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仕事って、いってみたら案外平気だから大丈夫だよ


工場夜景の見える家に引っ越して、もうすぐ2週間が経つ。
火力発電の煙突からは24時間煙が出ている。
夜の闇に映える白い煙は、いつまで見ていても飽きない。

田舎だし、職場への通勤時間は倍以上になったけれど、なんだかんだいいことのほうが多いではないか。
仕事もリモートがあるから出勤は週3でよい。週に3日だったら早起きも電車もがんばれそう。引越しすぐの私はワクワクのほうが大きかった。


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先週の金曜日の朝、本当に会社に行きたくなかった。休みたかった。
仕事つらいな~いやだな~と思う、たまに来る発作だ。あのときああしておけば、という後悔が積み重なり、逃げ出したい時期だ。

今日期限の仕事と、mtgと、思い出す。絶対に行ったほうがよい。でも行きたくない。休んでしまいたい。

仕事に行けなくなった頃の自分が頭をよぎる。あの時も、最初はただの発作だと思ってたんだ。ここで休んでしまうと、それが続くと、どうなるかは知っている。


この家に引越してから、初めての発作だった。
引越しで年休・半休をとったり、通勤時間が変わったり、自分のサイクルが崩れたことも原因のように思う。

この発作がきた時は、「いけるところまでいってみる」ことが大事だ、と今ならわかる。とりあえず手を動かして、化粧と着替え、髪型セット。家を出て会社までいけたらいいし、いけなかったら仕方がない。

ドアを開けて天気をチェック。雨はやんでいる、ぎりぎり傘がなくてもいけそう。3日前に1万円で買ったママチャリに乗る。


7月の、まだ少し涼しさが残っている朝を、駅までくだっていく。
雨の湿気は感じるが、いやなほどではない。スピードは出さないけれど、すぎていく風が気持ちいい。

仕事にはいきたくないけど、自転車に乗るのはいい気分だ。
仕事にはいきたくないけど、いざ職場についてみたら案外どうにかなるものだ。今までもそうだったじゃないか。

それは知っているんだけど、嫌なものは嫌だなんて考えながら、
一駅ずつ会社へ近づいていく電車をここで降りてみようかなんて考えながら、改札を出てからは無心で手足を動かしていたら、職場のデスクに座っていた。

やっぱり大丈夫だった。周囲の人はさほど自分に関心はない。そうだった。今朝のモヤモヤは不要だったじゃないか。また繰り返してしまったじゃないか。



これからもきっと発作はくる。いつかほんとにまた、会社までたどり着けなくなる日が来るのがこわい。
ただ、朝自転車に乗れば風を感じることができる。「家をでて自転車にのってちょっと良かった」と思うことができる、とわかった。


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引越してから雨続きで、朝からからっと晴れた日はまだない。夜明けの景色と、青空の下ベランダで洗濯物を干す日を楽しみにしているのに。

まだカーテンを取り付けていない部屋は、朝になると窓の外と一体化したように広く、明るく、まぶしい。
今日の夕焼けはきれいだったから、明日の朝に期待しつつ、夜景に照らされて今日も眠る。




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