こわかった
失いたくないと、いくら叫んでも今日のこの瞬間が明日には過去に変わってしまう事、たかが人間にはどうしようも無い。
世界に好きの総量が増えてしまうとき、嬉しさと同時にどうしようもなく悲しい。好きはもうこの両手に収まりきらないくらいに数も重さも増えてしまって、今では大切なそれを取りこぼさないように、指の隙間から漏れ出す好きを拾い集める日々だ。
それでも道中、物音も立てず落ちてしまったそれに気付いて振り返る事も出来ず、記憶からゆっくりと溶けだして消えてしまうものの多さ。
それを思うと悲しくなる。
例え大切に、心の1番ふわふわの特等席を誂えてこれだけは大切にしたい、と思っていても、残酷な程に時間は流れて、少しづつ関心は薄まってゆく。
それくらいの愛だった?そうじゃない。そういう事じゃない。
思えば始まったその瞬間に、終わりは足音も立てず近付いて来ている。
いつか、終わりはやって来る。
いつか、必ず失う時が来る。
それが意図したものであろうと、望まない運命だろうと。
終わり方の差こそあれ、喪失からは逃れようがない。
いつだって今が愛おしい程に、終わりが来る事を思って悲しい。
タイムリープできる方法は本当にないのかな、なんて本気で考えたくなるような、永遠を願いたくなるような。
いつか終わってしまうなら、もういっそ今すぐ全てを自分から手放して、最小限の傷で済むように…と願うような。
怖くて堪らないのだと思う。喪失はとても痛いと知っているから。
好きなバンドが、いつかは歩みを止めてしまう時が来ること。
好きな人達と、いつかは会えなくなる日が来ること。
好きな音楽を、いつか聴かなくなる日が訪れること。
最近ずっとpollyを聴いてた。なんでこんなに今心に刺さるのかなって。
やっとわかった。
pollyはいつか来る喪失を歌っているからだ。
失いたくないな、と思ってしまった。
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