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東京という都市が抱えるクオリティーとボリューム


11月7日、半年ぶりの東京出張2日目

前日の銀座「ラフィナージュ」御礼参りに引き続き、
いつもお世話になっている浅草駒形「ナベノ‐イズム」に、御礼参りとご教授を頂くための往訪です。
内心「素人が2日連続で最高峰フレンチを食べるとどうなるのか」という実験も兼ねて、ですが。

歩いて歩いて、少しずつ慣れてきた浅草。

いつもながら、ミュシュランガイド東京二ツ星の威厳とともに、機会を重ねる度に少しずつ親近感が湧いてくる店舗入口。ここまではサラリーマン時代の頃の営業の気分です。
ただ、一歩ドアをくぐり中に入ると、「どうしても食べて帰りたい」という衝動に駆られるお店、渡辺雄一郎エグゼクティブシェフCEOが率いる『ナベノ-イズム』です。

厨房内30

当日は、スカイツリーと隅田川の景色に圧倒される3階ではなく、テラスを眺める2階に案内頂きました。3階と2階で全く雰囲気が違い、どこか外国にいるようなそんな雰囲気を感じました。

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さて、本日のアミューズは、と思っていたところに、「え?!」。
突然音もなく来られたのは、ドゥミ スーシェフの山本結以さん。満面の笑みで何かを運ばれているが。。。
ニュースサイトの日テレNEWS24で特集紹介されていた人だ、と驚いていたところ、
「先日送って頂いた新米を、黒千石大豆で炊いてみました」と。なんと!いきなりとんでもない珠玉の逸品の登場です。

私の就農地の常吉町で、私も営農組織の組合員として手伝って作った「きぬむすめ」新米をご挨拶にお送りしたのですが、
まさか、ミシュランガイド東京二ツ星のフレンチ有名店で「栗ご飯」を頂けるなんてどんなサプライズでしょう。
最初から本気で驚かされました。品名命名は「栗と黒千石大豆のきぬむすめご飯」です。

栗ご飯30

渡辺シェフ曰く「結以さんはおコメを炊くのが本当に上手なんだよ」と教えて頂いたのですが、確かに美味しいのですが、それをはるかにうれしいが超えてしまいました。
黒千石大豆は、幻の大豆と言われる北海道産の黒豆です。大豆、栗、コメが絶妙なバランスで炊きこまれ、新米をさらに美味しくしてくれていました。
偶然、その日は渡辺シェフの誕生日だったのですが、こちらが誕生日サプライズを頂いたような気分です。確かに、こういうサプライズがさらりとできてしまうのがミシュラン店なのかな、とも感動していました。

本来のランチにもどり、
アミューズは、
フランス産トピナンブール(菊芋)、柔らかく蒸し上げムール貝とホンビノス貝のブイヨンでクリアブイヨン仕立てに、スモークミルクのエキューム、大なめこと共に
近隣老舗(大心堂、種亀)とのコラボスナックとアントナン風グリーンオリーヴのマリネ
リヨン伝統ソーセージ ロゼットで巻いたプラム

アミューズ 30

いつもはグリーンオリーヴから始めるのですが、この日は何故かトピナンブール(菊芋)という珍しい野菜と貝類のクリアブイヨンから頂きました。菊芋は絶妙なとろみで、貝類のブイヨンとともに味の深みが感じられます。
また、新たな発見として、回数を重ねる度に「コラボスナック」の存在感が大きくなってきました。当初はミニチュアの珍しさが先行していたのですが、段々と日仏融合のうま味を感じてきたのでしょうか。

スペシャリテは
“両国江戸蕎麦ほそ川”の蕎麦粉をソースエミュリュッショネの技法で炊き上げたそばがき

スペシャリテ30

以前のブログ参照(「超一流とは複合的な「愛」の結晶なのかも」)になりますが、いつ見ても食べるには惜しい美しさであり、一口食べると「ずっと食べたい」となってしまう不思議な一品です。

さて、今回は食事の後は帰路のみだったので、初めてワインを勉強させて頂きました。
初心者の私にお勧め頂いたのは、ドメーヌ・ブリュッセ ケランヌ レ・シャブリル ヴィエイユ・ヴィーニュ 2015 という赤ワイン。
グルナッシュとシラーというベリー系の2種の品種を使ったあまりアルコール度数の高くないワインで、特徴は、白コショウのようなスパイスが香るとのことでした。

赤ワイン30


今回の「日本伝統野菜とフランス伝統食文化の融合」は、

ブレス産ピジョンの4年熟成パテとムネ肉のショーフロワ、京都伝統野菜山科茄子、デラウエアとシャインマスカット、キヌアのヴァリエテ、黒胡椒と生姜の香るジュレを添えて

素人の私は「ピジョン」を知らなかったのですが(ベビー用品の会社の名前なら知ってますが)、食用鳩を食べたのは初めてかもしれません。
驚きました。食用鳩のムネ肉はとても柔らかく、熟成パテとともに赤ワインと非常に合います。ワインが味わいを変える、これがよく書籍に書いてある「マリアージュ」という表現なのでしょうか。これも料理の楽しみ方なのだなと勉強になりました。
また、黒コショウと生姜のジュレで和のテイストがふんだんとなり、融合のバランスを感じるのです。

ピジョン30

山科ナスは甘く仕上げられ、ほんの少しの辛味のアクセントが絶妙なのです。
面白いのは、キヌアのヴァリエテとの組み合わせで、シャインマスカットの場合と、アプリコットとの場合で随分と香りが異なるので、非常に楽しめます。
いつもながら、渡辺シェフの日仏融合は渾身の作です。
(後日談として、自宅に帰って9歳の娘に「ポッポーの鳩さん食べた」と言ったら大いに泣かれてしまいました)

魚の前菜は、
オーラキングサーモン、純米酒でマリネしてから太白オイルで低温コンフィに、
イクラ、ナツメグの香るホウレン草と固茹で卵のフォンダンをあしらい、
木場トロワフレール製フランス産発酵バター香るブリオッシュにのせ
フランス古典料理“クリビアック”のイメージで

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教えて頂いたのは、オーラキングサーモンにオリーブオイルは香りが強いので、太白オイル(香りのないゴマ油)を使われているとのこと。
これまたオーラキングサーモンが大きく分厚い!なんという贅沢でしょう。

とここで、「ん?んん??!」「あ!!」お隣のお客様にはないものが!!
二つ目のサプライズに、オーラキングサーモンとブリオッシュの間にこっそりカンパリトマトの輪切りがはさんであります!!
先日お送りしたカンパリトマトの初物を使って頂けたようで、(普通、よもやアレンジメニューにしてもらえるなど想像もできませんので)生産者としては、脳内は真っ白、感無量となる訳です。
帰り際に教えてもらったのは、岡部料理長がいつもと違う下処理でトマトを調整し構築してくれたとのことで、抜群に美味しく、オーラキングサーモンを引き立てていました。
また、木場トロワフレール製ブリオッシュ(フランス菓子パン)とオーラキングサーモンが美味しい組み合わせになっていることも驚きでした。

オーラキング近接30

こうなってくると、まるで「某 孤独のグルメ」ではありませんが、
すばらしい料理と向き合うことで、自分自身と話をすることができて、結果、心が安らかになる訳です。
それは、「あー自分はこういう食事で開放されるんだ」「シェフの皆さんの一生懸命な熱量を食べさせてもらっているんだ」と幸せになるのです。

メインの肉料理の前に、
ついに登場したのが、納品2年待ちだったと言われる高村刃物製作所、いわゆる「高村作」のテーブルナイフです。
実物実見、ものすごい刃紋でした。そして、実食!ではありませんが、ものすごい切れ味、のように感じてしまいます。
(日曜劇場『グランメゾン☆東京』でも主人公が使っている包丁は高村作)

高村30

メインは、
国産牛フィレ肉をV.C.C.調理 カンボジア産生黒胡椒ペーストをぬり、
金沢川端蓮根のデクリネゾン、蓮の実と黒胡椒のコンソメアンフュージョン
極上コニャックの豊潤な香りと共に

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これは2,000円の増額で選択できる、バリオクッキングセンター(V.C.C)と呼ばれる最新調理機器で作られ、食べる直前にコンソメを注いで頂く一品です。フィレ肉は本当に柔らかく、コンソメは澄みきって美味しいのです。添えられた蓮の葉が口の中で霧散する不思議現象も見逃せません。

最新調理機器本30

最新調理機器本中身30

V.C.C調理については、『最新調理機器で作る魅力メニュー』旭屋出版2018で渡辺シェフが詳しく説明されています。


一つ目のデゼールは、
完熟柿を真空マリネ ライムのジュレとねずの実のグラスをのせて

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驚きました。そして勉強させて頂きました。ジュレに添えられているピンク色のつぶつぶが、とても印象的で、教えて頂くと「シトロンキャビア」とのこと。キャビアライムとも呼ばれる柑橘類で、その果実の酸味が完熟柿もグラスも、全体を引き立てているのです。

二つ目のデゼールは、
丹波栗のオーモニエール 和梨の真空マリネ 無農薬月桂樹のグラスを添えて

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このデゼールも、本当に美味しいです。メニューでは、※香り高い丹波栗を丁寧に皮を剥き、自家製和栗ペーストにし、渋皮煮、カシスを包み込み茶巾風に、と説明されており、後日ブログを書いている時に、こ、これは!と驚いたものです。また、月桂樹の香りを移したグラスにも当然驚かされました。

しめくくりは、
日本堤 バッハコーヒーと駒形をイメージした小菓子

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生キャラメル、中辛七味のマカロン、きな粉のカヌレ ド ボルドー、抹茶ティラミス、と浅草の老舗コラボが続きます。

いつも目撃することですが、最後の最後まで、これでもか、これでもか、と続くおもてなしに、周りのお客様も満面の笑みか、リラックスなるままの談笑に花が咲いていました。
入店の時も、退店の時も、渡辺シェフはじめ皆様が可能な限り、ご挨拶お見送りに力を注がれること、これが渡辺シェフが受け継がれ培われている文化なのだと、誰もが感じ入るところでありましょう。

当日は、サプライズの張本人の渡辺雄一郎エグゼクティブシェフCEOに、オーラキングサーモンにカンパリトマトを合わせて頂けました岡部浩児料理長、特別裏メニュー「栗と黒千石大豆のきぬむすめご飯」を作ってくださった山本結以ドゥミ スーシェフにお見送り頂きました。

ナベノイズムの皆さんと30

(左より 渡辺雄一郎CEO、安永、山本副料理長、岡部料理長)

東京でのおもてなしレベルが世界最高峰であるのだろうということを、日本人自身がしっかりと認知していないことの「機会損失」は計り知れないと思う訳で、国内で最高峰レベルを享受できるチャンスを逃してはならないのでは、と強く感じるのです。それだけ東京にはボリュームがあるということでしょうか。そして、それ故に競争も激しいと。
できるだけ若い年齢に、別段格好つける訳ではなく「勉強にしきました!」と、食して経験するだけで、その後の人生の過ごし方が随分変わるように思えてなりません。それほどまでに、料理、サービスに皆さんの愛情が込められていると伝わってきます。

銀座「ラフィナージュ」と浅草駒形「ナベノ‐イズム」と、2日連続で最高峰フレンチを食べた訳ですが、普段の生活に戻り、1週間経過して、さすがに今回の効果は絶大で、未だにポテチなどのジャンクフードは体が受け付けず、家族に作る食事は「父ちゃん、今日もごちそうになってるよ」と娘に指摘されるほど、いつもより品目が増えて、それでも夜中になると空腹にさいなまれる、という状況になっています。

東京出張の目的の一つでもある渡辺雄一郎シェフが開発した「Nabeno-Sauce」(ナベノソース)購入の話はまた別の項目でお話致しましょう。

渡辺雄一郎シェフ、ナベノ-イズムの皆様、いつも以上に感激しました。ごちそうさまでした。


レストラン ナベノ‐イズム(浅草駒形)

〒111-0043東京都台東区駒形2-1-17
TEL:03-5246-4056
URL:http://www.nabeno-ism.tokyo/


百果葉(HYAKUKAYO)は「次世代のための農業をめざして」兵庫県で農産物を生産しています。https://hyakukayo.com/  ブログ「百果葉創業回想記録」http://blog.livedoor.jp/hyakukayo_blog/ もよろしくです!