零時の覚 / 朝の微睡

喉が焼きつくような夜に
この身の不幸が成仏していく
触れなければ出会わない苦痛に
この身の存在を確かにされる
泣き腫らしたまぶたの内側で
輪廻転生の宇宙が幕を開ける
眠りに着く弱った魂に
真っ暗な光がまとわりついていく

胎児は未だ現れず
腕を掻きむしる音だけが聴こえる
揺らぐ量子の海の中で
消える瞬間に蘇って吐く

救われることを望んではならぬ
救われることを望んではならぬ
救われることを望んではならぬ
救われるとはすなわち解脱である
解脱とはつまり消滅である
消滅とはつまり

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始まるとともに終わり
終わるとともに始まり
朝の透明さに溶かされる涙は
他でもない私の体液だ

時間はここで止まっている
私のすべては置いてけぼりにされる
昨日の記憶がないように
死ぬことも 生きていることも
忘れてしまっている

太陽は未だ現れず
薄明のなかで呼吸をしている
ベランダに寄りかかる身体の
あちこちが軋む感覚がする

私が誰であるかを忘れてはならない
そう問い続けることを忘れてはならない
たとえ日々がそれを拒もうとも
私がそれを隠したとしても
私が誰であるのかを
手放してはならない

街が音と光を取り戻していく
反比例するように眠たくなる
足りない分を取り戻すまで
もう一度眠ることにした

<れいじのかく/あしたのまどろみ>


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