あなたへ
おばあちゃん、あなたが亡くなる前日、大晦日の話です。諏訪野の家から御山の家に帰る帰り際、具合悪そうにソファに寝ていたあなたは、「あんたの顔見て思い出した、あげたい襟巻きがあったんだ」とゴソゴソ二階を探し始めました。嬉しい反面少し面倒くさかった。次の機会でいいよと何回もいいました。でもあなたはやめなかった。虫の知らせでもあったのでしょうか?時々休憩しながらもなんとか探し出してくれました。
「それ、誰からもらったの」
「買ったんだよ」
「へえなんで?」
「その襟巻きを見た時あんたの顔が浮かんだんだ。」
その時はへえ、そう。ありがとう。とながしてしまいましたが、あなたがいなくなった今、そのありがたみをひしひしと感じています。
たとえ隣にいなくても、あなたの心の中に私が、いえ、私たち家族がいつもいたこと。それがどんなに嬉しいことか。尊いことか。
毎日仏壇で家族の無事を祈っていたあなた。
それも一人ひとり名前をあげてご先祖様に祈っていました
ひとのことばかりで自分のことは後回しのあなた。
多すぎるお菓子でもてなしてくれるあなた。
食後に牛乳やヤクルト、ヨーグルトを勧めるあなた。
断られると少し悲しそうな顔をするあなた。
物を大切にするあなた。
そしてなによりも家族を大切にするあなた。
その姿を、諏訪野の家で見られなくなるなんて、まだ受け止められていない自分がいます。
でも、嘆きの海にいつまでも飲み込まれていることはあなたを悲しませると思うから
あなたの残り香に心が締め付けられる今があるとしても
それさえもいつか温かな思い出になることを信じて
よく眠り、よく笑い、よく食べて
あなたの孫として生まれた幸せを胸に、この先の人生を歩んでいきたいと思います。
おばあちゃん、あなたの心の中に私たち家族がいたように、私達の心の中にも同じようにあなたがいます。本当にありがとう