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埴輪紹介所

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はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
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#栃木

こまりんぼ【埴輪紹介所その1】

埴輪紹介所はじめました。 初回はこまりんぼ。 埴輪ならではのプロポーション。 上着の下のトリック。 横から見ると、とっても細い。 クツは平べったい。 でも鼻は高く、立派なミズラを結っています。 弓もユギもないけど、鞆を腰に下げる。大刀も。 肩甲(かたよろい)と籠手(こて)で腕はがっちりガードも、胴体はのっぺりで甲っぽくない。大丈夫か。 冑は謎多し。 いつもこまり顔。ため息が聞こえる。 そんな彼がわたしは大好き。 群馬県藤岡市白石字滝出土の男子埴輪。 所蔵はトーハ

四隅突出型墳丘墓形の座布団【埴輪紹介所その153】

あぐらをかく彼。 椅子は座面の縁が垂れさがる。 四隅突出型墳丘墓(よすみとっしゅつがたふんきゅうぼ)みたい。 実際にはこんな椅子はなかっただろう。 座布団ならありうる。 だが、椅子の上に座布団、を埴輪時代にやっていたか? そもそも座布団があったか? なさげ。 ところで 座る埴輪にしては、脚のサイズが写実的。 顔の赤彩は直線的。 縁が欠けてしまった帽子にも赤い線が入る。 全形はどんな帽子だったのか? そのやや鋭い目に影を作っていたか。 栃木県真岡市亀山

書類ケースとコンパス【埴輪紹介所その147】

もとになった物がイメージできない。 頭に一体なにを乗せているの? 図録では「箱形の器」となっていた。 たしかに箱形。薄型の箱。やや台形。書類ケース? 埴輪時代、まだ紙はないか。ギリギリあるか? そして額の左端に挿している棒は? 櫛かかんざしのようなもの? ペンじゃないよね。筆はあるか? 筆は挿さないか。 円盤状の髷が丸顔に似合う。 白地に赤い水玉模様の上衣も。 円の中心には小さな穴がある。コンパスみたいな道具で円を描いたらしい。正円である。きちょうめん。 はっ 

気になる中身ふたつ【埴輪紹介所その146】

右手に持っているのはなに? 図録では「ひさご形の容器」となっていた。 何にせよ、モデルがあったはず。 柄杓のようなものだとしても、その持ち方だと今はカラね。 中に何か入るとしたら、液体かな。 頭に乗せた器の上は閉じている。 あけて見せて。 壺を頭に乗せて水を運ぶ、というのは世界各地で行われる行動のようだけど、これは壺ではない。 何を入れるための器なんだろう。フタの形状から見て液体っぽくないな。 鼻から眉にかけての整った曲線。 頬を赤く塗る。 凝ったネックレス。 耳

布は残った【埴輪紹介所その145】

上から左側へと垂れているのが布。 その下の板は経送具(たておくりぐ)というものらしい。 右側の丸みのある部分は機織る人の上着の裾らしい。 織る人は、ほかは腕のかけらしか出土していないらしい。 頭部がないと髪型がわからない。ということは厳密には性別不明なのだ。 そして、顔がないと、図録やポスターのメインからは外されてしまう。 機も不明部分が多いが、原始機(げんしばた)や腰機(こしばた)と呼ばれる機らしい。 栃木県下野市の甲塚(かぶとづか)古墳出土の、機台を持たない機で機

縞・水玉・市松を難なく着こなす【埴輪紹介所その144】

よく見ると、色付き。 中央の布は赤と黒の縞。 それを織っている機(はた)は白黒。 織る人の上衣は、白地に赤の水玉もようで裾はぐるりと赤い。 スカート状の裳(も)は、白黒の市松文様で赤い縁取りがされています。 腰の後ろにあるのは何だろう。体を支える道具? 衣装の一部? 復元すると、鮮やかな色の縞・水玉・市松もよう。 埴輪は難なく着こなすが、当時の人々が本当にそうだったのか、埴輪世界の色彩と紋様なのか。 顔はないけれど、髷(まげ)は出土しているもよう。 ということは女子で

半月形の垂れ目【埴輪紹介所その137】

二本足埴輪ならではのプロポーション。 まるくふくらんだ太もも。 短い腕に籠手をつけ、頭椎大刀(かぶつちのたち)を佩く。甲冑はなし。 申し訳程度の武装。礼装か。 大粒の玉のくび飾りが目立つ。 半月形の垂れ目。 おちょぼ口。 顔や首は、黒と赤に塗られているようだ。入れ墨か化粧か。 服は白いかな? 色を再現した画像をつくってほしい。 ところで、山高帽は埴輪時代の重要アイテムらしい。 しばしば遭遇するトンカチミズラ。 どうやって結ったらトンカチ形になるの? 栃木県下

サルエルパンツ【埴輪紹介所その130】

脚が。いや腰が。 サルエルパンツ? 笑顔だが、 泣き笑いなのか。 苦笑か。 上半身と下半身を別々に作られ組み合わされた彼。 設計図が間違っていたのか。計算ミスか、連絡ミスか。 そもそも計画的に作っていなかったのかもしれない。 ほかにもいろいろ。 冑、いくらなんでも鋲が多すぎる。 その鋲と区別のつかない頸飾り。 赤の市松もよう、おしゃれだが甲にしては派手すぎる。 そして この足もとよ。 こういうクツがあったの? だとして、足はどう入っているのか... 栃木県

一文字口【埴輪紹介所その118】

頭にはちまきを巻いているらしい。髷は残念ながら一部しか残っていない。 顔の彩色もよく分からず。 くび飾りの玉はだいぶ取れてしまったらしい。埴輪のおしゃれの基本の耳環もない。 かろうじて上衣のあわせが斜めに残る。ちなみに埴輪はたいてい左前。 そんな彼女の口は一文字。 しかし同じ古墳出土の埴輪と見比べると、面白いことがわかる。 への字口の彼と姿が似ているのだ。 卵形の頭に寄り気味の目、長い腕、全体にすらりとしている。 そうなると口の違いが気になる。 栃木県下野市の甲塚

への字口【埴輪紹介所その117】

上げミズラ。おだんご形は珍しい。 すらっとしています。 しかし顔。 眉に沿って赤いライン。ほほには赤い+印。 それはいいとして、なぜおもいっきりへの字口なのか。 どうしたのさ。 かぶり物がないから? くび飾りがないから? 鍬がないから? お団子ミズラがイヤなのか? 腰に佩いた大刀がお箸みたいで気に入らないのかも。 栃木県下野市の甲塚(かぶとづか)古墳出土の男子埴輪。高さ97.1cm。 甲塚古墳出土品は一括で重要文化財に指定されています。 所蔵は下野市教育委

労働がもたらす余裕の笑顔かもしれない【埴輪紹介所その116】

ながーい帽子にくび飾り。そこそこ着飾っていると思うが、肩には鍬。 顔の左右に突き出す上げミズラ。どうやって結っているのか。 右の袖はどうなっているの? なぜ左と違うの? 彼は赤い顔でにっこりするだけである。 畑仕事のあとに一杯引っかけた、かのようだが、赤いのはたぶんメイク。 埴輪時代の労働と美と弔いの感覚はまだつかめない。 栃木県下野市の甲塚(かぶとづか)古墳出土の男子埴輪。高さ107.6cm。 甲塚古墳出土品は一括で重要文化財に指定されています。 所蔵は下野市教

トンカチくんの半笑い【埴輪紹介所その115】

赤いほほ。なぜか口が右半分しかない。 でも笑顔に見える。 半笑いというとあまりいいイメージではないが、彼の半笑いは温かみがある。 トンカチ形の下げミズラを結う。 脚部は復元。左腕は失われたまま。 右手で何を差し出してくれているのか。 栃木県下野市の甲塚(かぶとづか)古墳出土の男子埴輪。現存高さ56cm。 甲塚古墳出土品は一括で重要文化財に指定されています。 所蔵は下野市教育委員会。 撮影は『発掘された日本列島2015』(於・江戸東京博物館)にて。 またね。

こっそり笑う【埴輪紹介所その67】

左目が欠けている。眼帯をしているみたい。 裏から見ると、笑っているように見える。 もう一体。 お腹にくっついているワラジみたいなものは何? 側面に斜めについた綾杉紋の物体は? うるさいなあって思ってる? 笑ってる。 よかった。 小さな白い文字。つなぎ合わされる前に書き込まれた記録。 栃木県足利市の行基平(ぎょうきだいら)山頂古墳出土の人面つき円筒埴輪。2体目の高さ55.2㎝、口径28~34㎝。 所蔵は足利市。 撮影は2019年、江戸東京博物館の列島展にて。

赤いトサカ【埴輪紹介所その24】

それは鶏。恐竜の末裔。 顎から垂れ下がる肉髥(にくぜん)も赤い。 鳥形埴輪は頭が小さく、たいてい中実なので、目が透孔(すかしあな)じゃないことが多い。その場合の目は線刻される。 だから顔つきが埴輪っぽくない。若干こわい。やはり恐竜だから? まれに目が透孔の鳥形埴輪もいます。 お尻の孔はある。大きい。 大きすぎる。たぶん通気口。 鶏もちょっとは飛べる。 木の上で眠る。 この鶏もけっこう高いところにいる。 鶏本体自体はそう大きくないが、高さ53.8cm。 栃木県真岡