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6 大学非常勤講師の研究生活

 今ふりかえってみると、長い間の非常勤講師生活(10年以上)の中で、曲がりなりにも研究業績を増やすことができたのは、ひとえに自分の両親と家族の深い理解があったからだと思っている。私の両親は私の研究生活に多大な理解を常に示してくれていた。父は、「自分の生きたいように生きなさい、そして、自分の生きたいところへ行きなさい。困ったら金は送ってあげる」といつも言っていた。それほど裕福な家庭ではなかったが、私の教育には多大な投資をしてくれた。海外留学中、学生結婚をしても、子供が生まれても、私の両親は心から私たちに経済面、そして精神面の援助をしてくれた。どこまで自分は幸せ者なんだろうと何度も思った。かと言って、それほど贅沢な生活を送ってきたわけではない。食うや食わずの時もあった。ある時期を期して、両親からの財政的支援はほとんど無くなってしまった。それでも何とか目的は達成できた。
 大学非常勤講師には教育の役割しか期待されていない。そこに研究という仕事は依頼されていない。だから研究は、まあ極端なことを言えば「道楽」以外何物でもない。でも諦めず、強い意志を持ち続けることができた。もちろん、家内からの不満も多かった。子育てをめぐり、または経済的なやくりくりで喧嘩もした。実は今でも喧嘩が絶えない。それでも諦めなかった。「自分ができる仕事は研究しかない」と強く自分に言い聞かせた。
 母は、私の大学教員常勤採用を目にすることなく他界した。父は健在だが、ここのところ調子が悪く、もういくばくもないかもしれない。ただ、両親と家族の理解が私を絶えず困難から救ってくれたと言ってもいいだろう。

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