大福家族<掌小説>

「大福」
僕の綽名(あだな)だ。小学校の高学年からだろうか?
気がつけばの呼ばれていた。17歳。高校2年生の今でもだ。

北海道、山口、群馬、長野、岩手等々。父の仕事の都合でアチコチ引っ越し
転校を繰り返したが「大福」。どこへいっても直ぐに綽名されてくる。
父は、職場であっても、仲間内から実は「フクちゃん」。昭和初期のマンガみたいだ。妹は「大福ちゃん」。母親だけが、「大原さん」だ。

大原福寿(おおはらふくとし)

略し「大福」。曰くが綽名の由来なのだ。
父は「福彦」。よって「フクちゃん」。幸せそうな雰囲気と目鼻立ちだ。
妹も「福子」。だから「ちゃん」づけ「大福」ちゃん。一寸、可愛そうな感じもある。
母も「福」。偶然だ。
「へぇ~っ、すんげーな、お前んち」
「へぇ~っ、そうなの?凄いんだわねぇ、大福くんち」
友達に言うと大抵、驚かれる。

家では「寿(とし)ちゃん」、はたまた「寿坊(としぼう)」。気がついたら呼ばれていた。

「おーい、寿(とし)、寿坊(としぼう)、大福買って来たぞ、大福」
「デパートのだけど、まぁ、いいでしょ。お茶にしましょ、寿ちゃん」
「そーなんだよねぇ、本当は甘井屋のがいいんだけど、コロナで休業じゃ、仕方ないよねぇ~」
居間で雑誌を捲(めく)りつつしていると、外出から戻った声が、賑やかに大きくなる。
そして皆々、大福好き。
(はぁ~っ)
何だかねぇと思いつつ、腰をあげお茶の用意をした。
                              <了>


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