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柔道からの言葉 4「話聞かせてよ」

私が先代から道場を譲り受け指導者になり
幸いなことに今まで、たくさんの少年、中高生、一般社会人が、道場におとずれてくれました。

知的障害者の小学生
鑑別所帰りの中高生
昔、ヤンチャしちゃって。て言う刺青社会人
そんな人たちも、うけいれてきました。

先輩がたまに私の道場におとずれると

ん、ここは養護施設か?
とか
ん、ここは更正施設か?
とか
ん、とうとう、託児所?
なんてことを言われます。
 
いえ、柔道道場です。
先輩だって、いそがしいそがしい言いながらいつも来てくれるでしょ。

 私が先代、先先代から言われたことは3つ

柔道でお金はとらない

いろんな人に平等にチャンスを与る

窓口は広くする

これさえ、守れば、あとは好きにしてくれ。
とのこと。
お金はとらないと言っても全柔連登録料やスポーツ保険料
遠征費等かかるため月謝として二千円もらってる
私も持ち出す時があった。
私はもう、選手じゃない。環境をつくる側、
そして先代たちがつくってくれたものを守りたかった。
 ほとんどの場合柔道は
小学生なら、わけもわからず親につれてこさされて。
中高校生なら、部活帰りでたまたま、興味があって。
社会人なら、昔やってて。
そんな感じで道場に訪れる。
私から誘う場合もある。
ある男の子はこんな感じだった。 

その子の家庭は母子家庭で、お母さんはその子のために一生懸命働いてる。その子は夕方になると暗くなるまで
なぜかいつも玄関の前にすわっている。
かわいそうに思ってか近所のおばちゃんが、

おにぎりを作って持っていくらしい。そうすると、その子は

おばちゃんの家でたべていい?

って小さな声で、聞いてくるらしい。
その話を先輩から聞いた時、
はたして、その子が本当に求めてるものって何かなぁ。
って話になった。

淋しいんじゃないの?ひとりだし。

私はその子の家に行き、柔道をしてもらうよう
おねがいした。
その子は人見知りでおとなしく、
はじめはあまりしゃべらなかったけど、子供の社会は不思議なものですぐに打ち解けた。
私も、その場にいる大人たちも、いろんな話をしたり聞いたりした。

彼 学校の授業でカレーライスつくったよ。
私 カレーライスは先生の大好物じゃないか!
彼 おばちゃんからアイスクリームもらったよ。
私 先生も、もらいにいこかなぁ
彼 先輩先生が、お金ないってさわいでたよ。
私 金は天下のまわりもの!でも、先生のとこにも
  まわってきません。
彼 柔道強くなれるかな?
私 強くなれるかなぁって思ってるうちは強くなれんな
  大きな声で、  強くなる。  これだ‼️
彼 僕、しっかりした大人になれるかなぁ?
私 えーと。んー。お金持ちじゃなくていいから、
      立派な人になりなさい。
彼 僕、大人になったら柔道の先生になる❗
私 それは不幸になるから、やめときなさい。
一生懸命話そうとするから、
まわりの人たちも一生懸命答える
彼が小学校を卒業して、連絡はとっていなかったけど
噂で定時制高校に進学したまでは聞いてた。
バッタリ会ったのは牛丼屋で、メガもりを注文した時
店員さんが彼だった。
「うわー。先生だ!しかもメガもりって。
「これ以上太ったら死にますよ。」
なぜか、ピョンピョン跳び跳ねて嬉しそうにしている。
こちらはなぜか、こっぱずかしい感じで
「うるさいわ。至って健康です。」
それより話聞かせてよ
「僕、今度、全国大会出場するんですよ。
 しかも日本武道館スゴイでしょ」
「へぇー。スゴイ!東京かー。がんばったね。」
あの日、暗くなるまで、玄関の前にいた少年は
今は自分の未来をみている。
それが、自分のことのようにうれしかった。
もう、大昔の話



















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