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【日本株】物流業界の再編と大きな投資チャンスについて

ちょっと地味な存在ですが「物流業界」がとてもホットで、大きな投資チャンスなのではないかと考えていて、そのあたりのことについて書いてみようと思います。

先に結論を書いておくと、

  • 日本の物流業界は「再編」が加速する可能性があり、その中で大きく成長する企業が現れる(はず)

  • そして、その企業は投資先として大きなリターンを生み出すのではないか

  • その有力候補のひとつがSBSホールディングス(2384)という会社で、同社の計画通りに売上げ・利益が拡大すれば、大きなリターンになりそう(約3倍といったところか)

  • 時間軸は5~7年といった感じ

こんなところです。


テクノロジーが物流業界の再編を加速する

物流と言えば、トラック運送というイメージですが、現在の物流はITとロボット技術によるテクノロジー産業となっています。例えば、物流の核となる物流倉庫では、最先端のロボットが商品の仕分け、保管、管理、ピッキング、荷造り、配送などの作業を行っています。また、物流全体を設計・コントロールするためには、川下の販売現場から川上の製造まで含めた一気通貫の統合管理システムが必須になり、それには高いITの設計力や技術力が必要になります。要は、大きなテクノロジーへの投資が必須のビジネスになっているわけです。

そうしたテクノロジーへの投資やその開発競争においてトップ・グループに入れない場合、事業として致命的な弱点を抱えることになります。コストや時間、労力がかかる物流サービスになってしまい、競争力が格段に落ちてしまうためです。

日本では、メーカーや大手量販店などは自前の物流子会社を持ち、そこがグループ内の物流を担うのが一般的でした。しかし、上記のようにテクノロジーへの大きな投資が不可欠になると、すべての「物流子会社」が十分な投資を行うことはできず、結果として競争力の弱い物流子会社が出てくることになります。それはそのまま親会社の競争力を削ぐことになり、親会社は何らかの手を打つ必要が生まれるのだろうと推測します。

その選択肢のひとつが、「物流子会社」を切り離し(=売却)、専業の物流会社に(物流子会社と)物流業務を任せるという方法。

実際に、そうした動きは具体化しており(例えば、2022年の日立物流の売却など)、今後はますます増加するのではないかと考えます。

再編の中で主役の一角を担いそうなのが『SBSホールディングス』という会社

物流業界の再編が加速する中で、その一角を担いそうなのがSBSホールディングス(以下、SBS)という会社です。

SBSは1987年創業の比較的新しい物流会社ですが、積極的なM&Aを活用し急成長してきた会社です。2022年12月期の売上げは4,554億円、営業利益218億円、当期利益142億円、EBITDA319億円、時価総額1,276億円で、物流業界では(売上げで)第10位の規模になります。

BtoBの物流をメインにし、特に3PL(Third Party Logistics)と呼ばれる領域に強い会社です。3PLとは、顧客企業の物流を丸ごとアウトソーシングで引き受ける物流形態で、顧客企業の物流の設計から、その運用・管理までトータルでマネジメントする物流サービスです。

SBSの主なM&Aの実績は以下になります。

  • 2004年 雪印物流

  • 2005年 東急ロジスティクス

  • 2010年 ビクターロジスティクス

  • 2018年 リコーロジスティクス

  • 2020年 東芝ロジスティクス

  • 2021年 古河物流

そして、売上げと利益の推移は以下になります(単位 百万円)。

単位 百万円
単位 百万円
単位 百万円

あわせて、2013年以降の時価総額の推移をグラフにしてみました。時価総額は2013年以降、7.2倍になっています。

単位 百万円

SBSの戦略は、物流業界の再編を想定し、そこでのし上がっていくためのもの

SBSの基本戦略は「M&Aを積極的に活用し、フルサービスの物流会社となり、最高レベルの物流サービスを提供する」といったところですが、それを支える4つの重要ポイントがあります。

1.「66.6% & 33.4%」という株式の持ち分は、M&Aの実現を後押しする

上記の通り、SBSは大手メーカーからその物流子会社を取得していきましたが、その際「SBSが66.6%を取得し、残りの33.4%を売却側の企業が継続保有する」というスキームを使っています(リコーロジスティクス、東芝ロジスティクス、古河物流は、いずれもこの形式)。

このスキームは、今後ともSBSによるM&Aの実現性を高めると考えます。

ポイントは、①売却される物流子会社の業績が向上する場合、売却側の親会社もその恩恵に預かれること、②完全な売却ではなく、一定の関与。しかも、拒否権を維持できる33.4%を保有することで(売り手側の)M&Aへの心理的なハードルを下げることができる。これらによって、M&Aが成立しやすくなると推測します。

M&Aは難しい交渉を経て成立するものなので、こうした”工夫”によってM&Aの実現可能性を高めている点は、これまでの豊富なM&A経験の産物なのだろうと考えます。

加えて、SBSはM&A後に(取得した企業の)人材を大切にする経営を行っており、これも売却側の企業にとっては安心材料になるのだろうと考えます。

そんなことで、親会社が物流子会社の売却を検討する場合、実績や買収後の対応などにおいてSBSは「安心できる売却先」として優位な立ち位置にあると考えます。

2.Post-Merger Integration(PMI)のノウハウを蓄積。それを活かした統合後の成長戦略

SBSは、これまでのM&Aを通じて「企業を買収した後の統合(PMI)技術」と「統合後に事業を成長させるノウハウ」を蓄積してきたようです。SBSの社長さんはこれを「成長の方程式」とか、「企業が成長していくエンジンをつくって、M&Aした企業に移植していく」といった表現をされています。

実際、リコーロジスティクスはM&A後、4年間で売上げを53%伸ばしていますし、東芝ロジスティクスは2年で(売上げを)25%伸ばしています。

このM&A後にその会社を「成長する会社」に変革していく技術が、SBSが多くのM&Aを成功させ、売上げ4,500億円の物流会社として成長している核心なのだろうと考えます。

そして、この技術は再編が加速する物流業界でさらにのし上がるための大きな強みになるのだろうと。

3.テクノロジーへの積極的な投資で競争優位性を獲得!

SBSは2022年12月、埼玉県越谷市に「LTラボ」を開設しました。これは、物流倉庫で活用される最先端のロジスティクス・テクノロジー(LT)を開発・実装するための施設です。

グループ各社からLT分野のスペシャリスト約200人を集め、開発・実装試験を進めています。

そして、LTラボで開発された技術は、SBSが全国に保有する物流倉庫へ移植されていく計画です。物流倉庫の”性能”が物流サービスの勝負を分ける要因になるため、こうした取り組みはSBSの競争優位を形作る重要なピースになると考えます。

前述したように、今日の物流はテクノロジー産業になっていて、最先端の物流テクノロジーを持っているかどうかが、競争力の源泉になります。そこでトップに出るための施策が「LTラボ」になるわけです。

4.M&A戦略とテクノロジー投資を支えるファイナンスのケイパビリティ―

SBSは、「M&Aチーム」と物流倉庫の開発と証券化を行う「不動産チーム」を社内に持っています。この「ファイナンスのケイパビリティ―を社内に持っている」ことが、再編が加速する物流業界で勝ち上がるための重要なピースになると考えます。

M&Aチームの存在は、幅広いM&A案件の発掘や迅速な意思決定、必要な資金の調達などにつながるはずです。不動産チームは、継続して必要となる物流倉庫やテクノロジーへの投資を支える資金調達につながっています。

大きな投資ができるかどうかが勝負を分ける環境において、ファイナンスのケイパビリティ―を社内に持っていることの優位性は計り知れないと考えます。

以上、4つのポイントは、再編が加速する物流業界において、SBSが勝ち上がるための戦略的なカギとなる要素だと考えます。そして、それらによってSBSは今後も事業を拡大していく可能性が高いのだろうと。

で、結局、どうなるの?

SBSは、同社の目標として「売上げ1兆円、営業利益率6%、ROE20%」を目指しています。現在の約2倍の規模です。

この目標に現在のバリュエーション(PER11倍)を掛けると、時価総額は4,300億円程度になります。株価にすると10,800円となり、現状(6/14 3,215円)の3.3倍になります。

果たして、この目標は実現できるのか? それはいつになるのか? というのがポイントです。

個人的には「5~7年で達成するのではないか?」と考えています。

理由は、上記した内容です。

そんなことで、SBSは(とても地味ですが)注目する価値のある会社ではないかと思っています。

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

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