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【読書メモ】今週読んだ4冊


『「ひとりが好きな人」の上手な生き方』ティボ・ムリス (著) 弓場 隆 (翻訳) 


「これ、私のことだ…!」共感する声続々!
著書累計世界60万部!フランス出身のビジネスコーチが伝授。
「ひとりが好きな人=内向型」が生きづらさを解消し、充実した人生を送れるようになる一冊。
今すぐ実践できる14のエクササイズで、自分の本当の強みが見つかる。
▼こんな悩みはありませんか?
あなたは雑談が苦手だろうか?
電話に出るのがおっくうだろうか?
招かれたパーティーを、なんとかして欠席したいと思っていないだろうか?
もし心当たりがあるなら、おそらく「内向型人間=ひとりが好きな人」ということになる。
しかし、心配はいらない。あなたは変わり者でもなければ、どこかに問題があるわけでもない。むしろ、社会から必要とされる優れた資質に恵まれている。
内向性を才能として社会のために役立てるいちばん良い方法は、自分のそういう性格を適切に評価することだ。
次の各項目について考えてみよう。
● 内向性について学び、それが自分の人生にどういう影響を与えるかを知りたい。
● 「人前でもっと話せ」「もっと外向的になれ」「社交の場にもっと出ろ」と言われることにうんざりしている。
● 自分の内向的な性格を全面的に受け入れたい。
● 内向的な性格を活かして、公私ともに充実した人生を送りたい。
● 社交の場で苦労せず、上手に人と接したい。
● 気まずさや後ろめたさを感じずに、なるべく早くパーティーから立ち去りたい。
● あるがままの自分に自信を持ち、内向型としてうまく生きていきたい。
以上の項目のどれかに該当するなら、本書はあなたのために書かれている。(巻頭のメッセージ より)

Amazon商品ページより

・「内向的なあなたでも社会貢献できます!」という本なんだけど、社会に貢献したくはないな、べつに。
・内向的な人間と外交的な人間は50:50と言われているが、実際の印象は外交的な人間の方が多いように感じる。なぜなら彼ら彼女らは常に目立つ存在だからだ。だけど実際は内向型が人類の半分を占めており、社会貢献もしている。
・「外向型は人と話す事でエネルギーを回復する。しかし内向型は人と話すとエネルギーを消耗する。あなたたち内向型は外向型のエネルギーを補充するために利用されているのだ。そんなことは断っていい」というくだりがある。「陽キャは人と話すことでエネルギーを回復する」という言説、フランスにもあるんだ・・・(著者はフランス出身)
・飲み会などに行きたくない場合は素直に断っていい。ひとりでいることが好きなら、それで自分の幸せを大切にすると思おう。飲み会の誘いの上手な断り方も載っているので、理屈だけでなく実践的な本である。
・大人数で話すのが苦手なら、一対一で話す機会を設けよう、とも説く。いや、私は一対一で話すのも苦手なんだけども。
・外向型とコミュニケーションをするうえでのテクニックも紹介されている。たとえば、自分の傾向を素直に相手に伝えること。うーむ、相手が良い人だったらそれでいいけれど、相手によっては「めんどくせー奴だな」と一蹴されそうな気もする。

『アンデッドガール・マーダーファルス』4巻 青崎 有吾


輪堂鴉夜が、生首でも、不死でもなかった時代。
偉大なる師と共に過ごした黄金の日々。
今や彼女の他にそれを知るものは天の星のみ。

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・このミステリにはバトルシーンがある!!
・前巻が決戦前夜みたいな感じで終わったので、いよいよクライマックスかと思いきや、ここでまさかの前日譚。1巻以来の短編集方式となっている。
・トリックに怪異やモンスターの存在を織り交ぜる特殊設定ミステリが特徴の作品。だけど今回はトリックに怪異の特殊能力が使われることは無いので、推理しながら読む際は怪異を念頭に置く必要はない。2巻と似たような感じ。
・1巻がイン・メディアス・レス(物語を中途から語り始める手法)で始まったので、主人公たちの最初の方のエピソードやサブキャラと知り合ったきっかけとなる話は省略されていた。今回はその空白の部分を埋める巻となる。
・ヒロインの過去が明かされる回。ヒロインには師匠となる破天荒な女性がおり、彼女との幸せだけどどこか奇妙な日々が綴られる。また、サブキャラの女性キャラがヒロインを慕っているのだけれど、その女性キャラとヒロインの日々を描く前日譚も収録されている。それで思ったんだけど、作者やっぱり百合好きでしょ。というかインタビューで百合が好きだと明言してるし、百合小説アンソロジー『彼女。』にも寄稿してるし。主人公は男ということもあり「百合要素がある作品」ではあるけれど「百合作品」ではない。けれど文章の端々から「この作者、百合好きでしょ」というオーラが伝わってくる。いつか百合で長編ミステリを書いてほしいな。
・ヒロインを慕う女性キャラ、いわゆる「百合キャラ」がいる男女物作品は私としてはナシ寄りのナシも甚だしいのだけど、よくある「百合キャラなのに男主人公にデレる問題」が本作には無いのは地獄に仏というか、まだ許せる部分だと素直に思う。ヒロインを慕う女性キャラが男主人公に対して向ける感情は「共にヒロインを守る忌まわしき戦友」という解釈です。
・ロイズ(2巻から登場する怪物退治の武装集団)のみんなの話も読みたかったので、無いのは少しさみしい。このままじゃ本当にただの噛ませ犬じゃないですかー
・『人形裁判』という話がいちばん面白かった。あえて他の作品の名前を出すけれど、『逆転裁判』みたいな展開が巻き起こる。街の名士を殺害した容疑を掛けられた人魚を主人公たちが弁護するんだけど、証人の証言の矛盾を突いたり理路整然とした推理ロジックを組み立てたり、テンポが良くて読んでいて気持ちよかった。
・前巻までの感想はこちら。
1巻
2巻
3巻


『歌われなかった海賊へ』逢坂 冬馬

1944年、ナチス体制下のドイツ。父を処刑されて居場所をなくした少年ヴェルナーは、体制に抵抗しヒトラー・ユーゲントに戦いを挑むエーデルヴァイス海賊団の少年少女に出会う。やがて市内に建設された線路の先に強制収容所を目撃した、彼らのとった行動とは?

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・ナチス政権下版スタンドバイミー。1944年、ドイツのとある町に住む少年少女が線路を辿って歩き続けたら強制収容所を見つける話。人々を虐待して死に追いやる施設の存在が許しがたい若者たちは、収容者を送り込む列車を止めるべく線路の爆破を試みるが・・・
・『同志少女よ、敵を撃て』の作者の新作。私としては残念ながら今回は百合ではないけれど、チョイ役でレズビアンカップルが登場する。
・本作は過去編と現代編に分かれている。現代編の主人公がセンシティブなことを言って同僚から窘められたあと「ポリティカル・コレクトネス、政治的正しさの信奉者め」と内心で逆ギレするシーンがある。シスターフッド作品『同志少女よ、敵を撃て』の作者がこんな文章書くんだ!? と最初はビックリしたけれど、最終的にはその発言を反省するような描写があったのでよかった。
・ナチス政権下において国民は「喜んで騙される」、という一文がめちゃくちゃ刺さった。たとえ強制収容所の話を聞いても、他の誰かから「それはウソだよ」と吹き込まれれば安心して受け入れる。人は自分にとって都合の悪い真実よりも、都合の良いウソを信じたがる。
・ナチス政権下の国民の多くは、虐殺を知っているのに知らないフリを貫き通した。知っていながら黙認したら同罪だから、無知という安全圏に留まるために人はあらゆる手を尽くす。あからさまな不正義があって、それを知りながら何も言わないのは中立ではなく不正義への加担だから。
・保身のための無関心を決め込む人々に対しては、いくら声をあげても反応が返ってこない。この無力感よ。それでも自分たちの意志を貫くために行動をやめなかった主人公たち。その結末は、読み終えてしばらく経った今でも思い返すと心にクるものがある。
・「私は何の当事者でもなかったのだ」というセリフも刺さる。本作で起こった事件に対して、正確な事実認定を求めて訴え続けた端役のキャラクターがいる。けれど彼はその事件の当事者ではないので人々から相手にされなかった。でも、当事者じゃないと説得力ないってどうなのよ? と私は思う。ネットでも、マイノリティの権利問題を非当事者が訴えると「当事者でもないくせに」と難癖をつける人が出てくる。けれど、権利問題を当事者しか訴えられなくなったら声をあげる人の絶対数がどうしても少なくなるし、何よりその問題で苦しんできた本人だけに活動を押しつけるのは酷でしかない。
・他人から簡単に「理解」されることの気持ち悪さ、ということも本作のテーマの一つ。最初、主人公たちは連合国サイドから「ナチス政権に立ち向かう勇気あるレジスタンス」と評価されていた。けれど主人公たちにそんなつもりは一切なく、そんな分かりやすい「理解」をされることに笑ってすらいた。その後も、他人を筋違いの「理解」で分かったつもりになることの気持ち悪さが繰り返し描写される。
 その代表的なものが、現代編で登場するトルコ出身の学生である。現代編の主人公である教師は、学生のことを単に「トルコ出身だからドイツのクラスに馴染めない」と認識していた。けれど、実は学生はトルコ出身であると同時にクルド人でもあった。トルコでは長らくクルド人が弾圧されており、非常に複雑な立場と言える。これまでの「トルコ系移民2世」という粗雑な理解では見えてこなかった彼の人物像が、ここにきて初めて浮かび上がる。
 私たちは他人を「理解」するにあたって、しばしば自分の知るアイデンティティに還元して、それ以外の理解を拒む。自分の想像力の範疇に留まった筋違いの理解をして「ああ、きっとこういう人だね」と型に当てはめる。けれど、人の複雑な内面を簡単に理解することなんてできない。たとえば「自分のことを100%完璧に理解してくれる他人がいるか?」ということを考えてみれば、答えは自ずと分かるはず。そんな人、いるわけない。
 ここまで書いたところで、冒頭に書いた「ナチス政権下版スタンドバイミー」も粗雑な理解の一つなんだろうなあ、と思った。ツカミのある一文を考えたつもりだったけど、そういう分かりやすいまとめ方をすることで取りこぼされるものが大量にある。Twitterでも「あの映画は実質マッドマックス」みたいなインパクトのあるたとえ方をするツイートがよくバズるけれど、そういうのも粗雑さの一つだろうな、と。
・ナチス政権下の虐殺に対する「忘れてはならないと言われていて、忘れてはいないということになっている」という一文も印象に残った。日本でも、これから夏にかけて太平洋戦争に関する特集が色んな媒体で組まれて「あの戦争を忘れてはならない」と毎年繰り返される。だけど、集団的自衛権や積極的平和主義などの戦争をしたいとしか思えない主義主張が政治の場でポンポン通る光景を目の当たりにしているので、じっさい忘れてるだろ、と思う。
・ナチス政権下が舞台でレズビアンカップルが出てくるので「死なない?」と読んでいる途中は不安になった。結論を言うと、レズビアンは死なない。けれど、
 ※以下ネタバレ




 ゲイは死にます。残念ながら。




『メグル』乾 ルカ


「あなたは行くべきよ。断らないでね」無表情ながら美しく、奇妙な迫力を持つH大学学生部の女性職員から、突然に声をかけられた学生たち。店舗商品の入れ替え作業や庭の手入れなど、簡単に思える仕事を、彼女が名指しで紹介してくるのはなぜだろう──。アルバイト先に足を運んだ学生たちに何がもたらされるのか、厄介事なのか、それとも奇蹟なのか? 美しい余韻を残す連作集。

Amazon商品ページより

・大学のバイト斡旋を通して人と人とが繋がる、少し不思議な物語。
・体を患った若者、親が半身不随となった大学生、報酬が妙に高額で、何かが確実におかしいエサやりバイトに巻き込まれた若者。ちょっと奇妙でおかしなバイトを通して、人の心のスキマや弱さ、身体的・健康的ハンデに寄り添う話が綴られる。ある時は優しく、ある時は切ない。
・恋愛展開の無い、人と人との心のふれあいを描くハートウォーミングな短編集が読みたい人にオススメ。ただ、ひとつだけ心の触れ合いもへったくれも無いガチホラー回があるけど。





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