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心優しきnoterさんに小説の推敲をお願いした話

先日、キリンビールとnoteが主催する「あの夏に乾杯」のコンテストに、短編小説を投稿した。

私は普段、noteでエッセイとか日記を書いている。小説を書くのは、久しぶりだった。

小説という形式にしたのは、その方が自分が書きたい想いと適切な距離をとれると思ったから。私にとって、今回のテーマはエッセイで距離をとるのが難しい。エッセイでは書けないものを、小説で書く。それは、なんて素晴らしい文章の自由。

そんな風に考えながら、約4000字のお話をパチパチと書いた。

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公開予定日の3日前、私はめちゃくちゃに悩んでいた。

投稿前に、誰かに読んでもらいたい……!

そして、不足点を指摘してほしい……!

全体を書き上げてから、何度も何度も読み返して推敲した。でも、読み返すたびに「ここの流れは不自然」「盛りすぎ」「描写が足りない」私の頭の中の読者が指摘してくる。

小説というものは、そうやって最初の文とはまったく違うものに作り替えたりしてお話を完成に近づけていくのだろうけど、私は心もとなかった。いまいち、自分に自信がないというか。読み返す度「最高だ!」と「まだまだ」を行き来する。

そこに、客観的でまっさらな視点から一言もらえたら、どんなに心強いか。

こういうとき、身内に読んでもらうのがひとつの方法なのだろうけど、今回はテーマがテーマだけに、夫には見せられなかった。こっぱずかしい。

かといって、noteやSNSでつながっているどなたかにお願いするのも気が引けた。だって作品にフィードックするって、大変じゃないですか。

私は普段ライターとして仕事する中で、編集さんから赤入れをもらう。この赤入れを、みなさんめっちゃ丁寧に指摘してくださる。基本的に、私は赤入れを「記事をよくするための必須作業」として考えているから、「よっしゃ、赤入れバッチコーイ!」みたいな体育会系の心意気で受ける。でも、「書いた文章に指摘を受ける」ことが、心にチックンくることも稀にある。

そのあたりの書き手の心情を編集さんは理解していて、修正と一緒に良い点も添えるとか、とにかく言葉を選んで伝えてくださる。

それって、やっぱり、時間も頭も使うこと。そう考えるほど、誰かにお願いするのは気が引けて。人から言われたら、喜んでお引き受けすることでも、自分からはお願いできないという。めんどくさいチキンハートだなあと思う。

そんな悩みをTwitterにつぶやいたところ、翌日、一通のDMが届いた。

note仲間の入谷聡さん(illyさん)だった。

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私がillyさんを知ったのは、たぶん今年の5月の頃だ。その後、「関西meetup」が開催されて、そこで名札とフライヤーを作った紙の人というイメージが強かったillyさん。

そんなillyさんから、こんな一言が届いたのが水曜日の朝。

そうそうカエデさん、公開前のnote事前に読むっていう壁打ち役、もしよかったらいつでも引き受けますよ!

……いいひと?

思わぬ申し出に舞い上がった私は、すぐに作品の共有URLを送った。そしたらすぐさま返信がきて、ちょうど朝の通勤電車だから、いま読んでくださるという。

……やっぱり、いいひとだ!

どんなフィードバックが返ってくるかな~とドキドキして待つこと27分後。

きた。

2周読みましたー!カエデさんらしいストレートな恋心描写がめちゃいい感じ。

で、
モヤモヤポイントここかなーと思ったのは、「乾杯」の差し込み方がちょっと強引なのかも(タイトルとも、高校時代の話とも絡みにくい)。先行作品で、自然に乾杯orお酒を登場させているものがあるので、そこ比べられると弱い可能性が。(10代モチーフの話のつらいところ…)
で、もし「小説」ってことで変える余地があるなら…
①ビール買ってきてくれた夫と海老名で合流してから一緒に8分間電車乗る設定にする(サマートレインとの重ね合わせ。別件ついでで海老名に娘と来ていたことにする?)
②20年前の電車でも先輩と一緒に何か炭酸飲んでる/持ってる設定にする(ビールとの対比)
③10代のトキメキとは質の違う、いまいまの夫へのトキメキポイントを書き足す(一番星の輝きが同等以上、という結末への補強)
…とかはどうかなと思いました!

すごい。

27分の間に、すごいちゃんとしたフィードバックがきた。

せっかくなので、私が感動したポイントを説明する。

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まず、第一声のほめ言葉。プラスの感想が入っていると、その後にいくら辛辣な指摘がついていても、心折れない。さりげない褒めの一言、書き手にとっては砂漠にあるオアシス。大事。

つぎに、「モヤモヤポイント」を一つに絞って指摘している点。コンテスト締め切りの8月31日には猶予があるとはいえ、この時点で10個とか指摘がきたら正直、心折れる。そこをポイント一つに抑え、しかも「乾杯」というテーマの根幹にかかわる部分をはっきり突く。すごくわかりやすい。

さらに、なんといっても素晴らしさ爆走なのは、代案が3つもある。3つも!アイディア一つ絞りだすのも大変なのに、3つも!

もう、うれしすぎてPC画面を見つめながら心のなかで踊っていた。

illyさんからの指摘部分は、自分自身も「ここ、書き足りないかもしれないぞ……」と気づいていた箇所。お話の中では「10代の恋心」と「30代の愛情(みたいなもの)」を対比させているのだけれど、どうも10代のシーンと比べて、30代の心情は盛り上がりに欠ける。

書き上げて9割完成しているものに、手を加えるのはなかなか大変だ。でも、フィードバックを受けたことで心が決まった。代案の①は全体の流れを変えるのがちょっと大変、②だと文量が膨らみすぎる可能性がある。ということで、③をもとに最後のシーンのエピソードを大幅に変えた。当初、登場するビールはフルーティーな味わいのペールエールだったのだけれど、それも違うものにした。

最後のエピソードを変えたことで、物語がぐっと引き締まったように思う。本当に、illyさんに感謝。

▼illyさんのご協力により、完成した小説はこちら

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もともとillyさんって、しりひとみさんの記事の分析とかスイスイさんの記事の分析で、頭の回転が速い人、というイメージがあったのだけれど、今回の一件でさらにそのイメージが強化された。

先日公開されていた『『アツい言葉を探せ』note記事に良い感じのタイトルを付ける方法(タイトルコンペ感想戦)』でもその頭脳明晰さがうかがえる。

個人的には、お父さん目線で8歳の娘さんのことを書かれている記事も好き。『8歳、ひとり立ちの朝ヨーグルト』とか『歯医者旅行』とか。我が家の5歳の娘も、3年後にはこんな風になるのかしら……と楽しんで読む。

そして、プロフィールをよくよく拝見したら、書いてあるのね。「Web中心のクリエイティブディレクター」って。もろ本職では。「紙の人」違う……

おまけにillyさんは、最後に誤字がある箇所を「ちょっと言葉の乱れが整うと最高だと思います」とやさしさ100%の指摘を下さり、私は感謝でのたうち回ったのでした。

フィードバックのおかげで、とても納得のいく作品に仕上げることができた。日本に帰る時は、ニュージーランドのおいしいワインを手土産にもって帰りますねillyさん。


文章の推敲ってすごく難しいけれど、今回noteで知り合ってillyさんから受けた親切を、いつか私もどこかでどなたかにお渡ししたいなーなんて思う。

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