ボカロリスニング+リーディングガイド 後編(ポップスからジャズへ)
思ったよりも長くなったので二つに分けました。前編に引き続き個人的に仕分けているボカロ音楽のジャンルを説明していきます。進行度はロックが一段落してポップスに入ったところ。リスニングガイドのボカロPリストはこちらから。
●アイドルソング・アイドルグループソング
タイトルそのままアイドルが歌う感じの曲を作るボカロPのカテゴリです。とはいえアイドルソングといっても昭和の松田聖子から浜崎あゆみ、アイドルグループではキャンディーズから東方神起まで、今となってはあらゆる曲調が当て嵌まるので音楽ジャンルとしては定まらないフワッとした概念になってしまいました。ただ複数のボカロがユニゾンで歌うと多人数のアイドルグループに聴こえたり、3,4人のソロ回しだと男性アイドルグループに聴こえたりと独自の特徴みたいなものはありますね。
遺作P 【歌愛ユキ・鏡音リン・GUMI】 恋のvirus 【オリジナル】
*Lunaさん MV - アンチリアリズム feat.ウナ & flower
●シンガーズソング・ライター
シンガーソングライターではなくシンガーズソング・ライター。人に歌われる為の楽曲を作る人、という勝手に作ったでっち上げジャンルです。私が歌い手に愛されてるなあと常々感じるボカロPや、Songriumの歌声分析で調べた”歴代よく歌われたボカロ曲”を多く作ったPなどを追加してあります。その結果音楽ジャンルとしては90年代J-pop勢と名付けても差し支えない面子になりました。カラオケ文化最盛期と言われている時期と重なるのがとても興味深いです。
ここの方々はボーカル曲を作る意識が最初から違う感じですね。人間じゃなくてソフトだから歌メロでどんな高い音を出しても、曲のテンポがどれだけ早くても、どんな早口でも平気でしょ、ではなく、男女それぞれの得意な音域を意識した歌メロ作りや、「歌ったみた」タグ向けにキーを調節したオフボーカル音源を配布したりと、人に歌ってもらうことを見据えた曲作りをしています。逆に合成音声ならではの特徴を生かした曲とは対極にいる感じです。もっとも曲の歌いやすさのみがよく歌われる理由ではないので、このボカロ歌ってみた難度表と見比べてみるのも面白いかもしれません。
40mP 【初音ミク(40㍍)】 からくりピエロ 【オリジナルPV】
●ミュージカル・会話劇
黒Pことmaroさんの独壇場となっているジャンル。いや、ホントいいんですよこれが。複数人の会話にメロを振ってどうしてこうキャッチーでポップな感じになるのか、それでいて曲全体の展開、構成がしっかりまとまるのか、不思議で仕方ないです。ふわふわシナモンさんもよくミュージカル風の楽曲を書いてますが、どちらかと言えばジャズの人かと思いここには入れてません。
maroさん とびらの向こう【VOCALOID】
●ニューミュージック・歌謡曲
70、80年代にかけての日本のポップス全般で、流行りがフォークからポップスに変わっていった頃、歌謡的な湿り気を持ちながらもポップな面が強くなってた頃の音楽と解釈してます。細野晴臣擁するティン・パン・アレーや山下達郎のシュガー・ベイブ周辺、あとは坂本龍一の編曲家としての仕事とかその辺りです。ミュージシャンで言うと竹内まりや、大貫妙子、吉田美奈子など。洋楽のソウルやファンクなどを参考に洗練されたアレンジが施された大人の音楽。よくシティポップと呼ばれたりもしますね。すぐ下のジャンルAORとは伴奏など音の共通点が多いのですが、個人的にはニューミュージックは女性の情念を歌った音楽、AORは男性の包容力のある愛を歌った音楽というイメージを持っています。
この時期のニューミュージックないしシティポップは近年”和製ソウル”というカテゴリで呼ばれ、アジアを中心に海外からの再評価が著しく、このジャンルのレコードを大量に買い集める動きがあったり、竹内まりや「プラスティック・ラブ」がインターネットミーム(ネット上にネタとして定着する)化する勢いで再生、カバーされたりしました。日本国内ではもう古いと言われていたものが海外の若者によって再発見されて大きなムーブメントになっていく流れは浮世絵然り、チップチューン然り非常に興味深いものです。ボカロ音楽ももしかしたらいずれ『日本では根付かなかったものの海外でアーカイブされて重要カルチャーとして市民権を得る』ものの一つになってしまうかもしれませんね。
鈴木将太さん 【IA】Desert【オリジナル】
●歌もの・AOR
歌もの・ポップソングから分割したジャンル。ちょっと下のジャンル、コンテンポラリージャズ・フュージョンと関連があります。概要としては1970年代後半から80年代前半までにアメリカで流行した大人向けの落ち着いた感じのポップス、とか言っても若いコには何のことだかさっぱりですよね。難しいな。80年代以降の日本のポップス、特にバラードは大なり小なりAORアレンジの影響があったりするんですが。シンセベースにエレピの響き、ギターの刻み方や野郎の甘いボーカル&コーラス…等々特徴的な音色は多々あります。
もし時間があればミスターAOR、デビッド・フォスター先生の輝かしい奇跡を数曲辿るだけで大体理解してもらえるハズ。ボトムズやガンダムXのエンディング曲、レイズナーの劇判とかもAORサウンドですね。あと有名な所でディズニー映画の主題歌。リトルマーメイド(89年)までは昔ながらの正統派ミュージカル風主題歌でしたが、美女と野獣(91年)アラジン(92年)の主題歌、どちらもスケール感ある素敵なAORバラッドでした。あれはAORが復活した感あって嬉しかったなあ(しみじみ)。
マサシさん 【初音ミク】恍惚【オリジナル】
●歌もの・ポップソング
楽器の伴奏がメインだったり曲の魅力の何割かではなく、単純に歌メロが良い、合成音声の歌そのものが主役な「歌もの」がポップスにはあると思うのです。ただ「あーミクが歌ってる。かわいいな、いい曲だなあ」って感じの、合成音声が歌うから愛らしい、合成音声だからこそ許される、人が歌わないからこそ心に響くような歌詞、歌ってみたとかあまり必要ないような感じの。そういうのを作ってる人達を集めました。
フナコシP 【初音ミク】『私は私を騙したい』【フナコシP/もぐこん】
●歌もの・ピアノポップ
歌もの・ポップソングから分割させたジャンル。歌ものポップスの中でピアノ中心の伴奏を作っている方々、及びギターではなくピアノで(恐らく)作曲をされている方々を集めました。後者は結構怪しいかも…間違ってたらスミマセン。
漂流硝子さん 荷物 / 初音ミク
●変則メロディ・コードアレンジ
ボカロ曲にハマって以来、再生数が多い順に片っ端から聴きまくって殿堂入り曲(10万再生以上)も粗方聴いたかな~辺りでトキメいたのがこの辺りですね。今まで聴いたことのないような音楽。ハッピーエンドの映画しか知らない人がアメリカンニューシネマを観て唖然とするような、そんな出会いでした。音楽も予定調和に着地しなくていいんだ、とわりと目から鱗の出会いでした。普通のポップスだと変なコードが出てきても、大抵いくつか先のコードでうまいこと違和感が開放されるように出来てるのですが、その辺が解放されずに浮いたままグラグラと不安定なまま進んでいく感じ…。曲調が舞台で、歌や演奏が人やセリフだとするとコードは”感情”だと思うのです。喜びなのか悲しみなのか感情の土台が定まらないまま進んでいく不思議さ、それはとても新鮮でドキドキしました。
普段アレンジが~とかコード進行が~とか知った風なことを書きながら、音楽理論もコードの種類も何一つ分かってない自分恥ずかしい。でもメジャーセブンスは大体好きです。
チャリけんP 【巡音ルカ】 ずっとずっとずっと【オリジナル曲】
●玄人アレンジ
この人アレンジ上手いなー音も綺麗でプロレベルだなーというボカロPがいて、その人が幅広いジャンルに造詣が深かった場合、入れるジャンルが見付からなくて困った時に作った、苦肉の策的なでっち上げジャンルです。後はあーこの人アレンジやり過ぎてるわ、そこまでやらんでも(褒め言葉です)…みたいな感じで入れる時もありました。例として下に挙げたとかげさんの曲では存分にやり過ぎアウトロを味わうことができますよ。
とかげさん 【初音ミク】ネバーフォーゲット【オリジナル】
●渋谷系・ソフトロック
渋谷系。ぶっちゃけ90年代前半のソレにリアルタイムで触れてはいないので滅多なことは言えないのですが。音的にはタンバリンとアコギカッティングの軽くてお洒落なギターポップやバート・バカラックのようなコミカルなオーケストラサウンド、精神的にはレコードマニアの洋楽オマージュてんこ盛りの音楽という感じでしょうか。
今現在「#ボカロ渋谷系」タグなどで一通り見渡してみるとボカロ関連で言われる渋谷系の曲は大体CymbalsやROUND TABLE、Capsuleやコナミの音ゲーの渋谷系カテゴリ曲、俗にいう”ネオ渋谷系”のフォロワーという感じですね。渋谷系第三期とでも言いましょうか。ホーンとストリングスがキラキラと華やかなジャズポップ。逆にピチカートファイブやフリッパーズギターなどの本家渋谷系的な楽曲は、あまりボカロ渋谷系と捉えられてない気がします。自分としてはスチャダラパーやTOKYO No.1 SOUL SETとかの軽めのラップも渋谷系の範疇なので、その辺の影響を感じるボカロPもリストに入れています。
Taroonさん 【初音ミク】フィクショニア、終りを告げる【オリジナル曲】
●サイケデリックポップ
渋谷系・ソフトロックから分割したジャンル。眩暈がするようなエフェクトのかかった多国籍的なサウンド、それでいて甘くお洒落なポップス、そんなイメージをしています。
betchaさん 【初音ミク】月とマジックカーペット【オリジナル】
●弾き語り・フォークロック
あすなろさんをどこに入れるか悩んだ末ここを作った覚えがあります。ギター一本の弾き語りでも十分成立するような叙情的サウンドのフォーク的ロックミュージック、及び1960~70年代の洋楽ポップスに影響を受けたと思われるメロディアスなポップソングを投稿しているPを集めたジャンルです。あとはスピッツとかビートルズとかその辺りのイメージ。
あすなろさん 【猫村いろは×Miki】 翔べないマーメイド 【オリジナル曲】
●アイリッシュ・フォーク・民族調曲
世界各地の伝統的(トラディショナル)音楽、つまりは民謡ですね。自分のいたアニメ・ゲーム界隈では北欧のケルト音楽が一大勢力で”民族調曲=ケルト音楽”というイメージがあったりしますが、日本の盆踊りや雅楽ももちろん民族調曲ですし、アジアやヨーロッパにも多種多様な民謡があります。ここではそういう土着のテイストを生かした曲作りを続けているPを集めています。当然の如く楽器や生演奏の音が好きなPが集まっている印象。
フライングジラフさん コケコッコーが語る世界 / Flying Giraffe feat. GUMI
●プログレッシブロック・ピアノ
ボカロ黎明期にtreowさんという方がいまして、彼が変拍子ピアノとクラブミュージックのプログレッシブな融合を見事に果たしてその跡にペンペン草も生えない状態にしていったのですが、それでも彼の背中を追いかけて数々のPが名作を作り出していきました。他、ジェネシスやキング・クリムゾン等1960~70年代の正統プログレッシブ・ロックのフォロワーであろうPが集まっています。組曲スタイルの変幻自在の音楽性が特徴ですね。
PELIEさん 初音ミクオリジナル『The_place_of_an_end』【PELIE】
●ピアノ・現代音楽・童謡
下記するジャンル:クラシック・ピアノに元々入っていたとち-MUSIC_BOXさんに現代音楽的な要素を感じていて、そこにきくおさんが現れたので一緒に分割。その後、アングラ童謡なでんの子Pときくおさんの賽の河原ソングとの音楽的近さを感じてこういったメンバーになりました。とても個性的な面子でジャンルというにはちょっと無理があるかもしれませんが、私の棚には一緒に区分けされてる三人です。
きくおさん 【初音ミク】月の妖怪【オリジナル曲PV】
●クラシック・ジャズピアノ
元々ピアノ伴奏オンリー曲を投稿しているPだけを集めたカテゴリーでしたが、ジャンル:歌もの・ピアノポップと分割した際にかなりの人数がそちらへ移ってしまったのでカテゴリーとしての特色を新たに考えました。既存のポップソングの作りとは異なり、あくまでジャズ、クラシックの文法でピアノインスト曲を作曲し、そこに歌詞及びボカロの歌声を乗っけるというやり方をしているボカロP…というイメージで面子を揃えています。歌詞自体を他の方に依頼するケースも一番多いジャンルのように思います。もしかしたらピアノの音色そのもので感情を表現してしまえるので、わざわざ歌詞で演出する必要性が薄いのかもしれません。しかし『出来上がった詩を元にメロディを付けていく』というやり方においては、音楽理論的なものと”詩という感情”に振り回される奔放なメロディの間のせめぎ合いが、今までにない面白いものを生み出す可能性を持っているジャンルであると思います。
torekuruさん さとうささら「恋する私のリフラクト」【オリジナル曲】
●ジャズ・ラテン
ピアノとホーンが楽曲を渋く彩るオトナの、夜の音楽JAZZ。私がボカロを聴き出した頃よく耳にしたボカロジャズは、大抵が元々ビデオゲームのBGMなどを作っていた職業作曲家による打ち込みのビッグバンド系ジャズでした。そして難解なコードを使用して複雑なポップソングを作っていたジャズ畑の人も元々はコナミの音ゲーなどに影響されてその道に入った方達だったりして、わりかしビデオゲームと不思議な縁のあるジャンルです。個人的な印象ですが、音楽的基盤がジャズなポップスはJ-POPのフォーマットに縛られることなく自由に面白いことをやっている感があって好きですね。
ドグマ虫さん 【巡音ルカ】カレンデュラ【オリジナル曲】
●コンテンポラリージャズ・フュージョン
アルコールと紫煙の香り漂うオールドスクールなジャズから少し離れて、洗練された踊れない、ひたすらテクニカルな新世代のジャズ……近所のスーパーやモールで垂れ流しにされてる様なイージーリスニング…
なきゃむりゃさん 【猫村いろは】ルサンチマンの海に抱かれて【オリジナル曲】
●ポストロック・エレクトロニカ
ついにポストロックまで来てしまった。えらいこっちゃ。自分はシガ―ロスにもレディオヘッドにも詳しくないので、あまり知った風なことは言えないのですが、自分なりのボカロのポストロックというものはあって、「ビートが強調されていない」「静かで幻想的」「浮遊感のあるリバーブ」「ウィスパー気味の調声」「ピアノ等の逆回転サウンド」「クラシックやプログレ的でない標準的な形式の曲」「寂寥感のあるロックバラード」そこに環境音的なものが加わったのがここでのポストロック・エレクトロニカです。類似ジャンルは上の方で書いたサイケデリック・ドローンやノイズ、ドリームポップ・シューゲイザーで音に共通点があります。
acane_madderさん 【MV】月と風船【GUMI】
●アンビエント・エレクトロニカ
これもビートの効いていない静かで浮遊感のあるサウンド、ということで一つ前のジャンル:ポストロック・エレクトロニカとは共通点多いですが、違いとしては「よりエレクトロニカ、環境(アンビエント)音寄り」「既存のポップス・ロックの形式を外れた」「映像作品のサウンドトラック、劇判のような」音楽と位置付けてます。ボカロも歌手というよりは音源トラックの周囲を漂う精霊みたいな感じで、シンセサイザーのクワイヤのように使用されていることも。ここまで書いたところでじゃあNIYMORIYさんとか全然違うだろ、と言われるのは尤もなんですが、自分はNIYMORIYさんを聴くとヴァンゲリスが頭に浮かぶので何となくここのカテゴリーに入れているのです。
不始末さん 【初音ミクdark】みみずワーズ
●サウンドエフェクト・エレクトロニカ
ここが本来の意味でのエレクトロニカ、合成音声ソフトという”素材”を使って色々な遊びを試している方々。それは往々にして既存のイントロ・Aメロ・Bメロ・サビという”歌”の構成とは大きく異なる、奇妙で不思議なサウンドスケープだったりします。怒りや喜びなどポップスやロック等一般の歌曲に色付けされているコマーシャルな感情、色彩を極力排除した一見無機質な響きの音色、そこから何を感じるかは聴き手の想像に委ねる…というようにシンプルな”音”そのものを届けようとしているカテゴリです。良い曲と呼ばれるよりも面白い音をしてると言われるような、時には理解不能、難解な曲と言われるようなナンバーが揃っています。
こんぺいとうP 初音ミクオリジナル曲「ジャガボンゴ」
●ノイズ・サウンドコラージュ・アヴァンギャルド
大衆向けに整った平均的でコマーシャルな音楽に背を向け、人とは違う個性的な音楽を追い求める人達、または感性が普通の人とは異なる生まれながらのアウトロー、もしくは師事する先達や教本を持たずに自己流で無から音を作り出していく天然の表現者。ここはそういう方々の作り上げるアウトサイダーミュージックのカテゴリ。幸いニコ動には「アンダーグラウンドボカロジャパン」タグと「VOCALOID・アンダーグラウンド・カタログ」という有志による紹介動画シリーズがあったことで、普段あまり一般視聴者の目に触れることがなかった多くの個性的な動画作成者が日の目を見ることができました。それは音楽素人がボカロを介して創作者になるというボカロムーブメントの中でもとりわけ重要な出来事だったのではないかと思います。
大丈夫P 【初音ミクと愉快な仲間達】ミクサン生誕50周年を50年くらい前に祝う儀式
●サンプリングミュージック
自分がボカロのアングラを色々聴き漁っていた時分、色んな所で名前を見かけた謎の人、山本ニューさん。そのニューさんが何かの拍子に「このリストに僕の名前が入っていて欲しい」と言われたので作ったカテゴリ。今のところ人の声かけで作った唯一のジャンルです。数多くの音源を聴き漁ってきたレコードマニアがお気に入りの”音ネタ”と合成音声を使って遊んでみたもの、DJのように既存曲を組み合わせリミックスして作ったトラック、文字通りボカロ曲のみをサンプリングして作った曲などマッシュアップ、コラージュ的な手法で作られた曲などがここです。かといってオリジナルな部分が無いかというとそうではなく純然たるオリジナル作品なのですが、過去のブームや音源、偉大なミュージシャンに並々ならぬリスペクトを捧げた方々の作る音の傾向として「この曲は〇〇から作りました」と元ネタを公表することが多いのだと考えています。色々なものを聴いてきた、知ってるからこそ”オリジナル”と宣言するのが照れくさいのかもしれない、と。
山本ニューさん 【全部ミク】ひとりぼっちのドラムンベース(うそSlam MIX)
●テクノ・ハウス・クラブミュージック
四つ打ちを中心としたビートの効いたダンスミュージック全般がここ。ハウス、ドラムンベース、ダブステップ等リズムに特徴があるものやBPM(一分間の拍数、テンポ)140以上の激しいものなど色々あります。全体的に「合成音声を手に入れた人が始める音楽」というよりは、元々ダンスミュージックを作っていたトラックメイカーが合成音声を使用してkawaii系の魅力を楽曲に付与している感じがあります。下で述べるジャンル:EDMとの違いはライザーサウンドの有無くらいのものですが、こちらは歌メロやドロップの盛り上がりではなく、ひたすら続くビートの反復で気持ち良くなる系が中心だったりするのでコメントに「いつ曲が始まるのか」「イントロが長すぎる」「サビはどこ?」などと書かれることもしばしば。
いるーP 【重音テト×巡音ルカ】ドリーミードリーム【オリジナル】
●ロック系EDM
ディスコのリズムと共に暴れ回るシンセサイザーの和音が特徴だったユーロビートから、シンセ音がサイレンの如く強調されたトランスを経て、音的には少しユーロビートに戻り、新たにライザーサウンド(サビ直前のせり上がっていくような特徴的なドラム)を得たのがこちらロック系EDMだと解釈しています。ポップ系EDMと称した下記ジャンルとの音的な大きな差異はEDMサウンドを取っ払った際に楽曲がロックかポップスどちらであるか、というのがポイント。あとスネアが強く間奏によくワブルベースタイムが入るなど、華やかさよりも攻撃的なカッコ良さを求めている感じです。BPMも高め。
Mwkさん 【初音ミク】Damnation【オリジナル】
●ポップ系EDM
こちらのEDMはポップ由来ということで、普通にテクノポップをクラブミュージックに乗せた最新モードのテクノポップという感じ。ビートはそれほど強調されておらず、主に合成音声の歌声の響きが大きくフィーチャーされている印象です。外の世界に広がっていくようなキラキラとした音色が何より”楽しさ”を表現していて、攻撃的なリズムのドラムンベースやダブステップなどよりもキュートな音色のフューチャーベース(DE DE MOUSEのbaby's star jamの様に切り貼り《カットアップ》した歌声が特徴の音楽)やエレクトロニカなどがよく採用されているようです。
23.exeさん OneMoreTime! ft.初音ミク
●ヒップホップ・ディスコ・ダンスミュージック
テクノ等のデジタルな感じのクラブミュージックではない、どちらかというとオールドスクール(昔ながらの)なダンスミュージック、ディスコサウンドがメインのボカロPのジャンルです。ラップもオールドスクールな抑揚のものが多めかも。
空海月さん 【初音ミク】Let's easy music【オリジナル曲】
●ラップ・ミクスチャー
バリバリのヒップホップなトラックに乗せたラップとは少し異なり、通常のロック、ポップソングの構成でラップが流れる感じの曲がここです。展開に起伏があってラップ苦手な人も比較的入りやすいジャンルだと思っています。
●R&B・ソウル
ミドルテンポでリズムは歯切れよくリムショット(スネアの端を水平にしたスティックで叩くやつ)やフィンガースナップ(指パッチン)、ハイハットなどでカツカツと刻みシンコペーション(リズムの溜めとか走りっぽいやつ)を多用してノリを出し、歌唱は粘っこくフェイク(演歌のこぶしの音程を細かく変化させるやつ)を入れることの多い音楽ジャンル、というイメージです。お洒落で大人っぽい夜の音楽。メジャーで代名詞的な人だと宇多田ヒカルとかMISIAとかでしょうか。ボカロで言うと初期にdixie flatlineさんがプロクオリティの楽曲をポンポン投稿してたのでソウル系歌い手界隈は毎度色めき立っていたような記憶があります。昨今イグザイル等R&B要素の強いアイドルグループが定着したせいか、ボカロ界隈でもR&Bの人気が上がってきた気がします。今では米津フォロワーのダンスロックの次にメジャーに近いジャンルと言えるかもしれません。
Dixie Flatlineさん 【初音ミク・リン・レン・ルカ】夢の続き【オリジナル】
おわりに
軽い気持ちで書き始めたはいいもののダラダラと1年ほども手を付けない時期があって、最近ようやくスイッチが入って2年越しでようやく完成。こんな稚拙な文章でも読んでくれた方がいたお陰で何とか書き終えることができました。
今回音を文章にしようとするたびに、普段自分がどれだけ雰囲気で音楽を聴いているか思い知らされました。知った風なことを書く為に用語をググり、そのジャンルの音楽を聴き回り何とかかんとか形にはなったものの、ジャンル本来の音の特色(これをやるには音楽知識が乏しい)を書くべきかそのボカロのジャンルの歴史(これも詳しくない自分には厳しい)を書くべきか面白おかしく自分の事を書くべきか最後まで定まらなかった気がします。でも文章を考えている間は、ボカロ音楽の立ち位置に真剣に向き合った楽しい時間でした。
よろしければ間違ってるところ、勘違いしてるところ、もっと代表的な曲がある、など指摘して戴けたらと思います。こんなところまで読んで頂いてありがとうございました。というか全部で約1万5千字とか凄いな自分!!