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今ここにいないあなたへ

まずまず。

朝起きてすぐ、横にも縦にも、頭がゆらゆらと揺れる。胃やら足先やらもひりひり、じりじりと痛む。

昨夜はお酒をたらふく飲んでしまったから。そう、二日酔い…を久々に経験した。あの、ビールや日本酒やワインを、順番や量もおかまいなしに平らげていく、理性に頼れないわっかい飲み方。

いい気持ちはしないので、もう二度とやりたくない、と毎度誓っているが、それにしても、昨夜はそんなに飲んだつもりはなかったのに、と思うと、お酒が弱くなっていることを感じて、最近ひそかにお酒を控えている、その効果がわかりやすく出てきたような気がした。

そうして、胃を痛めつけてしまったお詫びを、味噌汁にこめて、朝からかきこむ。

昼はとても暑かった。コメダ珈琲へ行き、アイスコーヒー。ステンレスカップの汗を眺めながら会話をした。コメダ珈琲の壁は、セメントが雑塗りで、この雑さはヨーロッパ的で、これがかっちりとしていない、自然な風合いと落ち着きを店内にもたらしているのかもしれないね、という話をした。

そして、書物を早く読ませてよと。期限を決めて、とにかく書き切ること…。彼が福岡から帰るまでにという話をした。

私は、ボロボロから抜け出せないでいる、だから身なりも顔もかなりきつい。本当にますます。なのだが、元気が出るようと言ってくれるものだから、他人から見る自分とは、自分が思う自分とは、違うのであろう。

その言葉を頼りに、パソコンに向かっていたが、画面を見ているだけでは、浮かんでくる言葉は、言葉そのものなだけであって、絵になるべきイメージや、構想や設定とかは、ぐるぐると右往左往して、メモ書きばかりが増えていく様。何度この設定について考えて、堂々めぐりをしているのか…

席近くのマダム3人組(みなさま中肉中背)は、コストコのあれがいいだとか、最近あそこのパン屋が気になっているだとか話している。

向かいの爺さん2名と婆さん1名(みなさま細め)は新聞を広げながら、私の髪色を見て最近はああいう髪色の子が多いだとか言って、暑いだとかそんなことを話している。

その爺さんたちが帰った後は、また別のマダムたち3名(みな姿勢が良い)が来店して、息子たちがなんたらだとかを話をはじめた。

1人客たちは、おのおので、勉強をするひと、パソコン作業をするひと、ナンプレをするひと、サンドウィッチをがっつくひと、立ってなにか考えているひと、など。

図書館へ逃げ込んだ途端、雨が降った。ザーザーぶりは最近の八王子におおくて、この時期は傘が必要だ。

月についての本や、輪廻についての本を探したのだが、なんだか考えすぎて文字が気持ち悪くおもえた。

かき消すように、村上春樹の処女作『風の歌を聴け』を読んだ。彼の文体は、日記のような、謙遜しながら自分と会話をしているような、決して自分を大きく見せない、かわいそかわいい、というような文体で、内容もこれから小説を書くんだというようなところからスタートしていた。物書きの苦労なんかもそのまま物語にする姿勢は、それでいいんだと思いつつ、川上未映子も、同じように、西加奈子も、ソングラインの文中でも同じように「作家であることの苦悩」が描かれていた、そういえば、と思い出した。

タイトルに惹かれる本はないものか、ぐるぐると図書館を巡ったけれど、特にないので2階へ移動して、児童書を眺めた。『文字がない時代』というものを読み、もともとは口伝や口言葉が先であることを再認識した。そこから、絵やなんとか狼煙なんかで、今ここにいない相手に伝えることを経て、そうして、書き言葉や文字が生まれた、というもの。

ということは。書き言葉や文字は「今ここにいないあなた」に向けて書いているのだ。それは恋人かもしれないし、友達や知らないひと、あるいは未来の自分に向けて。

雷がなん度も轟いた。ピカピカ光るのはもう慣れっこだ。そうして2冊目で『ふしぎな物語』を読んだ。そう、いまは不思議な構想をしている物語に惹かれているため。

それを借り、入り口にて待ち合わせ中、英米文の教授の方とお話しした。
小説を書くにはリアルライフとイマジネーションの掛け合わせだと、教えてくれた。

そうして、調布への道中、さっきまで雷鳴轟かして酷かった雨空がだんだんとあたたまり、淡い赤色と青色、そうして夜の灰色、黒色の雲を携えた、なんとも綺麗な空を見てしまった。

勾玉は胎児やキティちゃん論というお話とともに。

なぞなぞをすることみたい。例えば、寂しくて丸いものだとか。
そうして、面白いことで世界を溢れさせるのは自分であるし、最低限の生計を立てられていれば、別にどんなことしたって構わないんだって。

もっと楽しいこと、やっぱり陰鬱な文章よりも楽しいものを読みたいものね。

そうして、自分の中でチグハグだと思うことはすべて、なにかで繋がっているのだから。大丈夫。必ず繋がるから、と。

畳の匂いを感じながら、より良い言葉に沢山触れることを誓った調布の夜でした。

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