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恋せぬふたり

「どうしたいいのか、僕もまだ分からない......でも、この感情をわがままだなんて思うつもりはないです」
「周りと違うからって我慢するつもりはこれっぽっちもないんです」

「普通」という言葉の暴力性に気づいているのだろうか。

「なんでこういう時って『こういう人もいる』『こういうこともある』で終われないのかなって」

私の人生に何か言っていいのは私だけ。


ドラマを見て、岸井ゆきのさんと高橋一生さんの素晴らしい演技でふたりの心の葛藤や変化をひしひしと感じ、何度でも見たいと思っていた作品。

内容はドラマほぼそのままだが、ドラマは咲子目線が多かったので高橋さんの心情が詳しく書かれていたのは新しい楽しみだった。特に高橋さんの真っ当で実直な物言いには心を突かれる感覚になり、読み手に向かって話しているようでもあった。


印象に残っているシーンは咲子と千鶴の再会の場面。ここはドラマでも一番ぐっときた。

「好きだから、離れたの」
「だから今、咲子が来てくれて最高に嬉しいし...最高にしんどい」

千鶴の切ない想いと咲子の好きのすれ違いがとても悲しい。同じ「好き」という気持ちなのにお互いの求めるものは違う。


家族ってなんなのか。恋って本当に必要?大切な人と一緒にいたい、それだけじゃダメなんだろうか。カズくんの言った『帰る場所になる』、それがしっくりくる気がしている。


出典:『恋せぬふたり』吉田恵里香
   NHK出版


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