Nanoka

眠るのと音楽がすき / 詩と短編

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眠るのと音楽がすき / 詩と短編

最近の記事

春の日

バスに揺られていた 誰かの要求を満たすためだけに 目的地に向かう日々が続いていた 川沿いで咲き始めた桜を見て すこし怖くなる まただ またこの花は 私が春だと気づく前に咲いた 肌がひりつくように暑くなれば夏だと思い 吸い込む空気すら冷たくなれば冬だと思う 最近の異常気象で秋はないようなものだから ビルに囲まれたこの街で四季を告げるのは この桜が唯一と言っていいだろう 春はこっそりとやってくる 三寒四温と言うように 暖かい日が続いても寒い日もあって ああまだ冬だ、と思っ

    • 電気のきえた部屋で

      黒い猫が君のなかに入ってくるよ 滑り込むように 溶けるように まぶたを閉じた君のなかに 波が君をさらうよ そっと優しく 包み込むように 悲しんでいた君を救い出すように 鳥がはばたいてくるよ ゆったりと 歌をうたいながら いつか見た安息へ導くために 誰かが祈っているよ 壊れぬように 支えになれずとも 明日を迎えねばならない君のために 穏やかな寝息がきこえるまで あたたかい夢にであえるまで なにもかもが 君をまもっているからね

      • 天命と体温

        物理的に生きていることも 精神的に生きていることも 肉体がここにあることも 結論としては同じ なにものでもなくなったとき 私をここに在らしめる依り代が消え 魂のみを浮遊させることになったとき 存在は原子へと仮託されるのではないか 意思が消えても存在は終わらない とるに足らぬ極小のひと粒となって いまだ物質世界をただよう 私はなにもできない 「死んだらどこに行くの」 「どこにも行けないのさ」 「どうして生きているの」 たぶん世界も生まれた意味を探している 存在以前を考

        • Sleepism

          こんなくだらない夜に いつまで未練たらしく起きてるんだ 1日中眠って過ごした 眠りなおすたび深くなって あのまま寝てたら 僕は起きられなくなってたんじゃないか たぶん死と、眠りにつくことは そんなに変わらない 「僕」が消えてしまっている間 なんであんなに心地いいんだろうな 眠るのは好きだ でも夜は寝たくない 1日を終わらせることを なんで僕が決定しなきゃいけないのか 明日は良い日になる そう信じて眠ることができない それがなによりつらい スマホいつまで見てんの。 い

        春の日

          零時の覚 / 朝の微睡

          喉が焼きつくような夜に この身の不幸が成仏していく 触れなければ出会わない苦痛に この身の存在を確かにされる 泣き腫らしたまぶたの内側で 輪廻転生の宇宙が幕を開ける 眠りに着く弱った魂に 真っ暗な光がまとわりついていく 胎児は未だ現れず 腕を掻きむしる音だけが聴こえる 揺らぐ量子の海の中で 消える瞬間に蘇って吐く 救われることを望んではならぬ 救われることを望んではならぬ 救われることを望んではならぬ 救われるとはすなわち解脱である 解脱とはつまり消滅である 消滅とはつま

          零時の覚 / 朝の微睡

          Like Thunder

          些細なレッテルを気にしてばかり 伺う声は震えている 友情に似た関係に甘えて 失ったことに気付かない 夢の中でも君に会えないな 内側までもが嘘だらけ 灰に沈んだ街が 濡らされて溶けてなくなるならば 激情がこの身を焦がすまで 雨の下で待とう 嫌われることに慣れなくて 相槌がうまくなってゆく おどけるのは僕自身好きだ 僕自身が嫌いだから 現実に居るのに君が見えないな 外側までもが壁だらけ 水に沈んだ街が 冷やされて夜に消えるならば 衝動が鋭く光るまで 嵐の中で待とう 誰

          Like Thunder