80歳のセンパイと暮らす。(28)
「今日もおかしいのよ」
センパイが最近、いちばん話題にしているのは、近所に住む4つ下の友人のこと。
ここ数ヶ月前から、様子がおかしいという。
何度も同じことを確認する電話をかけてくる。
前に言ったことを覚えてない。
話の繋がりが理解できなくなっている。
お金のやり取りを忘れるようになった→これが一番の問題らしい。
誰にも言えず困っていたら、他にも同じことに気づいている人がいて、ようやく対策が打てるようになったとか。
私も大事な約束はFAXで証拠を残すようにアドバイス。
毎日のように、
「〇〇ちゃん、おかしいのよ」
と私に話してくるが、
自分もいつかそんなことがあるのではないか、
と、他人事じゃない切実感がある。
美味しいと思って食べられなくなったら、
何にも好奇心がなくなったら、
もうお暇したいわ、
とセンパイはよく言う。
じわじわと出来ないことが増えてくることの恐怖とたたかっていくことが、老いるということなのだろうか。
そんな恐怖を少しでも和らげるように、
今日も私はセンパイを「鍛える」。
たくさん話して、たくさん聞く。
美味しいごはんを食べる。
彩りが美しいものやデザインが変わったものに気づかせる。
などなど。
刺激を与えるのが、私の役割だもんね、
センパイ。
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