君を真似てね<現代詩>

勤め帰りに  思い出し
今日はね寄ったよ  文具屋に
いつまでいるんじゃ  可哀想
黒枠写真は  似合わない

互いにその種(しゅ)に  奥手でさ
ようよう出会った  三十路過ぎ
おどおどしながら  つきあって(何度も挫折が  あったけど)
まぁまぁかなと  思いつつ(君もそうだと  言ってたね)
一緒になったが  不惑過ぎ

思えば僕ら  夫婦(ふうふ)って
ヘンからスタート  したんだね

子宝(しほう)にすらは  ダメだった
けれどそこそこ  僕達は
幸福(こうふく)幸せ  だったよね

何となくでも  気が合って
話をすると  楽しくて
沈んでいても 弾んでた
僕の本音の  心です

だから飲んでも 直ぐ帰る
「付き合い減ったな」 言われたよ
一杯飲み屋の 女将(おかみ)より
君といるのが いいんだもん
ンな事口に  出せなくて
適度に毎回  誤魔化した

なのに君は  突然に
去ってしまった  僕の前
交通事故で  あっけく
即死の形で  他界した

ようよう出会って 結婚し
一緒になって  三年目
信じられない  運命に
僕は只々  ぼうとした

だから写真は  黒枠で
君の姿は  黒枠で

けれど思った 家帰り
一人君見る  写真枠
黒だと余計  淋しくて
男の癖に  泣けてくる

笑った君の  姿枠
どんな彩り  いいのかな
遺影のそれとは 別の枠
普段着日常   君姿

それと赤い  糸一本
綺麗に蝶々で 結んでね
君の写真に   捧げます

あれはいつの日 春の頃
僕が苦手な  結び方
苦労してたら  君笑い
ササッと仕上げて  くれたよね
最後にギュッと  緒を結び
「あなたとわたし・潔と三喜枝」
はにかむように 微笑んだ


だから僕今  その結び
綺麗な蝶々の 結び目を
しっかりしっかり 結んでさ
君の写真に  捧げるね
そうして言うね 僕も又
「僕達夫婦(ふたり) 三喜枝と潔」

あの時の
君を真似てね 微笑んで
       微笑んで



#創作大賞2023

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