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梨たべたい

月曜の夜の風呂上がり、色んな果物が沢山入っているゼリーをぼやぼやすくって食べていたら、白くてシャリっとした奴が入ってた。容器を持ち上げて原材料名を確認したところ、梨だった。不意打ちで現れた梨の字に、意識が夏の日に飛んでいった。
実家のまわりは梨畑ばかりで、夏にはそこらへんの直売所でいくらでも梨が買える。ごろごろと袋に詰めて外に並べられて、ぬるい梨を買う。贈答品じゃないような、そのへんで買う梨はりんごより少し小さくて、子供の片手に収まるくらいの大きさ。
買ったら1つは、直売所の軒先とか、家に歩きながらとか、車の中でとかで食べてしまう。常温のままかじる梨の実はうまい。冷やして食べるよりも香りがするし、果汁のあまさが柔らかく舌に馴染む感じがする。ザラザラした皮とザラザラした実が歯に触るのも好きだった。
外で食べるぬるい果実の味はいつだって格別な気がする。5歳くらいのとき、おばあちゃんが庭に少しだけ育てていた苺のことをときどき思い出す。もいだばかりの茎の青臭さと土の味と、鼻に抜けるぬるくてあまい苺の香りのすばらしさ。道の駅で買ったイチジクとか、母がベランダで育てたミニトマトとか、友達と食べたヤマモモの実とかでもいい。大人になってよその地域に旅行に行けば、夏の沿道で買えるのは桃だったり、スイカだったり、夏みかんだったりした。
冷え冷えのスーパーマーケットじゃなくて、自分とおんなじ温度の中にいる、できればちょっと土がついてる、そういうものを最近食べてないな。そういうものを食べたいな。

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