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『パリでかくれんぼ 完全版』ジャック・リヴエット~自由にパリを動き回る女性たち~

画像(C)Pierre Grise Productions, 1995. (C)2019 Les Films du Veilleur

1996年に日本公開されたものより10分長い完全版(4Kデジタルリマスター)が2024年に公開された。「ジャック・リヴェット傑作選2024」として劇場で観る。

三人の若い美しい女性がいて、パリが舞台ならば映画は出来る・・・そんな軽やかで楽しい映画だ。不良少女の金髪のショートカットのニノン(ナタリー・リシャール)は、男と結託してクラブでダンスを踊って男を誘惑し、美人局のようなことをして小銭を稼いでいる。相棒の男がナイフで事件を起こすと、すぐに逃走。バイク便の仕事に就く。それでもちょっとした隙を見て事務所のお金を盗む不良ぶり。バイクやローラースケートで街を自由に動き回り、ダンスを踊る。一方、5年の昏睡状態から目覚めたルイーズ(マリアン ヌ・ドニクール)は、ホテルの部屋を取り、死んだ叔母さんの古い家を遺産でもらう。資産家である父は、いつも電話でルイーズのことを心配しているが、ルイーズは干渉を嫌う。パリの街を歩くルイーズと、その後ろをいつも尾行している男。それだけでもう映画なのだ。そしてルイーズは、めまいで突然意識を失う。もう一人は、装飾美術図書館の司書をしているイダ(ロランス・コート)。養子として育てられたイダは、自分が何者か分からない。お腹の中で聴いたのかもしれない古い歌を想い出し、その歌のこと、本当の母のことを知ろうとパリを探し回る。

踊って街をバイクやローラースケートで疾走する<動的存在>ニノンと眠り姫のお嬢様のように屋敷とホテルを行き来する<静的存在>ルイーズ、そして歌を通じて過去を探る<迷える存在>イダ。その三人の女性にロラン(アンドレ・マルコン)という男が絡む。物語を説明してもあまり意味がない。パリと女の子たちを楽しむ映画だからだ。ルイーズと出会ったニノンは、屋敷の階段で歌って踊り出し、ルイーズは尾行している男と突然キスをする。あるいは、ロランはニノと踊り、ルイーズは男に向けて銃を発砲する。ミュージカルのような軽やかな女の子たちの身振り。歌とダンス。パリの道を歩く美女と後を追う男。ダンスホールやミュージックパブ、図書館に公園、謎のクラブでの死のゲーム。踊るために、楽しむために、探すために、恋するために、女の子たちがパリを自由に動き回る。ジャック・リヴェットの映画は、いつも終りのない勝手気ままな自由の冒険なのだ。

クラブ歌手役でシャンソン歌手エンゾ・エンゾ、そして『修道女』以来30年ぶりのリヴェット映画への出演、ヌーヴェル・ヴァーグの女神アンナ・カリーナも歌手役で出演。

1995年製作/169分/G/フランス
原題:Haut bas fragile
配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム
劇場公開日:2024年4月19日


監督:ジャック・リヴェット
脚本:ロランス・コート、マリアンヌ・ドニクール、ナタリー・リシャール、パスカル・ボニゼール、クリスティーヌ・ローラン、ジャック・リヴェット
撮影:クリストフ・ポロック
音楽:フランソワ・ブレアン
キャスト:ナタリー・リシャール、マリアンヌ・ドニクール、ロランス・コート、アンナ・カリーナ、アンドレ・マルコン、エンゾ・エンゾ

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