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[26]子どもから少年へ

青田を渡る
  風に藁の香ほのか

        背伸びする稲の花咲く


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風が青田を渡っていく。
柔らかく稲を撫で香りを運ぶ。

私はふと、
その風の軌跡に引き込まれて想像する。
若い稲の柔らかさを、
少し刺激のあるくすぐったい産毛を。
水田の上は広々として眩しく、
そして涼しいだろう。
水と青い稲の清々しい香りが満ちているだろう。

ある日、
彼らが誇らしげにぐっと背伸びをしていた。
穂がでていた。

青田を渡る風はやや足取りが重くなり、
私はもうその軌跡を掴めない。
そしてやや時間をおいて
少し乾いた葉擦れの音がした。
彼らの産毛は身を守るために硬くなり、
そして微かに藁の香りがした。


中学生になって
ぐっと背が伸びた彼の、
頭を撫でることは
もうないのかもしれない。

少しの寂しさと
少しの眩しさとともに、
季節は夏から秋へと変わっていく。

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