[23]夕方と夜の狭間で
色を脱ぎ
香りを纏う
菜園で息をひそめる
夏の誰そ彼
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毎日散歩をする。
まだ暑いので外が過ごしやすくなる時間を選ぶ。
心地よい夕風の中、バラ色の夕焼けを眺めるのもいい。
清々しい星空が涼し気な夜も悪くない。
そして私は、
夕方と夜の狭間の時間に出かける。
夕方というには空の色が儚げで、
夜というには闇が淡い。
刻一刻と影が濃くなる。
あの街路樹も
あの花壇の花も
いつの間にか同じ影に沈もうとしている。
いつもの菜園の側を通りかかる。
もはや一帯が同じ影のかたまりになっている。
どこにどんな色の花が咲き、
どんな形の実がなっていたのだろうか。
昼間当たり前のようにまとっていた、
色や形や名前、
私たちの存在までもが、
失われあいまいになるような感覚に陥る。
ふと、甘い香りに足を止める。
イチジクだ。
生命力にあふれる濃密な香りが存在を主張する。
そして、
他にも様々な香りが漂っていることに気付く。
これはトマトの木。
完熟した実とは異なる独特の青臭さだ。
これは菊。
そいうえば菊畑もあった。
まるで色や形と入れ替わるように、
様々な香りや葉擦れの音や虫の音が、
濃密な生命力とともに立ち現れる。
今まさに、
平行世界に切り替わったような、
私たち人間が見ている世界など、
いくつもの平行世界のなかの一つに過ぎないのだとういうような、
時空が揺らぐような感覚に触れることができる時間帯だ。
私は息をひそめる。
ひと時、平行世界に迷い込む。
そして足音を忍ばせて立ち去る。
この時間の主人は、影であり香りであり音である。
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