トゥースな一日

　『オードリーのオールナイトニッポン』が東京ドームでイベントを開催した。ラジオが始まって15周年を記念したイベントで、東京ドームの現地のほか、全国各地の映画館などでのライブビューイングやインターネット上での配信でも観ることができた。東京ドームのチケットは数回の抽選がおこなわれたが、その抽選に全て落選。
　5年前に日本武道館で開催された10周年記念のイベントは、最後の最後で解放席が当選し現地で観ることができた。その件があったため余計に意気消沈していたところ、友人が映画館でのライブビューイングを当選してくれたので、リアルタイムで観ることができた。
　オードリーのオールナイトニッポンは、15年前から聴いているというわけではないが、通勤や移動の際、暇があればYouTubeで過去のトークを聴くくらい、僕にとっては日常の一部になっている。

　当日は昼過ぎまで仕事が入っていた。
　土曜日に放送されたラジオの最新回を聴きながら会社の近くを歩いていると、今回のイベント用に作られたパーカーや野球のユニフォームをイメージしたシャツなどを着ている人を見かけた。この人たちもどういう形であれイベントに参加するんだろうなあと思い、勝手に嬉しくなる。
　友人とはライブの開始時間である17時30分の1時間前くらいに会場である新宿の映画館で待ち合わせをしていた。仕事を終えてから待ち合わせまで少し時間があったので、漫画喫茶に入り、若林正恭の『表参道のセレブ犬とカバーニャ要請の野良犬』を読む。待ち合わせが近づいてきたところで、ジャケットの中に着ていたシャツを脱ぎ、カバンに忍ばせていた今回のイベント用に作られたTシャツに着替えて映画館に向かった。
　友人と合流。開場まで時間があるため、一度、映画館内に入り様子をみる。その映画館は普段も行くことがあるが、いつもより混んでいる気がした。最新回のラジオで「ライブ中は食事ができない」と説明されていた気がすると友人に伝えて、そばを食べにいった。
　映画館近くのそば屋に入る。えび天そばに半熟卵をトッピングしたら1,000円した。観光客向けの値段設定なのだろうか。
　そばを食べ終え映画館に戻った。館内は、そばを食べる前に様子を見にきたときよりもライブのグッズを身につけている人が多い。開始時間が近づいてきたことを実感し、気分が高揚し行動が早くなっていることに気付く。
　飲み物を購入すべく列に並んでいると、僕たちよりも前方に並んでいた人で、ライブビューイングを観るであろう人がポップコーンをこうポップコーンを購入いているのを目にした。結局、僕も映画を観るときにいつも購入するコーラのLサイズとポップコーンにした。
　購入し終わったときには開場していたので、その足で入場する。入場すべくチケットを見せると、映画館の係員の方がラスタカラーのリストバンドをくれた。ラジオで言っていたバンドだ、と独り言を言った。

　席につきしばらくすると東京ドーム内の映像が映し出される。とんでもない数の人がいた。僕たちが入った映画館も、続々と人が入ってくる。始まるときには満席だった。
　開演。オープニング映像が流れたあと、いつものBitterSweetSambaが流れ、二人が入場してきた。いつも通りのフリートークや各々の個人トークやコーナーのほか、イベント用に用意された特別なコーナーもあった。
　これまで、ラジオで耳で受け取っていた情報を目でも見ることができることは、楽しさを増させた。
　2人が時折話をする長楽のポークライス。気になりすぎて、銀座の中華に1人で食べに行ったこともあるポークライス。春日が“長楽の兄ちゃん”と再現して作ったポークライスを若林が食べて泣きそうになっている様子をみて僕も少し泣きそうになる。
　若林のDJのコーナーは涙が出るほど笑った。星野源との2人のおともだちな関係がとても好きだ。漫才で若林が名探偵コナンのテーマソングを口ずさむと説明すると会場から笑いが起こった。その笑いに対する若林のツッコミ、ちょっと口調が厳しくなる感じ好きなんだよなあ。と、いつの間にか、イベントを観ていることの高揚は落ち着いていて、いつもラジオを聴いているときの感覚で観ていた。
　そうこうしているうちに、イベントは終わりを迎えた。
　終わる間近、若林が「ラジオと漫才（お笑いだったかな）を信じてやってきてよかった」と言っていた。『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』で若林が書いていた“血の通った関係”。僕にとってはオードリーのオールナイトニッポンがその一つなんだと改めて思った。

　映画館を出て、友人と居酒屋で少しお酒を飲んで解散した。解散した後、イベントの余韻でテンションが上がっていた僕は、思い立って、初めて1人でカラオケに行った。
　カラオケに行ったときにいつも歌う曲を何曲か歌った後、イベントで若林と星野源が歌っていた『Pop  Virus』を入れた。
　若林がラップでアレンジした箇所が歌えず、途中で演奏中止のボタンを静かに押した。
　次の日、YouTubeでラジオにDJ KOOがゲストで来た回や名探偵コナンのオープニングに乗せてオードリーの自己紹介をする回などを聴きながら通勤した。