［13］手の中のみかんを感じる

手の中の珠
　　　　割き皮むく香で目覚め

　　　　ひと皮むけてく
　　　　　　　　　　私の世界

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体が重い。
頭に霧がかかっているようだ。

仕事で疲れると口にするものは、
コーヒーやチョコレートだ。
味がわかっていて安心する。

でも、なんだか物足りない。
わかっているから。

時々、いつもと違うモノを買ってみるが、
そんなに大きな差はない。

少し、疲れをごまかしているだけだと、
わかっているから。

今日はなんだか、ふと思い立って、
先日実家から届いてキッチンの隅に置いておいた、
みかんを手に取った。

なんだか煩わしかった。

チョコレートの包装を開けるより、
みかんの皮を剥くのは面倒だ。
上手く剥けるもの、細かくちぎれるもの。
すっぱいもの、甘いもの。
手に取ってみなければ、わからない。

でも今日は、みかんを手に取った。

働くことを自ら選んだ一日だった。
疲れていたけれど、
本当の意味で自分を労いたかった。

ひんやりと持ち重りのするつややかな美しい球体。
完璧なこの球体に亀裂を入れる。

すると、ふいに何かに目を覚まされる。

その亀裂から噴き出す香りが、
頭の中の霧を、
まわりの世界を、洗うようだ。

まるで一皮むけたように鮮やかさを取り戻した世界で、
私は一人、ひんやりとしたみかんの皮をむいていく。
みかんの香りが、私の世界をむいていく。

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