紡がれる物語【ダッピローナの草原石】
ダッピローナ地方の特定の草原から採取できる石。
外見は木の塊だが、割ると草原のような緑が現われる。
魔物のいない草原が多く採取しやすいが、探すのにはコツが必要。
そのため、地元の人に採取を依頼するのが一般的で、依頼は地元の子ども達のお小遣い稼ぎとして人気。
この前、『依頼』として、地元の人と一緒に採取したの。教わってもらって、採取できるようになったのよ。
・・・教えてほしい?他言無用、よ。
〈泡沫美月〉
世界の富豪にはダッピローナ出身者が意外なほど多い。草原石の希少価値もさることながら、物心つく頃には商売をしているからだ。
「コツはぎょーむじょーのひみつなので」「しゅひぎむ」「なるはや、のおてつだいはわりましです」
まあ、中には口の軽い子供もいるようだが。
──旅商人モルの日記より
〈東洋 夏〉
ダッピローナ地方に住む人は清く正しい力を持つ人達が多いんだ。
草原石はその力清く正しい力に反応して生まれるんだよ。
子ども達がお小遣い稼ぎができる理由もそこにある。
大人は多少なりとも清く正しい力が歪んでしまうこともあるからね。
〈音露〉
この石は緑を愛し自然を敬ってきた この村へ、大地の女神からの大切な贈り物。
だから見極め方は教えられない。
小さいな村の大切な資源だもの。
でも…この村に暮らし、この地に生きる意味を知ったら貴方にも見つけられるようになるわ。
その時には私の言葉の意味も分かるはずよ。
〈十尾の猫〉
人間の母から生まれた
乳飲み子が産声をあげる直前に、
悪い魔物が黒い霧となって
その血肉を食らうそう。
だから人間は、身代わりに
焼いた土の人形を作り
魔物へ捧げた。
しかし聖なる精霊が、
砕け散った人形を乳飲み子と
誤解し、憐れみ、
大地へ供養した。
存在なき魂に、命に
来世は幸あれと。
〈りりむ〉
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