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埴輪紹介所

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はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
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#盾

こまりんぼ【埴輪紹介所その1】

埴輪紹介所はじめました。 初回はこまりんぼ。 埴輪ならではのプロポーション。 上着の下のトリック。 横から見ると、とっても細い。 クツは平べったい。 でも鼻は高く、立派なミズラを結っています。 弓もユギもないけど、鞆を腰に下げる。大刀も。 肩甲(かたよろい)と籠手(こて)で腕はがっちりガードも、胴体はのっぺりで甲っぽくない。大丈夫か。 冑は謎多し。 いつもこまり顔。ため息が聞こえる。 そんな彼がわたしは大好き。 群馬県藤岡市白石字滝出土の男子埴輪。 所蔵はトーハ

強運強烈パイナップル【埴輪紹介所その164】

高さが足りないか。パイナップルの葉と見るには。 でも頭の形とあいまってパイナップルっぽい。 埴輪時代には正体がわかっていただろうパイナップルが、いつしか謎となってしまった。謎はいまだ解かれずにいる。 かみつけの里博物館で初めて見たときの衝撃は大きかった。びっくりというより、呆然。 なんと埴輪の世界は奥深いのか。想像の範囲を超えてくる。かるく飛び越えていく。追いつけない。 顔はだいぶ直してある。 パイナップルの葉も、盾もかなり欠けているのだが それでも残ったものが、

リボン2つ(「違うよ!」)【埴輪紹介所その163】

額のほうはハチマキでしょう。 てっぺんのほうは、髻(もとどり)説とかぶりもの説とがある。 どっちかな。 この埴輪のは帽子というか、頭巾っぽい。 でも 何を言っても「違うよ!」と返されそう。 ところで盾を持っています。 幅おさえめ。盾としてはどうか? 「うるさいよ!」? 群馬県高崎市の保渡田八幡塚(ほどたはちまんづか)古墳出土の盾持ち人埴輪。高さ103.4cm。 所蔵は「かみつけの里博物館」。 同じ古墳から、まったく違うかぶりものの盾持ち人埴輪が出土していま

年月が彼を変えたか【埴輪紹介所その161】

盾の後ろ ややうつむき気味のその顔は 不敵な笑いをたたえている。 土の中で練った策を今、実行に移そうとしているのか。 しかしよく見ると 割れ、欠け、つなぎ合わされて、この顔になったのだ。 年月が彼を変えた。あるいは、年月を経て彼は生まれ変わった。 埼玉県熊谷市の女塚(めづか)1号墳出土の盾持ち人埴輪。高さ77cm。 所蔵は熊谷市教育委員会。 同古墳からは、よく似ているけれど表情の違う盾持ち人埴輪が出土しています。 撮影は2020年、『盾持人埴輪の世界』埼玉県

ミズラの上げ下げ【埴輪紹介所その160】

これは上げミズラか? 下げミズラか? あごぐらいの長さ。判断に迷う。 てっぺんは髪なのか、飾りなのか、帽子なのか。 ミズラとの組み合わせは、埴輪時代に実際にあったのか。 戸惑いが盾では隠せない? いや、謎に戸惑う現代人に、微笑んでいるだけかも。 埼玉県熊谷市の女塚(めづか)1号墳出土の盾持ち人埴輪。高さ68.3cm。 所蔵は熊谷市教育委員会。 同古墳からは、もっと謎の頭の盾持ち人埴輪が出土しています。 撮影は2020年、『盾持人埴輪の世界』埼玉県立さきたま史跡

頭がめんどう【埴輪紹介所その159】

これは頭。 人の頭。 香炉のような形。 その下にハチマキ? こんなめんどうなものを作るからには、モデルがあったと思う。 ただのお団子頭ではないはず。 ところで彼は盾を持っている。 正確には 盾をお腹に貼りつけている。 手はないのだ。 盾の上端に鋲らしき粘土粒3つ。鋸歯紋の線刻。 埼玉県熊谷市の女塚(めづか)1号墳出土の盾持ち人埴輪。高さ70cm。 所蔵は熊谷市教育委員会。 同古墳からは、まったく頭の違う盾持ち人埴輪が出土しています。 撮影は2020年、

大きな頭で考えること【埴輪紹介所その156】

その顔はなにか、 考え深げ。 盾を持つ人。 盾は戟(げき)がついているが、ただの棒状。紋様はヒレ部分にギザギザ鋸歯紋と、わりとシンプル。 どちらかというと、顔のほうに力が入っている。 目のまわりの線刻は入れ墨か。 頭部上端が欠けているのが悔やまれる。オリジナルの状態では頭部の大きさが際立っていたはず。 埼玉県坂戸市の塚の腰1号墳出土の盾持ち人埴輪。高さ73.5cm。 所蔵は埼玉県教育委員会。 撮影は2020年、埼玉県立さきたま史跡の博物館にて。 またね。

盾の後ろのハンプティ・ダンプティ【埴輪紹介所その150】

穏やかな顔。 盾には何にも描かれていない。 静かな埴輪。 笑っているのか。何かを言おうとしているのか。何を? 最大のヒントは顔であろう。同じ古墳出土の女子埴輪と似ている。 彼は盾のおまけではなく、人なのだ。 しかし、他の形象埴輪群とは離れた位置に立てられていたらしい。 きれいな卵形の頭。3次元モデルを回すとよくわかる。 ハンプティ・ダンプティ。塀の上じゃなくて、盾の後ろだけど。 埼玉県行田市の埼玉古墳群の瓦塚古墳出土の盾持ち人埴輪。高さ85.4cm。 所蔵は埼玉

きょしもん大小【埴輪紹介所その124】

盾にしては紋様が細かい。 特に上端の繊細さ。 破線や綾杉紋も見えるが、やはり基本は鋸歯(きょし)紋。 大小の鋸歯紋の組み合わせ。 群馬県安中市の簗瀬二子塚古墳(やなせふたごづかこふん)出土の盾形埴輪。 所蔵は安中市教育委員会。 撮影は『集まれ!ぐんまのはにわたち』2019年(群馬県立歴史博物館)にて。 またね。

三角の補強で迫力の通せんぼ【埴輪紹介所その120】

この迫力よ。 宮内庁のサイトによれば、現状での高さはおよそ116.5㎝。上部が欠けており、本来は150cm以上と推測されている。 そして「渡土堤をふさぐように並べられていた埴輪列のなかの一つ」。 通せんぼするにふさわしい盾である。 縦横斜めに走る線刻を確認。 背面も迫力。 後ろ側に突帯(とったい)がめぐっている。 本体は円筒埴輪、それに板をつけたということがわかる。 側面をあおると、三角が見える。 なるほど。補強してあるのね。 奈良県奈良市の佐紀陵山(さきみささぎや

大刀を盾つきの鞘から抜いたらどうなるとか考えない【埴輪紹介所その112】

まず、これは大刀です。 その 大刀の鞘に 盾をつけてしまう。 なんという荒技か。 鞘から大刀を抜いたらどうなるのか。盾は盾として使えるのか。盾のサイズは。そもそも腰に履けるのか。 とか考えない。埴輪なのだから。 組み合わせ埴輪はいろいろある。冑と甲の組み合わせまでは実際に存在しただろうが… 現実に盾つきの大刀などない。少なくとも出土していない。 さすが埴輪。 ちなみに 上端開放型。U字カットあり。 柄が鹿の角でできている鹿角装(ろつかくそう)大刀がモデルと思わ

盾の裏をのぞこう【埴輪紹介所その110】

左右にちょっこり尖り。 その下の方に、ギザギザもよう。 直しは多いが、盾があったという確固たる事実がここにある。 盾に学ぶ。 他にも学べることがある。 裏側。 盾持つ人はいない。 それより天辺に孔。 孔を開けたというよりは、円筒を開放状態のままとしたのでしょう。 盾の裏にも表にも、確かに誰かがいた。 神奈川県横浜市の瀬戸ヶ谷古墳出土の盾形埴輪。 所蔵は東京国立博物館。 撮影は2016,2017年、東京国立博物館にて。 瀬戸ヶ谷古墳からは、他にも多くの埴輪が

尖りと紋様で防ぐもの【埴輪紹介所その58】

上端の左右が尖った盾。 紋様で埋め尽くされている。 主体は鋸歯紋。その内側は平行沈線。 縁取りは綾杉紋。 もう一体。 埴輪界における盾の意義は大きい。 比較的初期から出現し、多数立てられた。 何を防いでいるのか。 埴輪の盾を支持する金属とプラスチック。 下端の曲線から見て、円筒の前面に板を貼りつけて盾とする構造らしい。 奈良県橿原市の四条7号墳出土の盾形埴輪。 所蔵は奈良県立橿原考古学研究所。 四条7号墳からはユギ形埴輪も出ています。 撮影は『発掘された日本列島2

泣いてるの? 怒ってるの?【埴輪紹介所その48】

わあわあ言ってるらしいことはわかる。 大きな目と大きな口で、何かを訴える。 現代人には聞き取れない? いや聞こえそう。埴輪はそれぐらい現代日本人にも近しい。 冑と盾が連携するように横に広がる。 盾には線刻と彩色。鋸歯紋×赤は埴輪スタンダード。 群馬県高崎市の保渡田八幡塚(ほどたはちまんづか)古墳出土の盾持ち人埴輪。高さ102cm。 所蔵は「かみつけの里博物館」。 同じ古墳から、まったく違う頭の盾持ち人埴輪が出土しています。 保渡田八幡塚古墳の二重の周壕の内堤には人