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生きる はたらく つくる

この仕事は自分の得意なことではないから、長くつづけられそうだ、と当たり前のように思う自分がいた。

ミナペルホネンが『せめて百年つづく』ためには、ブランドの窓や扉を、高い場所にはつけず、閉め切りにもせず、広く、のびのびと、鍵をかけずに開いておくことだと思っている。あたらしい風はいつでもそこから入ってくるだろう。

ぼくたちがさまざまに、お客さまに提供しようとしているものとはなにか。
 それは、『よい記憶』となることではないか。人のなかに残る『よい記憶』をつくるきっかけになるもの。それをつくりたいのだ。

何をすべきかを考えるとき、ジャンルや事業の分類にはこだわらず、どんな『よい記憶』にしたいかということだけを丁寧に考えていればいい。つくるべきものがなんであっても、『よい記憶』となることさえ忘れなければ、おのずとやるべきことが見えてくる。


「得意なことではないから長く続けられる」という発想が今までの自分には無かったが、そうかなるほどと腑に落ちた。苦手だからこそ上手くなりたいと思えるしそこに集中できる。そうやって少しずつ上昇しながら前に進めるのだ。

「『よい記憶』になるきっかけをつくる」。
自分もある意味ものをつくるクリエイティブな仕事をしているが、その品質を高めることは当たり前で、さらに受け取った人の『よい記憶』になるようなものを作る。そうやって長く続いていくものが作れるのだと教えてもらった。その心構えはまだ自分には足りなかった。自分は今、『よい記憶』のきっかけになるものを作れているだろうか。


これからもミナペルホネンはその枝葉を広げながら、のびのびと、『よい記憶』に出会えるものづくりをしていくことだろう。その生き生きとした可能性を感じた。


昨年行われた「つづく」展を見て、皆川さんそしてミナのものづくりに対する真摯さを受け止めてから読むと、ミナペルホネンというブランドの解像度が上がった気がする。

あの展覧会は圧巻だった。25年の歴史とその中で培われてきた思考・品質・技術・人との関係が存分に感じられた。あんなに力強く重みのある展覧会は初めてだった。
読みながら、展覧会での感動を思い出していた。


出典:『生きる はたらく つくる』皆川明
   つるとはな

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