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紡がれる物語【異界/夕暮れ】

異世界の景色や現象を閉じ込めた結晶。
形や中に閉じ込められるものは様々で、その数の種類の豊富さはコレクターが存在するほど。
旅立ちの日に故郷の景色を閉じ込めたものを冒険者や騎士がお守りとして持つことも多い。


彼女の出身を知っているかい?
アレースとアフロディーテの落とし子だと聞くぜ。
二つの星の夕空が、ほら!
彼女を称えて付き従っているじゃないか!
〈青羽根〉


私はあの夕暮れを忘れない。
初めて誰かを信じることができた、あの日の夕暮れを。
〈泡沫美月〉


拾い上げた刹那、幸せそうな笑顔が脳裏を過る。手を引かれて歩いた道を。指でなぞれば、細かい傷を伝えてくる。この笑顔を見ていたかったのは、誰なのだろうか。
〈ミズヒき元司令官〉


僕の故郷は万年雪の高い峰々に囲まれた小さな村で、日が暮れるのがとても早いんです。僕はその一瞬が好きです。峰羚羊の背に乗って見るのが最高です。この結晶みたいな残照がとぷりと消えると、雪狼が鳴き出して、遠くで夜行性の竜の羽ばたきが聞こえるんですよ。
いつかあなたをお連れしたいな。
〈東洋 夏〉


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