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読書感想文 スティーブン・キング『ミザリー』

 『ミザリー』については、中途半端な映画紹介の知識くらいで、「作家が、頭おかしい女性ファンに監禁されて、小説を書かされる」くらいしか知らなかったので、ここは小説も読んでみようという話。

 初っぱなから、この「あなたのナンバーワン・ファン」が怖いのなんの。そんな飴と鞭ならぬ、痛みと薬でコントロールしようとか、邪悪すぎる! そして、作家が書き上げたばかりの「個人的最高傑作」の原稿を焼き捨てられて、彼女がお気に入りの既存シリーズもの(19世紀イギリスが舞台のメロドラマ。この主人公の名がミザリー)の続編を書かされることに。(まだ、パソコンは普及しておらず、タイプライターの時代なので、電子ファイルなどはない。紙で打ち出したものがすべて)

 精神的に不安定な人間と二人きりで、相手の機嫌に自分の命がかかっている恐怖は、本当にゾクゾクするんだけれど、じっくり読んでいくと、作家の創作論、作家にとって物語を書くこととは、という別の物語の筋が見えてきて、これが予想以上に面白い。もちろん、そういう究極の状態に陥ったからこそ、あえてそういうところに思考がいざなわれるということもあるだろう。(こんな目に遭いながら、なぜ書くのか、書き続けるのか)

 ラスト1章が、読者をジェットコースターのように、上下左右に振り回してくれるので、終わりまで読まないと止まらない! ああ恐ろしい。さすが、サイコホラーの傑作と言われるだけある。
 しかし、先も書いたように、作家はなぜ書くのかというテーマが意外に深くて、ただのホラー小説ではないんだなというのが発見。作家が小説内で書いている、小説内小説の「ミザリーの生還」も読める。

 これは映画になると、作家がなぜ書くかの話よりも、そのシチュエーションの恐怖だけが抽出されているんだろうな、という気がするので、そのうち映画も見てみようと思う。(痛そうな話なので、それに耐えられたら)


 

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