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第2話「花の帆と不思議な船」

<<宙の猫島(そらのねこじま)のストーリー>>
不眠症の月が羊と間違えて猫の数を数えているうちに本当に猫があらわれて、天空に猫の島を作ってしまいました。天空の猫島に住む7匹の猫たちはお月さまとおひさまに見守られながら、自然がいっぱいの不思議な島を舞台に、楽しいことや面白いことを探しながら毎日を過ごしています。今日も7匹の猫たちが何やら面白そうなことをはじめました……

<<配信について>>
「宙の猫島」は天空の島で暮らす7匹の猫の物語です。毎週金曜日に1枚の新作絵画をアップロードします。4枚の絵でひとつの物語になっています。4週目に作者・なかひらまい が書いた物語をアップロードします。絵と一緒に摩訶不思議な物語を楽しんでください。インスタグラムのフォローもよろしくお願いします。
●ストーリーのアーカイブ・マガジン:https://note.com/7cats/m/m8d855af0c689
●インスタグラム:https://www.instagram.com/soranonekojima/

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気に入った絵があったらスマホ壁紙をダウンロードしてください。画像を長押するか、PCの場合はマウスの右ボタン(Macはcontrolを押しながらクリック)で画像を保存できます。しあわせの猫島で暮らす猫たちと一緒に日常を過ごしてください。素敵なことがおきますように。

<<マンガ版『宙の猫島(そらのねこじま)』>>
『宙の猫島(そらのねこじま)』配信1周年を記念して2024年2月よりマンガ版を随時アップ。『宙の猫島』の世界はどんどん広がっていきます。
●マンガ版『宙の猫島』マガジン:https://note.com/7cats/m/m455cd21fe3c2

<<毎月、額装用の絵画をプレゼント>>
宙の猫島(そらのねこじま)のメールマガジンでは毎月額装用の絵画をプレゼントしています。絵をダウンロードして額装し、お部屋のインテリアとして使ってください。額装の仕方はメルマガ登録フォームのあるオンラインショップサイトに掲載しています。IKEAの10✕15cmの額にちょうどいいサイズにプリントアウトできます。
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絵と文:なかひらまい

なかひらまいプロフィール:作家・画家。ユング心理学研究会理事。多摩美術家協会会員。著作は『スプーの日記』シリーズ3部作(トランスビュー刊)。千年の間、口伝のみで伝わってきた紀国の女王伝説の謎を追ったノンフィクション『名草戸畔 古代紀国の女王伝説』、毎日新聞大阪本社版に連載された童話『貝がらの森』ほかをスタジオ・エム・オー・ジーより刊行。ハンドメイドの絵本「小さな絵本」や『宙の猫島(そらのねこじま)』などオリジナル作品を随時発表している。

宙の猫島 (そらのねこじま) 202303_001
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第2話「花の帆と不思議な船」

 3月のある日の朝、7匹の猫たちは目を覚ますと、次々にベッドから起き出しました。
「今朝は、ずいぶん暖かいね」
「もうすっかり春だ」
 猫たちは、うれしくなって外に飛び出しました。
 ついこの間まで雪で真っ白だった景色はいつの間にか黄緑色の草木でいっぱいになっていました。猫たちは黄緑の絨毯をあてもなく散歩しました。猫たちが歩くたび草の間にピンク色の花が咲きました。そのうち、猫たちの前に桃の木があらわれました。
 猫たちは、しばらく桃の木に見とれていました。陽が落ちて辺りがピンク色に染まってくると、猫たちは木を囲んで踊りはじめました。なかには木に登ってハープを奏でる猫、笛を吹く猫、桃の実に見とれているだけの猫もいます。
 桃の木には、たくさんの妖精たちがすんでいました。妖精たちは猫たちの音楽と踊りを見ていました。
「まあ、なんて可愛らしい」
「あれが噂のお月さまの子どもたちね」
「そうね。でも、まだ名前がないわ」
「そうね。では、わたしたちが名づけましょう」
 妖精たちは、風のような声で猫たちにこういいました。
 
「桃を愛でている子は、「喜喜(キキ)」。いつも喜びに溢れている。
 ハープを奏でている子は「未未(ミミ)」。いつも未来に向かっている。
 笛を吹いている子は「路路(ロロ)」。ものごとの道を知っている。
 踊っている子は左から「流流(ルル)」。流れるように自由に生きている。
 次の子は「里里(リリ)」。宙の大地にしっかり根ざして生きている。
 次の子は「己己(ココ)」。自分をしっかり持っている。
 次の子は「百百(モモ)」。たくさんの愛を持っている。
 みなさんは、これから、しあわせに暮らしていくのです。」

 妖精の声を聞いた7匹の猫たちは踊るのをやめました。
 そして風のような声を聞きながら、桃の香りの中でしばらく過ごしました。
 猫たちは妖精から桃の実をたくさんもらい、仲良く家に帰っていきました。

「昨日は楽しかったね」
 モモが妖精からもらった桃の実を眺めながらいいました。
「そうだ、この桃で何か作ろう」
 リリがそういいました。
 するとミミが桃のタルトを作りはじめました。
 キキはお茶をいれています。
 丸い大きなテーブルを囲んで、素敵なお茶会がはじまりました。
 7匹はお茶を飲み、ケーキを食べながら、おしゃべりをしました。
 気がつくと部屋じゅうが春の花でいっぱいになっていました。床から天井まで、ふんわりとした花の香りであふれています。
「夢は本当にあるんだね」
 キキが不思議な言葉をつぶやきました。
 猫たちのおしゃべりは、青い宙と白い雲の中、ケーキがなくなるまでつづきました。

 あさ、猫たちが起きると、昨日の花が跡形もなく消えていました。どこを探しても見当たりません。
「あのきれいな花を忘れないうちに、絵に描いておきましょう」
 キキがそういいました。
 猫たちは床に大きな白い布をひろげました。そして、思い思いに、花の絵を描いていきました。
 ロロは絵の具と筆で大きなユリのような花を描いています。
 モモは花のかたちのスタンプを作って、ペタペタ押しています。
 ココは転んで絵の具をこぼしてしまいましたが、こぼした絵の具が花のようなかたちになりました。
 キキは桃の絵に白いストライプを付けて素敵な生地に仕上げました。
 リリは布にくるまってお昼寝をしています。
 ミミは足跡をつけて歩いています。
 ルルは白いチョウジソウの花を筆で描きました。
 お絵描きの時間は、あっという間に過ぎていきました。

 猫たちは、花の絵を描いた布を外に干して乾かしました。布は風になびいてはためいています。
 それを見ていたミミがいいました。
「この布がお船の帆になったらいいのにな」
 するとキキが船を作りはじめました。
 ロロが書いた設計図を見た猫たちは家の近くの木を切り出して、トンカン、トンカンとやりはじめました。不思議なことに、船はあっという間にできあがりました。
 船ができあがった頃には、外はすっかり夜になっていました。猫たちは、自分たちが作った船に乗りたくてうずうずしていました。がまんできなくなった猫たちは夜の宙に船を浮かべました。
 すると猫たちが乗った船は花の帆に春の暖かい風を受け、雲の上を滑り出しました。
 お月さまは7匹の猫たちを遠くから見ていました。

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