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サイコパスの子供を育てる彼

 彼に出会ったのは仕事の休憩時間にしていたパパ活だった。
 勤めていた新聞社は、日付が変わる頃に仕事が終わった。出社は15時で休憩はだいたい夕方の18時頃に45分くらい。ラブホ街の近くに会社があったから、その日もネオン街をぶらついて心を休ませていた。毎日のニュースをタスクのように淡々と処理していく空気から解放されたかった。ホテルに男女が体を寄せながら入っていく人たちを見ていると、私はなんだかホッとする。彼らは人間味があって、綺麗なものも汚れたものすべて「幸せ」とか「お金」として受け入れているからだ。
 歩いているとすぐに声をかけられた。テスラを運転していた彼。休憩時間も少なかったからホテルに入って出るまでは15分だった。身体を鍛えていて、二人の子供の父親で、億ションに住んでいて、子宮えぐるのが好きな人だと認識した。人としての距離感が絶妙に上手くて、適度な「可愛い」をくれる人だから休憩時間にはちょうどいい人だと思った。それから退社するまで、週2程度で15分程度のエッチをする仲になった。

 私が心を病んで寝込んでいたある日、久しぶりに夜風を浴びたいと感じた。でも、自分で歩くのはしんどい。車を持っている人がいたら楽。だから彼に会いたいと連絡した。一年ぶりくらいの再開だったけれど、やっぱり距離感が心地よくて、自分の整理に必要な要点だけを聞いてきた。その日、初めて彼と一緒にご飯を食べた。同じ飯を食べると愛情が湧くではないけれど、性欲だけではない情を与えてくれていると感じて新鮮だった。その日は、彼の息子が少年院から出所した日であったからかもしれない。

 息子は小学生。年の離れた女児を誘拐して監禁した。物心ついた頃から母親に異常な愛着をもち、自分の理性をとめられないのだという。専門医師から分析されたのは、サイコパス気質だということ。早くにスマホをもたせたことから、窃盗やわいせつ行為を繰り返していた。
そういう気質の人間が確かに存在することは知っているが、当事者が小学生であることに驚いた。
 さらに、父親の彼はけっこうなお家柄の一族でもある。もし、もっと大きな事件を起こしてしまったら、自分の立ち位置はなくなってしまう。犯罪者の息子を育てた家族への世間の反撃は厳しい。親族からの圧力もあり、彼は息子への憎しみで胸がいっぱいだった。

 最近、また彼と出会う時間があった。相変わらず子宮をえぐるエッチは変わらなかったが、バツイチになっていた。原因はやっぱり息子である。その後、息子に大量の薬を接種させて落ち着かせる方法に失敗し、施設に入れたが脱走した。現在は行方がわかっていない。彼には二人の子供がいて、息子と幼い娘がいる。娘を引き取ってシングルファーザーとして生きていくようだった。それを聞いて別れた私は、彼の連絡先を削除した。進展が落ち着いたからでも、嫌いになった訳でもない。
 
 彼の行為はとてもドSだった。口調が変わり、息ができないくらいに押し込まれ、血が出そうなくらいにつままれ、子宮口をえぐられる。サイコパスとはなんなのだろうか。彼の娘がどのような女性になるのか、私は知りたくないと思った。

 

 

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