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友を訪ねて六月の北海道へ

6月下旬北海道を旅行した
目的は札幌在住の友人を訪ねる事
そして山に登ることだ
そのうちに行こうと今まで先延ばしにしていた計画だった
冬場は比較的自由な時間が取れるのだがこの季節は連続した休みが取るのが難しかった
今が人生の節目と今年から自営業一本にしたので時間に余裕ができた
綿密な計画を立てた訳ではない
半分は行き当たりばったりの旅だ
たまたま航空券の安い日を選んだら11日間の日程になった
迎えてくれる相手も毎日が日曜日の暇人なのでこちらも予定が立てやすかった

今の時期北海道は気候も良く山は雪が解けてちょうど高山植物の咲き乱れる時期だ
そして観光客で混み合う夏休みもまだ先なので航空券もレンタカーも予約が取りやすかった
本州は梅雨に入ったが北海道はまだ大丈夫だろうと考えた
もちろん蝦夷梅雨という言葉があるだけに安心はできないのだが

早朝松本から高速バスに乗って成田空港に向かった
東京は朝から一日雨だった
千歳空港からJR線に乗り換えて新札幌の友人宅には外はまだ明るい時間に到着した
こちらは晴れていた

このあたり三十数年程前にしばらく住んでいたことのある土地なのでとても懐かしい
駅から外に出て空を見上げた
夏が近いのに太陽の位置が頭上ではなくすこし斜めなのを確認した
本州より緯度の高い北海道に来たことをこんなことで実感する
住宅街に建つ家々は雪の重みに耐えられるガッチリとした形の箱型が多い
そして見るからに壁の厚さを感じさせる
冬の寒さに耐えられる断熱性を追求するとこんな形に行き着くのだろう
そう言えばこの土地で働いていた頃給与明細を見ると石炭代の項目があった
冬の時期は暖房費の補助の目的で支給されていたのだ
既に石炭の時代ではなかったがそんな名称がまだ残っていたところに北海道らしさを感じた
友人は私より6歳年上で一人暮らしの高齢者だ
最近はあまり外に出かけることもなくなったと聞いていたので心配であった
彼とは以前冬場にスキー場で働いていた時に知り合った仲だ
同じ宿舎の部屋で数シーズン寝食を共にした生活をしていた
気心が知れていてお互い遠慮がない
なんでも言い合える仲だ
同じ釜の飯を食べると言う言葉がある
そんな付き合いをしてきたからこそ生まれた関係は何年会っていなくても再会した時は特別な気持ちになる

改札口で待っていてくれた彼は以前と変わりなく元気そうに見えて安心した
年齢相応に白髪が増えたのはお互い様だ
暖かい季節は近郊をサイクリングしたり冬は近くにある野幌原始林でクロスカントリースキーを楽しんでいるようだ
市バスにスキーを持ち込んで行くのが札幌らしい楽しみ方だ
高齢者はバス代無料なのが羨ましい
地下鉄でススキノに飲みに行くときも便利そうだ
私のように車が必需品の田舎暮らしでは不可能だ
その点では都市生活者が羨ましくもあったりする
まあそんな生活が健康的なのかって言われるとどうかな

彼は若い頃から山登りに熱中していて北アルプスの山小屋で働いていた時期もあったくらいなので今回も出来れば一緒に登りたいと誘ってみたが最近は平地歩き専門とアッサリ断られてしまった
残念
仕方なく山には一人で登ることにした
翌日は晴天に恵まれて近くの野幌森林公園の一角にある北海道開拓の村を案内してもらった
公園の中には遊歩道が張り巡らされていて
大都市の近郊にこんな広大な自然林があるのは貴重だ

サイロがからりと晴れ渡った空に似合う

彼は自分の子供時代に暮らした家を案内するからと園内をスタスタと歩き出した
何のことか怪訝な顔をして付いていくと写真館の前に着いた

写真スタジオ

中に入って説明板を読むと明治時代の北海道各地では写真館は同じ間取りの住居兼撮影室で建てられていたそうなのだ
二階に上がると三角屋根の一方は自然光を取り入れるために大きなガラス窓がはめ込まれていてとてもモダンで明るい作りだ
中央にはどっしりとした架台に据えられた写真機
昔は写真館でこうやって撮ることが人生の節目節目でとても大切な時代だったのだ
いまは誰でも簡単に自分で撮ってしまうから当時とは写真一枚の価値が大きく違うと思う

一階には畳の部屋があり二階は木の床の和洋折衷建築
彼の住んでいた家は写真館だったのだ
そして得意そうな顔をして部屋から部屋を案内してくれた
友人が札幌に来るといつもここを案内するそうだ
部屋に入るとすぐに子供時代にタイムスリップできることが羨ましく感じた
広大な敷地には沢山の家が移築復元されていた
それぞれの中に入ると地元のボランティアが丁寧に説明してくれた
ガイドは高齢者も多くこれはすごく良いことだなと感心した
それは収入にならなくとも生き甲斐に繋がることだと思う
話に熱が入ると止まらなくなるのは玉に瑕だがこちらもどちらかというと暇なので宜しく付き合うことにする

ニシン屋敷

この日は一日中とても天気が良かったのでその後一旦家に戻ってから北広島市まで続くサイクリングロードを走って往復した

緑のトンネルを走る

既に午後四時だったのでまさか今から?と思った
だが私もサイクリストの端くれだ
もうやめて今からビールを飲もうとは言えなかった

遠く夕張岳、芦別岳の山並みが見えた

市内中心部の豊平川から北広島市まで続くサイクリングロードは途中にトイレや休憩施設もありとても良く整備されていた
緩やかなアップダウンがあり道幅もゆったりとしていて快適だった
もともとあった鉄道軌道の跡地を利用したものだそうだ
往復二時間のサイクリング
空が綺麗に晴れ渡った一日
彼は遠方から訪ねてきた私を精一杯歓待してくれたのだった

#北海道 #開拓の村 #写真館 #サイクリングロード #友 #高齢者 #札幌

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