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わりと毎日、子ども科学電話相談

息子を育てていて思うんだけど。

わりと毎日、「子ども科学電話相談」だよね。

「どうして地球から宇宙は見えないの?」
「どうして影ができるところとできないところがあるの?」

もうね、毎回、必死で答えてる。
お母さん、チャキチャキの文系だからそういう質問、とっても困るんだけど。
高校の化学では「すいへいりーべ」が覚えられなくて追々々試まで受けたし、物理の成績はずっと「2」だったし、センター試験の生物は自作の鉛筆サイコロでどうにか切り抜けたんだから。

だけどね、息子、かわいいから特別。
錆びついたシナプスをどうにかこうにかつなぎ合わせて、お母さん、がんばって答えちゃう。ちゃんと「科学的に」かつ「幼児に伝わる言葉」で、「子ども科学電話相談」ばりに。

おかげさまでね、息子がいろいろ質問してくれるから。完全に脳内の「もう使わない知識フォルダ」にしまいこんでたドップラー効果の復習もやったし、魚には鼻が四つあるという雑学を得ることもできた。

こどもの疑問も、真剣に向き合うと面白い。


なんて言ってたら、

いよいよきた。
正直、早くね?って思った。そこにたどり着くの、早くね?って。

「おかあさんの、おかあさんの、おかあさんの、ずーっとおかあさんは、まだ人間がいないとき、だれから生まれたの?」

種の起源ー!!!!ダーウィンさんのやつー!!!!

待って待って、大丈夫、お母さん、ちゃんと答えられるよ!こどもの頃、『どうぶつ奇想天外!』とかよく観てたから。大丈夫大丈夫、落ち着いて落ち着いて。

「えっとね、ヒトとおサルさんて、ほかの動物よりよく似てるでしょ?ヒトは大昔、おサルさんの仲間だったんだけど、おサルさんもほかの動物…ライオンさんとかゾウさんとか、クジラさんとか…みんな全然かたちが違うよね?だけど、そういう動物みんな、はじめのかたちは同じで。同じおかあさんから生まれてて、すこしずつかたちを変えて、そういうの進化って言うんだけど。シンカリオンの、♪ガンガンズダンダン僕ら遮二無二進化中!の、進化、なんだけど。えーと、そのはじめのおかあさんは、たぶんこんな小さい、目に見えないくらい小さい微生物で…」

新人研修で、鬼教官を前にロープレやってる心境。
大丈夫っす、自分、ちゃんと理解してるっす、大丈夫っす、説明できます、大丈夫っす!!つって。途中から自分でも何言ってるかわからないし、何言ってるかわからないって自分でも思ってることまで見透かされてるよね、これっていう。

だけど、すんごい一生懸命説明した。息子の!好奇心の芽を!わたしが!摘んではいけない!つって。

そうこうしていると、救世主・夫がぬるりと登場!!

・・・― ― ― ・・・(SOS)、・・・― ― ― ・・・(SOS)

まばたきでモールス信号送る。助けろって、マジで助けろって。
おまえ、工学部やったやんけって。

夫、こちらをチラリと見て言った。

「おれ、高校で生物やってないからなあ」

この、理系ど真ん中野郎!!!!履修しとけ、生物!!!!

だけどね、ここからさすがだった。さすが理系の回答だった。

「息子はすごいね。生き物のいちばんはじめのおかあさんがどうやって生まれたのか、まだまだちゃんとわかっていないんだよ。たくさんお勉強したひとたちがいまも一生懸命調べてるの。息子もそういうひとたちと同じことを考えたんだね。」

「はじめのおかあさん、だれかわからないの?」

「そうだよ。でもね、息子は"はやぶさ2"が遠くのお星さまから石や砂を持って帰ってきたの知ってるよね?それを調べたら、生き物のいちばんはじめのおかあさんがどうやって生まれたのかもわかるかも知れないんだよ!すごいでしょ!」

すごい!って言った。わたしが。
まず「疑問」に気づいたことを褒めて、そこから「わかっていない」ということを簡潔に答え、息子も興味のある「はやぶさ2」の話題に置き換えて(しかもめちゃくちゃ旬!)、さらりと「はやぶさ2」の意義にまで言及している!

あ、あっぱれや…。

わたしの長いだけではちゃめちゃな回答にはしかめ面していた息子も、「そうなんだあ」とすっきりした顔をしている。

むずかしいよ、「子ども科学電話相談」。

ああ、もっとうまく「科学的に」かつ「幼児に伝わる言葉」を操れるようになりたい。がんばろ、マジでがんばろ。夫なんかに負けていられない。


と言いつつ、その夜こっそりネット検索して、「種の起源」がこどもにもわかるような本を購入した。文系には、文系の戦い方がある。わたしは盛大に「本」を味方につけて、理系夫をぎゃふんと言わせてやる。

翌々日、この本がamazonさんから届いて、息子が大興奮したことは書くまでもない。


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