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〜断片の連なり③〜

今回はフランソワ・トリュフォー監督「華氏451度」S・F嫌いのトリュフォーの珍しい一作。
今の時代とは違いリアル感が全くないレトロ感たっぷりな仕上がりで、美術や衣装がモダンです。
原作はレイ・ブラッドベリ。活字の存在しない未来の管理社会を描いています。

「華氏451度」映画1966年公開
ファイヤーマン、ガイ・モンターグは毎日書籍を焼き払う。
未来の消防士は建物火を水で消すのではなく、焼却する焚書が任務。
読むという行為が違法なこの社会は、思想を徹底的に排除し管理し、人々はテレビ映像でコントロールされている。
ある日、見知らぬ女性から話しかけられる。
クラリスという名で近隣に住んでいるらしい。
何度か会話を交わしいるうちに、彼女が愛書家だと知る。
彼女の影響で、いつしか閉ざされていた思考が目覚め、無気力と怒りに支配された、空虚な会話に気がついていく。
有望視されていたガイの生活は次第に色褪せ破綻を迎えるが、心を取り戻す。

「華氏451度」原作1953年刊行
葛藤のない画一化された管理社会で、歪んだプロパガンダによって思考が停止していく。
本は無駄に悲哀を助長させ有害なものとして排除し、肥大したマスメディアが侵食し虚無を生む。
自殺者が増大し暴力が蔓延する。
記憶も薄れ…次第に失われ、人間性が希薄になり、人間関係も損なわれてゆく。
現代社会への懸念が読み取れる。
文学的で叙情的表現が散りばめられた小説。
「われわれはいつも花であり、花火であると思い込んで、いつかまた、地上の現実に還元され、それによって周期が完成する」という一節。静けさの中の内なる声が良い。 

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