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天国で将棋をしよう

じいさんの話

うちの爺さんは、農家だった。
畑仕事で色黒、筋肉モリモリで、まさに健康そのものだった。
めったに怒らず、頼り甲斐があり、大好きなじいさんだった。

ただ、十年くらいまえに大腸ガンにかかって亡くなってしまった。

あんなにムキムキだった体は、本当にあっという間にしぼんでしまって、すごくショックだったのを覚えている。
大好きだった庭いじりも、転んだら危ないからという理由でさせてもらえなくなり、「もう生きていてもしょうがない」とすごく悲しそうだったのが、最後に覚えている爺さんとのやりとりだった。

ちょうど今の妻と結婚する?とか考えはじめてたころで、結婚式にも呼べず、孫の顔も見せれなかったのが、残念でならなかった。

娘の話

はやいもので、もう長女は7歳になった。

誕生日プレゼントは何がいい?と聞くと、「将棋がいい!」と答えた。

どうやら学童で将棋を教えてもらい、楽しかったようだ。

なかなか渋いね笑と思いつつ、将棋セットをプレゼントした。

さっそく娘と将棋をした。

そういえば、私もこどもの頃、じいさんと将棋をしたなぁとしみじみと思った。

私👨「娘ちゃんは会ったことないんだけど、じいさんはとっても将棋強くて、
なかなか勝てなかったんだよ」

娘👧「え〜そうなんだ!」

娘👧「じゃあさ、天国に行ったら、将棋してもらおう!」

娘👧「でも会ったことないから、そのときは、パパも一緒に探してね」

不意を突かれてしまい、涙がこぼれそうになって、慌てて顔を背けた。

私👨「もちろん!でも、なるべくゆっくり来てね笑」

天国の話

なんとなく、葬式が終わったら、それで終わり。と思ってた。
もう、私とじいさんとの話はそこまで。
関係が更新されることはなく、たまに思い出して、なるべく忘れないように、と。

死に目に会うことも、結婚式に呼ぶことも、孫の顔を見せることもできなかった、このモヤモヤは一生抱えていくんだろうな、と。

でも。

天国なんて信じてなかったけど、天国があるってのも、悪くない。

天国には将棋がないかもしれないから、いくときは忘れずに持っていかないと。

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