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【日本経済】第3次産業活動指数を少しだけ掘ってみた。

昨日(7/16)、経済産業省から「第3次産業活動指数(5月)」が発表されましたので、それについて少し書いてみようと思います。

ポイントは、
① 5月の第3次産業活動指数は▲0.4%で大きなマイナス。市場予想が+0.1%だったので、ややショックな数字。基調として、直近の第3次産業の業況は「一進一退」といったところ。


② 第3次産業といってもいろいろな産業があり、その中で「成長している産業」と「衰退している産業」の差はとても大きい。結局のところ、「伸びている産業」に投資をするのが最善策のように思います。
の2点。

少し詳しく説明します。


1.5月の第3次産業活動指数の結果は?

5月の第3次産業活動指数は、市場予想が(前月比)+0.1%だったのですが、実際の結果は(同)▲0.4%でした。

以下は、2013年1月以降の第3次産業活動指数の推移です - 増減率ではなく、指数そのもののグラフです。

経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋

グラフの感じからは、「第3次産業(=サービス業)は、なんとか右肩上がりで動いている。しかし、足元は(月単位で見ると)上昇・下落を繰り返しており、一進一退」という感じです。

ちなみに、第3次産業活動指数とは、名前の通り「第3次産業」の活動状況を指数化してトラックしている指標です。

「活動状況」とは「付加価値額の増減」で集計されているので、概ね「粗利額は増えているのか? それとも減っているのか?」ということで、「その業界は活況なのかどうか?」という指標です(2015年の平均=100として指数化されています)。

第3次産業といってもいろいろあるのですが、よく耳にする業界だと、インターネットやソフトウエア、情報通信、金融・保険、不動産、運輸、小売業、飲食、観光業などがあります。

それぞれの業界で景況感は異なるので、大凡のイメージを掴んでいただくために業界毎に指数の推移をグラフ化しています - いずれも、2013年1月~2024年5月の期間です。

経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋
経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋
経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋
経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋
経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋
経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋
経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋
経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋

と、こんな感じです。

2.関連する業界を比較してみた!

もうひとつ興味深いのは「関連する業界との比較」です - 栄枯盛衰や業界の競争力がよくわかります。

まず、第3次産業活動指数を構成する「産業」の中で「第1位の産業 - 最も高い指数(最も活況だった業界)」、「全体の指数(加重平均)」、「最下位の産業」の比較グラフです。

経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋

第1位のソフトウエアプロダクト(除くゲームソフト)の5月の指数は193.9。一方、音楽・映像ソフトレンタルは16.8。

データのスタート時点である2013年1月は、それぞれの指数が116.3と128.0。それが、前者はほぼ2倍になり、後者はほぼ8分の1に縮小しています。音楽や映画の視聴がネットに移行し、ビデオ・レンタル業が衰退したためですが、改めて「時代の変化」と、それによる各産業の栄枯盛衰に驚きます。

次は、「広告」ビジネスです - 新聞広告、雑誌広告、インターネット広告の比較です。

経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋

こちらも大きな格差になっています - よくわかっている事実なのですが、数字にするとインパクトがあります。インターネット広告は2倍になっている一方、新聞や雑誌の広告は半分になっています。やはり、社会のスタンダードが移り変わるインパクトはとても大きいですね。

こちらは、上記とほぼ同じ比較なのですが、新聞、週刊誌、インターネット関連サービスの比較です。

経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋

広告と同じような動きです。時代の変化を映し出しています。

こちらは、ドラッグストアとスーパーの比較です。

経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋

これは「時代の変化」というよりも、「業態の競争力」といった比較です。

競争が激しく、なかなか利益をあげられないスーパーが苦戦している一方、利益率が高く、店舗数を伸ばしてきたドラッグストアが高い指数になっています。

こちらは、「ホテル vs. 旅館」です。

経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋

どちらも、インバウンドで潤ってきた(はずの)業界ですが、差が出ています。

ホテルはコロナ前から上昇傾向ですし、コロナ後も急回復し、コロナ前の水準を超えています。

一方、旅館はコロナ前からジリジリと縮小している上に、コロナ後の回復も弱く、十分に回復しきれていない状況です。

これは私見ですが、ホテルと旅館では(全体として見た時に)経営力に差があり、それがこうした結果の差につながっているのだろうと思います。旅館は「家族経営」が多い上に、地元の旅館組合の一員として活動するケースが多い。加えて、国や地方自治体の観光行政に依存する割合が高い。こうしたことが(全体として)旅館の業況を縮小させることにつながっているのではないかと思っています - 言い換えれば、もっと市場原理と競争を導入する方が、業界の発展にとってはいいのではないか、と。

近い比較ですが、「国内旅行 vs. 海外旅行」です。

経済産業省 第3次産業活動指数(5月)より数字を抜粋

どちらも、コロナから十分に復活しきれていない感じです。「お手軽で身近な国内旅行」の方が回復のスピードは速いですが、それでも65.0とまだまだ低い水準です。

一方、海外旅行はコロナ前から少しずつ低下しており、コロナ後も回復は遅れていて、現在68.6という水準です。インバウンドがコロナ前を超えているのに対して、日本人の海外旅行はまだ回復しきっていません。

円安の影響に加え、やはり日本人の所得が上がらないことが大きな原因ではないかと思っています - 所得が上がらないから、国内・海外ともに旅行需要が弱い、と。

と、こんな感じでこの10年余りの栄枯盛衰を比較してみました。

そこから見えるものは、「やっぱり、伸びる業界に投資することが決定的に重要」ということでしょうか。あたり前のことですが「業界の盛衰」に抗うことは難しいので、「その産業が拡大している」という基調に乗っかることが大切といったところです。

もうひとつは、(やや上記と相反するのですが)成熟産業の中にいる企業でもマネジメントが変わることで、その企業の業績が復活するケースはあるという点です - 例えば、寿スピリッツ(2222)、ライフドリンクカンパニー(2585)、ヨシムラ・フード・ホールディングス(2884)などはこのパターンです。

日本の場合には、こうしたケースが一番大きな投資機会ではないかと思っています。そして、それが多くの外資系PEが今、日本に注目している理由だろうと。

上場企業の場合には、「マネジメントの変革や交代」は難しいところはありますが、M&Aや「変わり者の2代目社長」などのケースで可能性はあります。そうした投資機会を発掘するのも、結構おもしろいように思います。

こんなところです。

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

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