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一流のオーディエンスを目指して~神尾真由子&萩原麻未、デュオ・リサイタル

先週の土曜日、4日も、またまたミューザ川崎へ行きました。毎月通うようになったのは最近になってからですが、毎度お馴染みのこの建物を見ると、ワクワクと同時に安心感もあります。

お馴染みの建物

ヴァイオリンとピアノのデュオリサイタルですが、今回のお目当ては、神尾真由子さんです。今、日本のヴァイオリニストの中でもトップクラスと言えるでしょうし、私の大好きなスンバらしいヴァイオリニストです。しかも、美しい。
初めて聞いたけど、萩原麻未さんも、これまた素晴らしかったです。優しげな外見とギャップのある、エネルギーのあるピアノです。

いよいよ開幕

前半は、散々クラシックを聞き慣れてる方向きにノルウェーの作曲者二人、シンディングの組曲「古い様式で」と、グリーグの「ヴァイオリンソナタ第三番」。骨格のしっかりした組曲とソナタを、繊細かつ情熱的に奏でるお二人に圧倒されながらも、実は私には少し難解でした。何しろ、私は単なるクラシック好きな上、本格的に聞き始めた初心者です。お許しください。以下の文章も初心者が聞くとこうなる、と、ご理解ください。

私の席はいつも舞台後方だから、
パイプオルガンが近いですね

後半は、ガラリと、普段クラシックを聴かない方でも楽しめるプログラムです。それぞれに聞き所満載の小品を楽しく並べてありました。エルガー「愛の挨拶」、クライスラー「愛の悲しみ」「中国の太鼓」、ラフマニノフ「ヴォカリーズ」、リムスキーコルサコフ「熊蜂の飛行」、マスネ「タイスの瞑想曲」、サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」。まるで小品のオンパレードですね。すごいサービス精神です。来た人を全員楽しませてくれようという勢いを感じました。
「愛の挨拶」は、何回聞いたかわからない位聞いていますが、こんな味わい深い名曲だったかと、改めて感じる次第。エルガーが婚約記念に贈った曲ですから、若々しく甘い。親しみやすく、覚えやすいメロディーで好きな人も多いと思いますが、ポピュラーになりすぎて、またか。と、食傷気味になる向きもあるかもです。しかし、神尾さんにかかると、エルガーの瑞々しい感情が直に伝わります。
クライスラーの「愛の悲しみ」も、同じくあまりにもポピュラー。甘い悲しみのロマンチックな調べに酔いますが、やや食傷気味、だったのに、神尾さんにかかると非常に新鮮です。
ラフマニノフの「ヴォカリーズ」も、私好みのロマンチックな哀愁のある曲ですが、色々な編曲をされて聞きなれてしまっていたけど、いやあ、これかと。
最後のサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」に至っては、初めて聞いた時の驚きを超えて情熱的な音色に魅了されました。これは、出だしがとにかくショッキング。さらに展開がエキゾチックで、悲しげでぐいぐいと引き込むので、あっという間に終わってしまいました。フィナーレに相応しいですね。プログラムが素晴らしかったです。

美しいお二人。
当日は衣装も合わせていて素敵でした
神尾さんはグレーがかった薄い藤色
萩原さんは深みのあるブルーでした

そして、何より、神尾さんのますますヴァイオリンの上手いことよ!天才です。テクニックの確かなこと、音の美しく響くこと、表現の豊かなこと。左手のテクニック、右手のボウイングの感情。だけでなく、左手の感情、右手のテクニックも、当然あり、と、当たり前でしょうが、感じた次第です。
とにかく、全ての曲の出だしの最初の音が魅力的なのです。いきなりぐっと捕まれるのです。ピアニッシモから初めてもズギュンと捕まれます。
ピアニッシモ、ピアノからクレッシェンドしていく音の膨らまし方、間合いの取り方に息を止めて聞いてしまう私がいました。こういうのは、神尾節というのでしょうか。とにかく、個性ですね。魅力的なアグレッシブなクレッシェンドなのです。
激しく熱く燃える魂や、楚々とした上品な佇まい、しっとりとした哀愁や、機敏な展開や、エキゾチックな楽しさや、妖しい魅力も、豊かな音楽の理解と表現で短時間の中にギュッと詰め込んでいただきました。
萩原さんのピアノは、ヴァイオリンに寄り添いながらも自分を失わない賢い奥様の如く。これ、後のトークでも神尾さんが萩原さんのことを、できの良い奥さんみたいと表現していました。柔らかく、強く、繊細に、温かく、神尾節に付き合う律儀な親友のようにも感じました。寄り添うだけで終わらない、同じ色合いの熱量というのが本当に見事でした。すっかりお二人の演奏を堪能させていただきました。

また、お二人のトークが最後にあったのですが、演奏とはうってかわってまったりしていて、これまた魅力的。あの情熱的な演奏の直後に、どうしてまったりトークが出きるのか?これがまた、このお二人の魅力でしょうか。また、機会があったら違う曲目を聞いてみたいです。
楽しませてくださり、ありがとうございました。

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