場
⇒自分と社会双方にとって利益となることを学ぶことにより、持続可能な社会を形成することができる
③福祉
障がいや貧困のために自由が得づらい場合の補助

現在の公教育の問題点

①心の教育の偏重
「思いやり」によって、トラブルを起こさないことを重視しているが、実現不可能である点。
むしろトラブルが起きたときに相手との合意を目指す練習をすべきだ
②教員の在り方
個々の授業スキルを磨くことに偏っている。授業スキルが高いことは、質の高い「サービス」を与えることであり、子どもの自主性を奪う可能性がある。また、教員の孤立・クラス間の対立につながることも。
むしろ子どもの自立を支援する技術や他の先生とのチームプレイを向上させるべきだ。
③ルールの盲信
ルールは本来自分たちでつくるものなのに、与えられるもの、絶対的なものになってしまっている。
必要であれば作り変える必要がある。