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【日本株】アクシージア(4936)- Made in Japan の化粧品を、中国で販売するおもしろい日本企業がある!

多分、あまり知られていない会社だとは思うのですが、結構おもしろい投資チャンスになるのではないかと感じているので、その会社について書いてみようと思います。

会社名は、株式会社アクシージア(4936)。東証プライムに上場する化粧品メーカーです。

ポイントは以下。

  1. Made in Japanのスキンケア製品を、成長する中国市場で販売している点に期待できる

  2. 順調に成長できれば5年で3倍くらいのリターンになるのではないか(と、個人的には思っています)

  3. 同社の戦略のポイントは以下

    1. 成長する市場(=中国)で勝負している

    2. Made in Japanから感じられる「安心・安全」「高品質」が効果を発揮しやすいスキンケア領域で勝負している

    3. 同社のEC領域のノウハウが凄そう!

    4. 同社の社長さんは中国出身の方で、”勝手知ったる母国市場”で勝負している

こんな感じです。


どんな会社なのか?

アクシージアは、2011年に今の社長さんが創業した化粧品メーカーです。東京都新宿区に本社を置く日本企業ですが、中国市場をターゲットにしているユニークな会社です。実際、売上げの90%は中国市場での販売です。

中国において「安心・安全」「高品質」と認知されている「Made in Japanのスキンケア製品」で勝負をしている点が、非常におもしろいと感じています。

事業規模は、(2023年7月期の予想値ですが)売上げ103億円、営業利益18億円、当期利益11億円です(3Qまでの進捗から、ほぼ前述の予想値近辺で着地しそうです)。

以下は、過去5年間の同社の売上げと利益の推移です。売上げは順調に成長。利益は、2020年にコロナの影響を受けましたが、そこから着実に回復しているようです。

出典:アクシージア社の有価証券報告書より作成
出典:アクシージア社の有価証券報告書より作成
出典:アクシージア社の有価証券報告書より作成


同社が製造・販売するスキンケア製品ですが、価格帯は中~高。ターゲットは、比較的年齢を重ねた女性です。

現在の主力商品は2つ。
ひとつは、目もとケアのための「エッセンスシート」。ブランドは、AXZIA(アクシージア)。売上げ構成比は、34.1%。


もうひとつは、肌の糖化を予防する「美容サプリ(ドリンク)」。ブランドは、AGTHEORY(エージーセオリー)。売上げ構成比は、44.1%。

販売チャネルの75%はインターネットで、主に、3つのECサイトを活用しています。

  • Taobao - 中国のオンラインモール。日本で言うと、楽天やアマゾンのようなイメージ

  • Tmall Global - 越境ECのサイト

  • Douyin - 中国版Tiktok(ライブコマース)

同社の現在の株価は1,328円(6/22)。時価総額にすると343億円。PERは29.3倍、PBRは3.7倍、ROEは13.9%です。

戦略シナリオがとても明確です

1.規模が大きく、成長する中国市場を狙っている

中国の化粧品市場は、2019年の時点で4.8兆円(ジェトロ調べ)です。しかも、年率12.6%の成長です。同じ年の日本の市場規模が2.6兆円(矢野経済研究所調べ)なので、すでに日本の1.8倍の規模があります。

加えて、化粧品の消費額は、国民の所得水準が上がると増えていくという傾向があります。中国は、今後とも国民の所得水準が上昇していくと期待されていますので、化粧品の消費額はさらに大きくなると予想されます。

下図は、化粧品の「一人あたり消費金額」と「(その国の)一人あたり名目GDP」を比較したグラフです。現在、中国は左下に位置しますが、今後、一人あたり名目GDPの伸びとともに右上に上昇していくと予想されます(=一人あたり消費金額が増加する)。

出典:経産省 化粧品産業ビジョン

また、中国の化粧品市場においてスキンケア製品は全体の65%を占める主力分野です。

出典:経産省 化粧品産業ビジョン

加えて、日本の化粧品は、中国において最も人気の高い海外ブランドとなっています。よって、アクシージアが狙っているのは中国の化粧品市場のど真ん中であり、とても大きな市場です。

出典:経産省 化粧品産業ビジョン

2.テーマ(分野)を絞り、そこで強力なブランドとなる商品に育てる戦い方

アクシージアは「スキンケア」領域にフォーカスしていますが、さらに細かい分野に絞り込んでいます。具体的な分野と、同社のブランドは以下になります。

  • 目もとケア(分野) - AXZIA BEAUTY EYES(ブランド)

  • 抗糖化&スキンケア - AGTHEORY BEAUTY DRINK

  • 美白(育成中のブランド)

    • 美容サプリメント - The White

    • サンスクリーン - AXZIA BEAUTY FORCE

上記の中で先頭の2つが現在の主力ブランド。3つ目が、現在育成中のブランドです。

スキンケアの中でも、「目もと」や「抗糖化」とさらに分野をニッチに絞り込むことで、大手メーカーと真正面からぶつかることを避け、その分野のNo.1になることを狙っています。

3.販売の主戦場となるECにおける「販売ノウハウ」を蓄積している

アクシージアのメインの販売チャネルはECです。ゼロからスタートして、現在70億円余りをECで販売していますので、ECにおける販売ノウハウはかなり蓄積しているものと思われます。

また、2020年にTmallにおいて「2020新鋭企業賞」を受賞していますので、かなり高いレベルのECノウハウを保有しているのではないかと想像されます。

同社のECチャネル別の販売推移を以下にグラフ化しました(1-3Qの期間の比較です)。

Taobaoは昨期から今期にかけて△8.5%。昨年後半の中国のロックダウンが響いているようです。Tmall Globalは+22.6%。Douyinは+218.4%です。

ポイントはDouyinの伸びです。Douyinは中国版Tiktokで、ライブコマースとして活用されているプラットフォームです。昨年からDouyinに取り組み、今期、大きく売上げを伸ばしている点は、Douyinにおける販売ノウハウが着実に蓄積されているからだろうと推測します。

出典:アクシージア社の決算説明会資料より、当社作成

また、同社はECの販売機能を子会社として切り出し、さらに進化・深化させる計画です(既に、子会社を設立済み)。そして、その子会社は日本におけるEC販売も守備範囲に入っています。

中国のお客様は「日本で認知度の高いブランド・商品を好んで購入する」という傾向があるようで、そのために日本でのブランド・認知度の向上を図る方針のようです。

4.今後の課題は、さらに強固なブランドを構築し、お客様から「指名買い」される存在になること

化粧品メーカーとしては「ブランドこそがすべて」といったところだと思います。そして、(多分)それが同社の最大のテーマだろうと推測します。

同社が取り組んでいるブランドづくりの施策は、まず中国では「観光地へのリアル店舗の出店」です。気品ある店舗が(潜在的なお客様の)目に触れることが重要とのことで、人が集る場所・ブランド構築につながる場所への出店を進めているようです。具体的には、海南島に3店舗、広東省に1店舗、合計4店舗を出店しています。

また、同じ目的で日本にもリアル店舗を出店しています。日本でブランド力・認知度を上げるためと、日本を訪れる中国のお客様の目に触れるためです。具体的には、GINZA SIX、羽田空港、大丸心斎橋店(大阪)の3か所に出店済みです。

こうしたリアル店舗に加え、ネット上でのプロモーションが同社のブランドづくりの施策です。

懸念やリスクは?

これまで順調に成長してきたアクシージアですが、懸念やリスクもあります。主なものを下記してみます。

1つ目は、激戦の中国市場です。
誰もが注目する中国は激戦の市場です。欧米や日本の大手ブランドが確固たる地位を築いている中で、韓国の化粧品メーカーが急速に台頭し、かつ中国の地元企業がどんどん現れてきます。例えば、韓国メーカーは現在、中国への輸入に占める割合が約20%ですが、2010年にはたった4%ほどしかありませんでした。この10年で、日本、フランスに続く第3位の地位まで成長してきています。商品開発とプロモーションが上手い韓国メーカーは、大きな脅威になるだろうと考えます(もちろん、中国企業も)。

そうした競争の中で勝ち残っていくには、やはり「ブランドの確立」ということになるのだろうと思います。アクシージアにとって、ブランドの確立はまだ道半ばだと思いますので、さらなる努力が必要になるのだろうと考えます。

2つ目は、(上記とやや重なるのですが)ヒット製品を継続的に生み出すことができるのか? というポイントです。

現在、目もケアのAXZIA BEAUTY EYESと、抗糖化&スキンケアのAGTHEORY BEAUTY DRINKの2つが大黒柱です。さらなる成長のためには、やはり第3、第4の柱が必要になります。

同社は、2022年4月に株式会社ユイット・ラボラトリーズという化粧品メーカーを子会社化しています。生産キャパシティ―を確保するのと同時に、新しい製品ラインナップと新製品開発のケイパビリティ―を確保することが目的のようです。

また、新たに株式会社インタートレードヘルスケアという会社と戦略的業務提携を結び、新製品の開発に取り組んでいるようです。

だからといって、第3・第4の柱が必ず生まれるわけではないのですが、そのための準備を着実に進めている点は評価(および期待)できるように思います。

そして、3つ目は「多分、何度か来るであろう売上げの落ち込みや伸び悩みといった危機に、迅速・的確に対応できるのか?」という点です。

もっと平たく言うと、「社長さんの経営能力はどうなのか?」という点です。

ここは、もう少し調査する必要があると思っているのですが、ここまでの実績から判断する限り「経営能力は高いのでは?」という感想を持っています。

例えば、2011年の創業から12年で年商100億円の会社にした実績。もともととは美容サロン向けの化粧品メーカーとしてスタートしたようですが、その途上で「中国のリテール市場向け」に事業を切り替え、成長とそのスピードを加速させた点など、社長さんの経営能力の現れだろうと考えています。

また、ユイット社の子会社化、インタートレード社との業務提携、EC販売機能の子会社化、中国と日本におけるリアル店舗の出店など、製品開発、生産、販売、そしてブランド力の向上をそれぞれ意図した施策を行っており、次の成長に向けた土台づくりを着実に進めているようにお見受けします。なので、経営能力に信頼をおける社長さんなのではないかと考えます。

で、結局どうなの?

同社は、「売上げ・利益ともに、年率20~25%の成長を目指す」というのが方針のようです。

仮に、年率20%の成長を実現できた場合、5年後の売上げは257億円、営業利益43億円、当期利益27億円です。これに現在のPER(30倍)を掛けると時価総額は824億円(株価3,187円)。現在の時価総額(343億円)の2.4倍です。

あるいは、年率25%成長の場合、売上げ316億円、営業利益53億円、当期利益33億円。時価総額は1,011億円(株価3,908円)で、現在の2.95倍です。

果たして、この計画を実現できるのか? という点ですが、個人的には「可能性は十分にあるのではないか」と考えます。もちろん、定期的にチェックして、業績が計画通りに行っているのか? を確認することは必須だと思いますが、期待を持てる会社ではないかと。

12年でここまで成長してきた実績と、社長さんの経営能力を考えれば、「十分に期待できる会社」なのだろうと考えます。

長くなりましたが、気になっているアクシージアという会社について書いてみました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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