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紡がれる物語【エデンリフの葉脈石】

自然を司る神々に愛され祝福された植物たちの楽園「エデンリフ」。
その中央に位置する大樹から稀に採取できる木と合わさり結晶化した葉。
結晶化する際に近くにいる精霊の影響を強く受けるため、その時々により結晶の色が変わる。


「おや、珍しい。赤の葉脈石をお持ちかね。炎の子達は自分の炎で木を燃やしてしまうのを厭うから、あまり大樹には近寄らないのさ。だから赤色の葉脈石ができるのは稀なんだよ。きっとそれでもなお近づいてしまう程、その子は大樹の美しさに見惚れていたんだろうね。」
〈梟鸚鵡〉


この結晶を使えば、精霊と心を通わすことができるの。楽園の環境だって分かるのよ。・・・助けを求めてる。
ちょっと、行ってきます。
〈泡沫美月〉


命を繋ぐ水脈、生きている証である新緑、そして、恋い焦がれるも触れることの叶わない陽光……。
すべてが大樹を、エンデリフを支える生命線
〈Leone〉


悦びで舞い、謳う精霊たちに応えて成された結晶のはずだった。
瞳を融かすほどの涙、喉を裂くほどの叫び、胸を焦がすような激情、もてあますほどに強く遠く誰にも受け取られなかった想いの雫はあまりに澄んでいて、それでいて何をも近付けないほど深い、深い色をしていた。それは誰への心だったのか。
〈新月〉


植物の楽園と呼ぶからにはそこに動物はいないのか、と問われたので、愚かだねと笑って応えてやった。
そんなもんが楽園なら、この石を採取させる必要がどこにあるのか。
風に舞って、水と流れ、炎で拓く。いつか、祝福が行き渡るようにと。
『意外とお前さんを気にいってるってよ。よかったねえ?』
〈もるね〉


もう、身体が消えてしまう。
…これを持っていて。宝物さ…エデンリフの葉脈石というんだ。
必ず、最期の時まで持っていて。
君がこの世から無くなる時…これを目印に迎えに往く。
(君が教えてくれたんだ、大切なものには目印を付けておかなきゃ…ってね)
ふふ。じゃあ、またいつか。
〈木間 菜つき〉


「痛っ!」
うずくまった青年が恨めしそうに私を見上げる。
「偽物を売りつけようとした君が悪い」
「だ、誰も本物の葉脈石なんて知らな──!」
私は懐から葉脈石を取り出した。輝きが溢れ出し、少年の瞳をも輝かせた。「君は頭も舌も良く回る。どうだね、私と一緒にエデンリフを目指さないか」
〈東洋 夏〉


エデンリフの葉脈石を
手に入れた人間は、不死の命を得るが同時に永遠に幸せになれない。
「何故?」
「私がそうだから。
1500年前、手に入れた。
親や兄弟、友や愛する者すべて
命尽きて去り
私だけ生き残ったよ」
「だからお前は、道を間違えるな。
今の時代を、命を生きよ」
〈りりむ〉


風。空耳かと思ったそれは植物たちの声だった。
「美しさとは、祝福ね」
「いいえ、美しさとは、呪いよ」
「どうして?」
「私たちは美しさから神々に愛され、ここにやってきた。でもそれは、本当に幸せなのかしら。こんな苦しみも何もない世界が、幸せなのかしら。…私には、どうしてもわからないの」
〈星奈〉

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