読めない「はだしのゲン」

広島で開催されたG7が、閉幕した。
今年は特に広島で開催された事に意義があり、「オバマ越え」。
かつて来日した、オバマ前大統領の滞在時間を、大幅に上廻った。
原爆ドームである。前回は約10分であったが、今回は40分。
首脳によっては、更に滞在していた人もいたようだ。
原爆ドーム。
あの建物は、これからも永く語り掛けて来る。
=「はだしのゲン」と繋がるが、原作者の中沢啓治さんは、数年前に他界。
「わたしの遺書です」
思いを仰られいる。

「~ゲン」と、中沢さんを初めて知ったのは、小学生の時だ。計算すると、連載されてまだ、さほど月日が経っていない。
もはや伝説・フジテレビで放映されていたワードショー7番組「3時のあなた」。森光子さんが司会をされていた。
夏休みで、ぽーっと見ていたら、中沢さんがゲスト出演されていた。
前後の話は、記憶にない。一言だけが、記憶に残る。「その母が、(昭和)41年に亡くなりましてね」
わたしの生まれた年ではないか。
(わたしの産まれた年に、この人のお母さんは死んじゃったんだ。この人は、お母さんをなくしちゃったんだ、いなくなっちゃったんだ)
わたしは生まれて来たけれど、死んじゃった人もいる。
(・・・・・・)
ホント「歩く感受性」みたいな子供でしたな。

7、8年後。高校生になっていた。
3年生の夏休みも終わり、文化祭も終了した。
「これこれの展示があったけど、行った人、いる?」
授業中、某教師が唐突に言い出しだ。
「文化祭かぁ、別にいいじゃん」「面倒臭さ」
「熱心なのに、やらせとこ」
嫌いじゃないが、好きでもない。その気になるのに時間が掛かる。
毎年のマンネリ化にゲンナリしていたわたしは、友達と愚痴を言っていた。

教師が言うに、何でも、原爆に関するものだったらしい。授業とは関係ないのに、熱心に語る。「~ゲン」に関する資料や、作者の中上さんのことなども結構、展示物があった。
「ああいう展示物やったの、本校だけじゃないですか。あれだけでも、成功したと思いますよ」
単なる雑談として聞いていたが、
(中沢啓治。中沢、中沢、、、あっ!)
瞬時にあの夏休みを思い出したのだ。
「中身は凄い。けど絵が下手」
教師が言った「~ゲン」だけど、わたしは読む気になれない。
現実過ぎて怖い。

ああいうテーマを嘘なく、リアルに。
丸木位里・俊(いり・とし)夫妻の「原爆の子」もつとに有名だが、見た瞬間、気持ちが悪くなる。トラウマになる。夢に迄、出て来そうだ。
ガマンにガマンを重ねれば、読めるかも知れない。が、読書は苦行ではない。
「悲劇を繰り返さない為に」
ありのままに、正直に。
分からないでもないんだが、高木敏子が書いた「ガラスのうさぎ」。
丸木俊の弟子であったが、考え方の違いによって、自ら去った童画家・いわさきちひろの作品が、より「そういうこと」。
戦争だとか、原爆だとかの悲劇を「繰り返さないよう」との意思が、わたしには強く感じられる。

又、夏が来る。8月15日、終戦記念日が訪れる。
「はだしのゲン」が注目を集める。「原爆の子」が話題となる。
「吐き気がする」「凄すぎて読めない」
中には、わたしと同じように避けたがる子や、親も出るだろう。
「意気地なし」だの「勇気がない」
「原爆について、考えていない」「戦争について、何も思わない」
周囲は責めるのだろうか?
「こういう分野の本を読むことによって、苦手意識の克服を」
トンチンカンな見解を述べる関係者も、出るのかも知れない。
                         <了>









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