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徒然なるブラック企業のお話 No.05

夏風邪を引いた際に微熱が出たのだが、会社では誰も「早く帰って休んでください」と言って来ない素晴らしい現会社。何故か知らないが会社の財政を自分がしているので、休まれたら困るのは分かるが、自分はクリエイター職でこの会社に入社したはず。
社長は元から「熱を測らない限り、風邪(コロナ含む)ではない」と言っている。流石である。だから、従業員に風邪を移すんですね。
夏になったら、この社長が大金を積んだ事業の2つ目が終了する。
早く離れたい今日この頃。

■5社目

もしかしたら自分は、巻き込まれ体質なのかもしれないとふと思った。
今の会社の社長や社員の一部の人からは業務を手伝ってほしいと言われ、いつの間にか数に入れられてたりする。
第三者や外野、相談として聞く分には笑い話で終わるのだが、いざ自分がその事柄に関わると話は変わってくる。もう早く終わってほしい一心で動くことしかできない。

今回の会社、自分の中ではブラックには分類はされてない。給与が最低賃金であっても、仕事や待遇面についてはかなりいいほうだった。
結局は業績不振によるリストラに巻き込まれ、定年まで働く事は出来なくなってしまった会社。
なので、今回も人間関係を中心とした話となってしまう。
きっかけとは些細な事で、1つの事が発覚すると芋づる式で知らなくてもいい情報まで出てくる。それが今回の話。
この会社、今では1/3ほど減ってしまったが、当時は結構な数の営業所があった。
その1つの営業所で制作として仕事をしていた自分。業務は広告代理業務の広告を中心に制作をしていた。営業所がいくつかあるので、制作も営業所によってまちまち。
全営業所の中で人数が少なったと思う。少なくても成績は営業が上げていたので、問題はなかった。リストラにあってはいるけど。
ある時、社長の親族が我々の営業所に異動してきた。
親族経営の駄目なところで、その親族が仕事ができなくても解雇することが【社長の親族】という強カードを持っていた為できなかった。なので出来ることは、営業所の異動。
この親族(以下、H村さん)を知ったのは前年の会社パーティーだった。
元から親族が働いているのは知っていたが、どのような働きをしているのかは全く知らなかった。それもそのはず、親族カードによって他の営業所の方たちが変な噂などは止めていた。
3時間ほど離れた距離の営業所に在籍している人間が、噂を知るのはもう少し後の話になる。
さて、自分と同じ営業所となったH村さん。一応、営業の方ではあった。
制作側からしたら、営業から受注が来ない限りその人の仕事ぶりなど分からない。いざ、受注の仕事に取り掛かったらほぼ丸投げか的はずれな指示なもので、速攻Hさんの使えんさは所内にメンバーは理解した。
近くの営業所とは頻繁にやり取りがあるのだが、遠い営業所とはパーティー等がない限り喋ることさえもない。H村さんも喋ったのは、異動してきてからだった。
一応H村さん、主任の肩書は持っていた。だからと言って、持ってくる仕事量は他の社員の半分以下なので新入社員と同じぐらいであった。
親族って仕事できなくても肩書もらえる良いなあと思った。H村さんを庇護するわけではないが、年功序列で仕事が出来なくても35歳以上の営業には『主任』の肩書はつくらしい。
本社は年功序列の考えが根強かった。
H村さんのヤバさが露呈したのは、社内忘年会。
営業所がいくつもあるので、本社から忘年会費を正社員の人数分貰えた。パートさんの分は出なかったが、正社員分でパートさんの分を賄える程度には貰えた。
忘年会と言ったら基本居酒屋。
ただ、自分がいた営業所そこまで人数がいないので、忘年会費を1回で使用するには少しお高いお店を選ばなければいけない。そこで高層ビル内にあるレストランにて軽いコース料理を楽しむこととなった。営業と比べて制作とパートさんは、給与が高くないので日頃味わえない料理を味わいたいと意見が一致した。勿論、所長にも確認した。
いざ、レストランでコース料理を進めていく中でH村さんが謎の絡み方を始めた。
まず、この忘年会までH村さんと我々はそこまでプライベートの話をしていない。
さらにH村さんは我々の営業所に来てまだ1ヶ月ほどである。
会話と言ったら仕事の連絡ぐらいで、世間話のひとつもまだしていなかった。
「小説は何を読みます?」
「京極N彦を中心にミステリーやサスペンス系を読んでます」
決してお見合いではない。そして自分が上げている小説家について察してほしいとは思わない。
「京極N彦?知らないですね」
えっ知らない?
自分なりに有名どころの作家を上げたつもりである。
「そうなんですか。H村さんは誰が好きなんですか?」
「村上H樹が大好きで、全部の作品読んでます」
「すみません。自分、村上H樹はあまり得意ではないです」
実際、少し苦手な分類の作家なので間違ってはいない。
好きなジャンルがミステリーとサスペンスな人間が、純愛系(それすらも曖昧)を好んで読むわけがない。
こちらが苦手だと言っているのに勧めてくる。自分は一切好きな作家を勧めてもいないのにだ。
「どうして読まないんですか?村上H樹はいいですよ。あなたも絶対好きになるはずです」
「そうですね」
この言葉のキャッチボール、実際5回以上続けて他の社員さんが間に入って話は終わった。
最後らへんはネットで話題になった女子が上司に言う【さしすせそ】を思い出しながら、相槌を打っていた。
あまりにも必死に勧められ過ぎて引いてしまい、未だにその本は手に取っていない。また、こんなファンの人ばかりなのかと思い作家さんには悪いがファンが怖くなった。
言い合いの最中、H村さんはずっとビールを飲み続け、顔を真っ赤にさせて自分に言ってくるものだから他の人からはパワハラっぽく見えたらしい。
お酒は元々飲み放題が選べたレストランで、社員さんの中には結構な量を飲む人もいたが忘年会では、お酒より楽しく話をしようと考えてる方が多く。ほとんどの方は程々にしか飲んでいなかった。元から、人間関係は良好な営業所なので今でもプライベートで飲みに行く人もいる。
なのに1人だけバカスカ飲んでいたのも喋りながら引いた原因。
コースが進んで、最後のデザートまで運ばれてきてもH村さんの謎の話は続いた。
作家の話ついては自分1人が集中攻撃を受けていたので他の方が助けてくれたが、この時にはほぼH村さんは小さな独り言を喋っていたので誰もきちんと話を聞いてなかった。
酒を呑み過ぎてる人間の話に勉強になると思う話はないと自分は思っているので、他の方と話をすることに集中をした。その前に他の方もH村さんの呑み方と絡み方に引いていたので、【触らぬ神に祟りなし】状態である。
この忘年会によって、H村さんに喋りかける方は社内からほぼ消えた。
念の為書いておくが仕事の話は一応していた。ただ、世間話については皆無。
元からそこまで仕事を持ってくる方ではなかったので、我々制作やパートさんも最低限の接触のみで終わらせていたのだが・・・事件は起きた。
H村さんと始めて会った、会社パーティーが開催されたのである。
会社パーティーは金曜日の昼から関東地方のホテルにて行われるのだが、営業は先に会議があるので最低限の仕事を終えたらすぐに向かい、制作も月曜に回せる仕事以外は終わらせて向かうのが恒例。正社員のみの参加になるため、留守をパートさんに任せて昼過ぎには制作も向かう。
会場に近い営業所ほど着くのが早いのは必然で、自分たちは少し遠い営業所のためパーティーについた時には乾杯の音頭が始まる手前であった。あと、結構ギリギリまで仕事をしていたのも遅くなった要因である。
パーティーが始まれば仲の良い人と固まるのは必然で、自分も仲の良い制作の人と話に花を咲かせながら飲み食いをした。先に行った営業の方たちには、簡単に到着の挨拶はしておいた。
クリエイター職の面白いところは、男女仲の良いところ。中には恋愛に発展する人はいるが、基本は自分で出来ない作業をお願いしたりされたりの環境が多いので戦友という認識が強い。
世間話を含め、仕事の進捗情報などの交換などをしていると、いつの間にか終わりの時間。
パーティーが終われば、各々の部屋にいくのだが基本は3〜4人部屋。
そのまま部屋で二次会を始める人や1人でゆっくり寝る準備を始める人とバラバラである。自分は後者で、長距離移動と営業所を出る前まで仕事をしていたので早く寝たかった。
何故なら、体力があまりない自分。次の日にはまた地元に戻らなくてはならないので、夜ふかししたら帰りの電車で苦しむのが目に見えていた。
席を動かない人間あるある。
さて、今回のホテル。部屋以外に大きめの大浴場があると聞いていたので、足を伸ばしてゆっくりとしたかった。準備を終え、向かっている最中に仲の良い制作さん(以下、W木さん)に後ろから声をかけられた。
「152さん、ちょっといいですか?」
「お風呂に行くだけなんでいいですよ」
まあ、お風呂は逃げないし、そんなに時間はかからないと思って安請け合いをした。
結論から言うとここでW木さんから話を聞いた事によって、悲しくも自ら巻き込まれにいった。
「H村さんの話なんですけど・・・」
この時点で聞きたくはなかったが、W木さんは営業所は違うがほぼ同期。さらに言えば年齢も近いのでかなり仲良くさせてもらっていた。
「さっきA課長と飲んでたら、H村さんがきて・・・太もも触ってきたんです」
何してるんだよH村!
まずここは会社のパーティー会場であり、あなたの親族である社長も泊まっているホテル。
そんな場所で堂々とセクハラをするな。
「逃げようとしたらH村さんが『W木さん、結婚は?』『いい人いないの?』とか言ってきて、A課長が止めたんですけどぴったりくっついてきて。さらには『152は、あの営業所乗っ取ろうとしてるんだせ』とか152さんの悪口も言ってて」
自分の知らないところで謎の話を言いふらされてた。
まず、H村さんよ。あなたと自分は仕事以外の話をしてないし、違う話しと言ったらあの地獄の忘年会の時ぐらい。勝手に創作話を作って他の人に吹き込むな。
W木さんは自分と仲がいいので、H村さんの話しを鵜呑みにしなかったが、他の人にも言っていたらと思うと頭が痛い。
いや、その前にセクハラ。
H村さんのことだから、自分の話しに返答をしたW木さんに何を言ってもいいと判断したんだろう。
忘年会の時も本の話しに反応してしまった自分が被害にあったので、H村さんは【自分を無視しない人イコール何を言ってもいい人】と言う謎の方式が頭の中にあるのかもしれない。
騙されるおっさんのいい例ではないか。
これで酒を飲んでいたから良いという考えは古いし、就業時間外であろうが社内の人間にセクハラをしたことには変わりない。
問題は、
「この話って上にあげてもいいですか?」
社内でのセクハラ。通常なら、所属長に報告してさらに上層部に上げて判断してもらうのが一般的・・・だと自分は思っている。この会社にはセクハラを相談できる部署が無いため、W木さんには申し訳ないがそうするしかなかった。
ただ、社長の親族。どこまで対応されるのかが分からない。
そしてW木さん次第では、この話はW木さんと自分。ここだけの話しになってしまう。
「152さん、ちょっとまってもらっていいですか?」
「分かりました」
彼女は上司であろうが、営業の男性にも臆せず意見を言える人。
その彼女が、報告するのを待ってほしいという。
気持ちは分かる。自分が報告をすると言うことは、H村さんがW木さんにしたことを言わねばならないし、下手したら全社員に知れ渡ってしまう。だが、H村さんがいる営業所である自分のところで所属長含め本人に確認した後、上に連絡したほうが噂は最小限だけの終わると考えた。
営業所がいくつもあるので、口が軽い人なんて1、2人どころではない。
加害者の名前が広まっても良いが、被害者の名前が広まることは避けたい。
「一旦152さんのところで、止めておいてほしい。今はあの気持ち悪さを誰かに伝えて、共有したかった」
「そんなことされたら、誰でも嫌ですよ。W木さんが良くなったら、まずはW木さんの名前出さずにそれとなく所属長に報告しますわ」
「ありがとう」
同期で、研修の時から困ったら相談にのってくれる友達であり戦友。
そんな彼女を助けない理由はない。自分も謎に悪評言われれて、いい気分はしない。
後に分かるのだが、このH村さん自分の話しを聞いてくれる女性は未婚者なら、高確率で執着をしていた。
W木さんと別れ、大浴場に行ったが結局は自宅と同じようにお風呂に入るだけだった。
自分の中では、W木さんが「言っても良い」という前に所属長には、伝えておくべきではないかと考えていた。勿論W木さんの名前を伏せ、自分が見た体にしておけばW木さんに話がいくこともないはず。むしろ、あの忘年会や今回のW木さんの話を聞く限り、他にもセクハラをされた人はいる。・・・実際、その通りだった。

あまり眠れなかったので、疲れを持ち越した次の朝。
W木さんから「私の名前を出さなければ」という形で、密告の了承を得た。
こういった報告を人生1度もしたことがなかった自分はタイミングが分からず、営業所最寄り駅にて所属長に「ご飯食べに行くか?」の言葉に甘えることにした。
その時食べたご飯は覚えてないが、所属長と20歳の女性営業の方の3人で一緒に食べたことは覚えている。他の方たちは駅にて解散となった為、この3人だけである。
20歳の女性(以下、T家さん)もいるので、所属長と2人になったタイミングを探していたところ、T家さんがお手洗いで席を離れた。
「・・・所属長、ちょっとお話があるのですが」
「ん?何の話し?」
疑問符を頭の上に浮かべて聞いてきた所属長は、H村さんのしたことを知らないとみた。
今思えば、食事の席でする話しではなかったと思う。この時の自分はいっぱいいっぱいで、周りのことまで頭に回らなかった。
「H村さんがパーティー後の呑みで、女性にセクハラしてたらしいです」
「はぁ?」
「いや・・・H村さんかなり酔っていて、絡みながら体を触ってきたと」
「う〜ん。それって、被害にあった人を教えてもらえる?」
「本人からは名前を出してほしくないと言われます。なので、H村さんに確認次第対応してど、真実なら何かしら対応を取ってもらえれば良いです」
濁して話をするのが、ここまで難しいとは思わなかった。
さらに2人でいるタイミングの時にしか喋れないと思ったので、かなり早口で的を得ない話し方をしていたと思う。
ただ、所属長に喋った事で抱えきれなかったのが少し減って安心はした。
ちょうど、T家さんが席に戻って来たことを合図にお店を出た。
所属長からはT家さんが席に戻ってくる前に「確認します」と言われた。
まあ、報告したい内容は出来たのでそれだけで十分。
土日を挟んでどう出るか、全く予想はできないがいい方向に進んでほしい。

月曜日。
朝から所属長に呼び出され、話をすることとなった。
自分と分かれた後にすぐ上に話しをしたらしい。
「早速だけど、H村さんは被害にあった方に謝りたいと言っている」
「それ、絶対嫌がります」
本人に聞く前に自分が答えたが、謝るのならするなという話しだ。
「あとH村さん・・・アルコール依存症らしい」
「待ってください、あの人ガッツリ呑んでましたよね!」
忘年会といい、パーティーといい、端から見ても飲み過ぎだと分かる量をガバガバ呑んでいた人がアルコール依存症って、医者に喧嘩売っていているのか。
所属長も呆れた顔していた。そうですよね、知ってたら止めますよね。
「依存症もあって、かなり、その、態度が悪くなってたと」
「だったら呑まないですよね?」
「普通はそうだけど。本人は依存症に悩んで余計に呑んでいたらしい」
うん、意味が分からない。
「だったら、病院できちんと治してもらってください」
「俺もそれは言った。本人も『治します』と言ってはいた」
「処分は・・・」
「一応、異動というカタチとなった」
流石、親族。セクハラしたアルコール依存症を異動だけで留めるとは生ぬるい。
これじゃあ、被害者が泣き寝入りしたようなもの。
W木さんに謝罪の件を伝えたら「いらない」ときっぱり断ってきた。
依存症を盾に謝られても結局はアルコールに負けて、本能のままに女性にセクハラしたことは変わりないので『酒呑んで、理性が外れてあなたにセクハラしました』と言っているようなもの。気持ち悪い話だ。
さて、異動となると少なからず噂が立つもので、T家さんがH村さんから物理的に離れた。そして間には簡易パーテーションが置かれるまでにH村さんを離した。
ここだけ見ると軽いいじめである。
ただ、人数の少ない営業所。T家さんが「H村さんが異動まで私出勤しません」と言ったものだから、所属長含め上の人たちが引き止めるように頑張った結果こうなった。
言っておくが、T家さんはH村さんの被害はあっていない。
彼女、所属長にべったりなので日頃からH村さんに近づきもしていなかった。
むしろ、逆に謎の絡まれ方をした自分は、何も対処されなかった。

H村さんの異動話しから、異動日までは2週間もなかった。
社長の親族を引き取って株を上げたい所属長がいる営業所へすぐに異動先は決まり、挨拶も程々に営業所から去って行った。
さて、問題。
H村さんのアルコール依存症は一体いつから?
答えは、自分たちの営業所に来る前からだった。
それも親族も依存症の事は知っていた。
飲む方も酷いが、止めない親族も何をしていたのか。止めれなかったとしても、最低限所属する営業所には伝えておいてほしい。伝えられても困る話しだが、忘年会は酒が出る店ではなかったことは確かである。
そして前の営業所でも少なからず、飲み会はあったと思うし、変な絡み方やセクハラもあったと思う。今回は所属長がすぐに対応してくれたから良かったと思うが、社長にゴマを擦りたい営業所だったら見て見ぬふりだったと思う。
多分、所属長。H村さんの事あまり好ましく思ってなかったから、すぐ言ったんだろうと自分は思っている。

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