あの道<現代詩>


あの道は長かった
病院から自宅までの道
遺体となった父が 柩に入れられ
自宅まで戻った あの道
乘るは葬儀社の車
お供はわたし 喪主のみ

私服だった 虚無だった ボーっとしていた
いつもの道を帰るだけ なのに
ずっとずっと 空(くう)だった


あの道も長かった
本葬を了(お)え 火葬場へ
葬儀場から焼き場までの道
花入れを迄された父が 柩の中で
最後の旅路となった あの道

乘るのは 霊柩車
お供はわたし 喪主のみ

喪服だった 遺影を抱いた ぼーっとしてた
(長いわ)
永延と続く田園風景を見ながら 時に感じていたりした

最初で最後に通る道 なのに
わたしは あの日を 忘れない
今も どこかで 憶えている



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