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エロ自由律俳句


「エロ自由律俳句」というものに、底知れぬ魅力を感じている。

「エロ自由律俳句」とは、かが屋の加賀翔さんと放送作家の白武ときおさんが、QJ Webにて連載している、その名の通り「エロティシズム」をテーマとした自由律俳句である。



昨年の5月、かが屋の単独ライブ「瀬戸内海のカロカロ貝屋」を観に行ったことがきっかけで、すっかりかが屋に夢中になり、コンビお二方のSNSをフォローしたり、加賀さんとハナコの秋山さんが毎月開催しているトークライブ「やっぱなんでもない」に足を運ぶようになった。

その過程でもちろん、SNSの投稿などを通して、加賀さんが「エロ自由律俳句」の連載を行なっていることは目に入っていたのだが、しばらくの間、実際に読むまでには至っていなかった。

しかし、昨年の8月、何がきっかけだったか、ふと、初めて「エロ自由律俳句」の連載を読んだ。
記憶は確かではないが、おそらく東直子さんがゲストに出られていた頃で、「歌人の方もゲストに来るんだ~」と興味を持ったのだと思う。

そして、実際に連載を読んでみて、はじめて触れる「エロ自由律俳句」というものに、とても引き込まれた。強く心を掴まれた。
なぜ今まで読んできていなかったのだろうと、後悔したことは覚えている。

あまりの興奮に、朝っぱらから友人にLINEを送っていた。


そもそも「俳句」と聞くとそれだけで敷居が高いと感じる人も多いかもしれないが、私自身は、もともと短歌が好きで、歌集を買ったり自分で詠んでみようと試みていたこともあったので、自由律俳句に対しても敬遠するような気持ちはなかった。

大学時代、こんなふざけたツイートをするくらいには

ただ、自由律俳句そのものに対しては、種田山頭火の「分け入っても分け入っても青い山」のイメージしかなく、知識も興味もその程度だった。

話は逸れるが、自由律俳句と言われて、何それ?ではなく、あー種田山頭火の!となるから、義務教育って大切だなと思うし、学校の勉強って意味があった、活かされた、と感じる瞬間が、大人になるとたまにある。


さて、そんな種田山頭火以来の自由律俳句鑑賞(漢字多すぎ)だった私が「エロ自由律俳句」のどこに惹かれたかというと、ごく短いワンフレーズに世界が収斂されていて、読んだ瞬間にそれがパッと広がっていくような感覚というか。

これは、私が短歌を好きな理由とも通ずるのだが、少ない文字数、言ってしまえば我々はわずかな情報しか与えられていないのに、そこに詠まれている情景が容易に想像できることが多々あって、その瞬間の感動は何とも言い難い。

いったいこの一句、一首の後ろにどれほどの世界が広がっているんだろうと思っては心が躍り、この情景をこの文字数の中に閉じ込められるなんて、いったいどれほどの技量かと想像しては気が遠くなる。

エロ自由律俳句は、身近なテーマを扱っているからこそ、ことさら情景を想像しやすいのかもしれない。

私の本当にすっっっっくない恋愛経験の中でも、リンクする情景がたくさんあって、句を読んだだけで、一瞬にしてそのときの記憶が思い起こされる。

誰しもがきっと、
私も!!!それ!!!!やった!!!!!!!
と頸椎の付け根から頷いてしまう句が、ひとつはあると思う。

私も読みながら、無意識に何度も頷いてしまったり、あまりにもわかりすぎて可笑しくなったり、響きすぎて好きな句を集めたメモを作っていた。


そんな「エロ自由律俳句」がこの度!!!
なんと、1冊の本になったのです!!!!!

何を隠そう、こちらの句集の読後の興奮そのままにnoteを書きはじめたので、たいそう前置きが長かったことになる。

そして、ここまでエロ自由律俳句について語っておいて大変恐縮なのですが、実は、すべての連載記事を追いきれていたわけでは全くなかったので、こうやって1冊で読めるのはシンプルにありがたかった。

自由律俳句ということで、一句の音数は決まっていないものの、短めな句が多いので、とても読み進めやすい。
扱っているテーマもふくめ、本が苦手な人にもおすすめしたいと思える句集だと思う。

そしてこの本、内容はもちろんなのだが、装丁がかわいすぎる。
少なくとも私の性癖にはぶっ刺さっている。

わざとカバーをずらして撮影しております

写真だとややわかりにくいかもしれないのだが、カバーがクリアになっていて、そこにタイトルなどの文字が印刷されている。

こういうクリアカバーとか透ける素材とか大好き。封筒がトレーシングペーパーになっていて便箋が透けるレターセットが好きな人はきっと全員好き。

そしてこのカバー、かわいいだけでも最高なのにそれだけじゃない。

このクリアなカバーをはずしてしまえば、「エロ自由律俳句の句集」がたちまち「猫さんがじっとこちらを見ている本」になる。
つまり、この状態で電車内で読んでいても、まさかそれがエロ自由律俳句の句集だとは誰も思わないわけです。

電車では読みにくいカバー裏


あと単純に、カバーを外すだけで非常に持ち歩きやすくなるし読みやすくなる。

実際に私も、カバーを外した状態で持ち歩いたり、電車内で読んでもいるのだが、読みながら頷いたり笑ったりしてしまうので、そこはひとつ誤算ではあった。

こちらの句集、Web連載での加賀さんと白武さんの句をメインに編成されているのだが、おふたりの句だけではなく、読者投稿句や連載ゲストの句も一部収録されている。
連載ゲストの句にもお気に入りの作品があったので、掲載されていて個人的にとても嬉しい。

また、まえがきを加賀さん、あとがきを白武さんがそれぞれご担当されているのだが、本編もさることながらこちらも素晴らしかった。心を掴まれた。
自由律俳句という少ない文字数において語ることが上手ならば、より多くの言葉を用いて引力のある文章を紡ぐことができるのは、確かにそうかと納得してしまった。

最後に、そんな素敵な句集『鼻を食べる時間』(太田出版)より、私が特に好きな句をいくつか引用します。
(スマホのメモと重複はありますがご容赦ください)

同じ方向というのは嘘だった

加賀翔

いまのことをはやくあとでおもいだしたい

白武ときお

目を開けたら開けてた

加賀翔

あざやかな何もなかったふり

白武ときお

やばいこの話途中エロいんだった

蓮見翔(第7回句会参加)

全体重のせてください

東直子(第10回句会参加)

装丁がかわいいとか、1冊でたくさん読めるとか、いろいろ言いましたが、句集のいちばんのいいところは、お気に入りの言葉を形として手元に持っておけることだと思っている。

ちなみにWeb連載では、詠んだ背景についてご本人の解説が入ったりしていてより深く楽しめるので、句集を読んだ後に連載を読んでみるのも楽しいかもしれない!


自分が好きなものを誰かに強要したいという気持ちは全くなくて、でも知り合いとかに薦めるとちょっと押しつけがましくなってしまうかなと思い、ただ私が素敵だと思った気持ちをどこかに残しておこうとnoteにしてみました。

もし、なにかのご縁でこのnoteを読んでくださった方の興味に繋がったら、それはとても嬉しいです。

エロ自由律俳句、最高!!!!!

私もいつか詠んでみようかな!


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