『抜き射ち二挺拳銃』ドン・シーゲルの西部劇~悪女にコロッと騙される保安官

ドン・シーゲル監督は、ラオール・ウォルシュやハワード・ホークスなどの下で助監督を務め、ドン・シーゲルの弟子と言えば、クリント・イーストウッドやサム・ペキンパー―がいる。B級低予算映画の早撮り職人監督として、数多くの作品を手がけた。

ゴールドラッシュに沸くカルフォルニアで、金の採掘現場を荒らすギャング団一味に父親を殺された青年ルーク(オーディ・マーフィ)は仇を討つべく町にやってきた。保安官のタイロンス(ティーブン・マクナリー)はかつて稲妻と呼ばれた早撃ちだったが、強盗団に撃たれて負傷してから、銃の引き金が引けなくなっていた。そんな時、シルバー・キッドと言われるポーカー好きの早撃ちの名手ルークと出会い、保安官助手に任命する。保安官とルークは、強盗団を摘発すべく、怪しい人間を調べ始めるのだが・・・。

「抜き打ち二挺拳銃」とタイトルに謳われるほどガンアクションが中心なわけではない。保安官は銃が撃てないことを隠しながら強者を演じ、美人の悪女(フェイス・ドマーグ)に夢中になって騙されるところが面白い。ギャング団の親玉がジェラルド・モーアであるのだが、鉱山会社を経営し、悪女フェイス・ドマーグの兄ということで保安官は簡単に信じてしまう。悪者たちが策略を弄して保安官を騙し、若きルークが保安官を助けるという構図。保安官と若きルークの新旧早撃ち同士の確執、さらに保安官に思いを寄せる若き女性スーザン・キャボット、その彼女に思いを寄せるルーク(オーディ・マーフィ)の三角関係も物語の軸になっている。ルークが彼女に「僕と君はポーカーの手札が同じだ」なんて、同じ「片想い」であることを表現するのだ。

登場人物の各キャラクター造型が出来ているので、西部劇的な戦いのアクションというより、男女の騙し合いの物語として楽しめる。美女に騙される人のいい保安官と若き早撃ちガンマンに、性的にまだ未熟な健康的な女の子と性的な魅力を振りまく悪女が絡んでくる。


1952年製作/77分/アメリカ
原題:The Duel at Silver Creek
監督:ドン・シーゲル
製作:レナード・ゴールドスタイン
原作:ジェラルド・ドレイソン・アダムズ
脚本:ジェラルド・ドレイソン・アダムズ、ジョセフ・ホフマン
キャスト:オーディ・マーフィ、スティーブン・マクナリー、フェイス・ドマーグ、スーザン・キャボット、ジェラルド・モーア

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